第3話 転
源氏の若君、牛若丸を中心に集まった
武蔵坊弁慶と安倍晴純
剛力無双の弁慶と幻術妖術陰陽術と変幻自在の晴純。
牛若丸自身の力も合わせると、わずか3人でも数万の軍勢と戦闘能力は、さほど変わらない。
しかし、あまりにも強過ぎると、嫉妬や妬みの槍玉にあげられる。
この頃、牛若丸も元服を迎え、時
の帝より判官という官位を授かって
成人の名乗りを授かっていた。
『その方、今日より源九郎判官義経
と名乗るがよい。』
時の帝より許可された。
元服して源義経となった牛若丸。
兄頼朝公のお手伝いになりたいと、関東征伐を追いかけた。
義経軍にとって、人間の軍勢は、敵
ではない。
京の都では、見ることのなくなった怨霊魑魅魍魎。
鈴鹿の山を越えた辺りから続々と出始めた。
『晴純様
これは、捨て置けませんね。
退治して参りましょう。』
『そなたなら、そう言い出
すと思っておった。』
晴純、義経の成長が楽しくてならない。
義経主従と晴純が歩いているのは東海道。
関宿にさしかかった時、難波街道方面から来た若侍といっしょになった。
若侍に付き従うのは、年老いた僧侶が一人。
『源九郎判官義経様御一行とお見受けいたします。』
若侍がか細い声で話しかけてきた。
『私は、捲漣大将様の頭の皿より零れし水滴より生まれた春麗と申します。』
そう言いながら深編笠山を取ってお辞儀をした。
頭を上げた若侍を見た義経達3人は驚いた。
世にも美しい女性であった。
『ほほう、捲漣大将様からと申すのなら、そなたも晴純
同様、人間ではあるまい。』
この頃すでに、義経と弁慶は晴純の
正体を知っている。
晴純が問いただすと、春麗カッパの姿を現した。
『私は、晴純様の妻となり晴純様と供に義経様をお助けせよとこちらのお師匠様より申しつかっております。』
と傍らの老僧を指した。
僧編笠山を取った老僧、齢三百歳は軽く越えているはずの霊仙。
『これは、お師匠様御自らのお出まし
とは、恐悦至極でございますが、東海
関東がそれほどに。』
義経と弁慶、何事かわかっていない。
『義経様、弁慶殿、このお師匠様こそ
三蔵法師霊仙様です。』
『な なんと
しかし、霊仙三蔵様と申され
ると、お年は三百歳を裕に』
義経が疑問を。
もちろんのこと、疑問で当然。
いかに三蔵法師といえども、人間である限りは300歳などというバカげた年齢はあり得ない。
しかしながら、三蔵法師のこと。
人間の常識を越えたところにいて
も当然のこと。
それほどまでして、霊仙みずから出て来なくてはならないほどに、東海から関東方面が怨霊や魑魅魍魎に攻められているということが容易に推し量れる。
こうして、春麗が一行に加わり東への旅が続いた。
それから数年後、義経の兄である頼朝が朝廷より征威大将軍に任ぜられ、鎌倉に幕府を創り、武士が武力でもって人々を支配する時代へと突入していく。
義経主従が、奥州平泉にて頼朝の幕府軍により討死するのは、さらに数年後である。
頼朝の鎌倉幕府開設になんとか間に合い、兄弟の対面に臨席した晴純と春麗はそそくさと京の都へと戻っていた。
『ところで春麗、
そなたとお師匠様は、何故
浪速方面から来たのじゃ』
『私、伊賀の上野の生まれでご
ざいますよ。
伊賀忍者の棟梁、百地三太夫
の娘として育ちました。』
春麗は、伊賀の忍者百地三太夫
の血を引いていた。
惓廉大将沙悟浄の頭の皿に百地三太夫の血が入った水を流し入れて生まれたのが春麗。
沙悟浄はこの世の者ではないために、百地三太夫が伊賀の姫として育てた。
しかし春麗、そこは魔界の者で、忍術の素質も半端ない。
女忍者くノ一としてのとんでもない才能を発揮した。
春麗の場合、忍術というより妖術に近い。
もちろん、晴純のように空を飛んだり水に数時間も潜ったり、火炎放射や電撃のような攻撃ができたりはしないのだが。
それでも、怨霊や魑魅魍魎の類いには、十分有効。
単純な跳躍力や走力は、人間の能力ではない。
鎌倉幕府の御世となり、最早、京都では怨霊や魑魅魍魎と闘う力を必要としなくなっていた。
そこで、晴純と春麗は、霊仙の指示により、鈴鹿山脈の琵琶湖側、
甲賀の里に庵を設けた。
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