祖父の死去
いつまでも恋人に負担をかけてはいけない、と仕事を始めた頃があります。
ちょうど十一月の中頃だったかと思います。
ですが入社日、母から連絡が来ました。
「おじいちゃんがいつまで持つかわからない、最悪の事態も想定していて欲しい」
実祖父が余命宣告されて一ヶ月程で容態がみるみると悪化してしまったのでした。
それでも仕事は始めましたが、祖父の容態について最初に派遣会社から説明してくれていると聞いたのにされてなかったりと、まぁ色々とありました。
でも何よりその当時の私には、一時間の通勤時間が苦痛でした。
たくさんの人がいる満員電車。
事務仕事だけれど体育会系の会社、人がたくさんいる朝礼。
また同時にナイロンアレルギーも発症し、常にストッキングがかゆい…。
何をしても苦痛で苦痛で苦しくて、何度手首を切ったことか思い出すこともできません。
その会社も長期で勤めるつもりでしたが、断念することになりました。
一番の理由は、祖父が亡くなったこと。
亡くなってすぐに休みの連絡をしたところ、お悔やみの言葉もなく、「いつから出勤できますか?」と。
余命いくばくもない老人だとしても、お悔やみの言葉ぐらいあるのが普通じゃないか、この人は誰が死んでも何も思わないのか、と愕然とした記憶があります。
そして同時に、祖父が息を引き取る際に目の前にいたのが私でした。
病のせいなのか、性格なのか。
ああ、こうやって人は死んでしまうんだな、と悲しみながらも達観している自分に嫌悪しました。
お通夜、お葬式も知らない親戚がいる苦痛。
その頃の私は既に恋人以外の家族すら一緒にいることが苦痛でした。
一晩斎場で家族数名で泊まることすら、ただただ苦痛。
悲しいはずなのに、何故かどうしても早く終わって欲しかったお葬式。
その中で祖母が祖父に
「喧嘩しながらでも、もっと一緒に生きたかった」
と言っているのを見て、私が死んだら恋人にもこういう思いをさせてしまうのか、と自分を重ね泣いてしまいました。
死にたい、消えたいなんて言葉にすれば簡単だけど、
実行するのは難しいし実行すれば誰かを深く苦しめるんだなと思った、その日から私は死にたいとは言わなくなりました。
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