第7話 冒険者登録へ
「ここか?冒険者ギルド…」
「思ったよりも立派ですね」
「そうだな…じゃあさっさと終わらすか」
「はい」
2人は冒険者登録を行うためにギルドへ向かっていた。道中にエルが別の方向に行こうとしたのをシウラが止めたり、エルにいちゃもんを付けた野盗らしき者にシウラが殺気を放ちそれをエルが止めたりしたが無事にギルドへ到着する事ができ、その建物は外見から見て三階建ての立派な建物であった。確かに学園の裏に作られてはいるが、学園に負けず劣らずの建物の大きさである。2人はギルドの中へと入ると中にいた冒険者達の視線が2人へと集中したが、冒険者達の視線を気にも留めず受付窓口へ並ぶ。
「何か御用でしょうか」
「登録をしに来た」
「冒険者登録で宜しいですか?」
「他に何がある」
「……失礼しました…お二方ご登録で?」
「見りゃわかるだろ」
「………」
「……エル様」
「ん?」
「一般の方には愛想良くなされては?」
素っ気ない態度で接していると受付の女性の目には涙が溜まっているのがわかる。少し威圧的になっていた事に気付くと目頭を押さえ反省した。
「悪いが…配慮が足りませんでしたね」
『それはそれで気持ち悪い』
(うるせえなぁ)
「あっ…いえ……ではご登録をしていただくにあたり、此方へ血液を提供していただきます」
「わかった」
「えっ…」
受付の女性が机に置いたのは冒険者登録をする為の物であり其処に推奨の土台にある皿に血液を垂らす事で水晶に登録者のステータスが映りギルドカードが発行される物だった。説明を聞きエルは躊躇なく親指の爪で人差し指に傷を入れ血を垂らした。シウラもその隣に置かれた水晶にナイフを取り出しエル同様躊躇なく親指に傷をつけ血を垂らした。その2人の躊躇のなさに受付の女性は唖然としていた。
「ん?どうした?なんか違った?」
「あっ…いえ…では登録へと移らせていただきます」
『普通は誰でも血を出すのに躊躇するのにって思ってたんじゃない?目の前で爪で傷をつけて血を出すっていうのはエルだけだからね』
(何が言いたいんだ お前は)
『エルが普通だと思っていることは普通じゃないんだよって』
(俺は普通だよ)
正気を取り戻した受付の女性は登録する為のギルドカードの発行及び登録者のステータスの確認へ移る。その間に2人は親指と中指をすり合わせ傷を治していた。指をすり合わせるだけで血を止める光景を後ろにいた他の職員は固まったまま動かずにいた。エルにとってはただの自然治癒であるが正面にいる受付の女性は自分の頬を両手で叩き驚かずに心が得ていたが…
「では、こちらがギルドカードの説明となります
ギルドカードはお手数ではありますがステータスの更新の度にギルドの受付へと提示していただくこととなっております
一応本日ご登録をされたという事で、御二方のギルドカードのランク表示はGランクとなっております」
「ふむ…」
「一応ギルドカードにはレベル表示がありますが、依頼によってどのレベルが対処できる依頼なのかはギルドの情報をもとに大体のことは受付で確認できます」
「ふーん」
レベルは生まれた時からレベルが表示されるわけであり、冒険者登録もしくは国へ使えた日、そしてこの国では学園に入学した時にレベルが表示され、自分が今どのくらいのレベルなのかを確認できる。これは魔物への対処にできる者できない者を記すのに必要なレベルの基準を示す為のものである。冒険者としてのランクは12段階で表示される。
「ではエル様、シウラ様のステータスの確認を取らせていただきます。
先ずはエル様から……え!?」
受付の女性は水晶に映るエル、シウラのステータスを見て驚愕した。
一般的にどんなにランクが高い冒険者でもステータスは
HP
MP
ATK(攻撃)
DEF(防御)
INT(知力)
MGR(魔法耐性)
AGL(俊敏)
で表記される…が、水晶に映ったエル及びシウラのステータスは…
「?どうかしたんですか?」
「え!あっ…しょ…少々お待ちください」
「「?」」
水晶に映る2人のステータスが表示された時、受付の女性は数分固まったまま動かなかった。エルの問いかけに反応すると受付の女性はその後ろにいる他のギルド職員のところへと行き何やら会話をしていた。
「何なんだ?」
「わかりません…」
『(…あの反応…測定不能だね ちゃんと隠蔽しないからだよ
でもしょうがないね だって私が憑いているんだよ!高貴な!この私が!どう?惚れちゃったでしょ!?)』
(何か言ったか?)
『何も?』
受付の女性の反応の理由がわからずにいるエルとシウラであるが、アリスは受付の女性が何故あの反応をしたのかわかっている…わかるから口元が緩む。エルはアリスの反応を見て何かあると感じつつ、アリスの様子を伺うとシラを切った。
(ん〜…コイツの様子を見ると…あれはコイツの影響か?
はぁ…どうせ、私凄いでしょ!?褒めて褒めて!!
……何て思ってそうだな…)←(大体当たってる)
『何か言った?』
(何も?)
暫くすると受付の女性が戻って来る。
慌てた様子を見せ二枚のギルドカードを持つ手が震え、あり得ないものを見た…そんな表情をしている。エル達は気にもしていないが、受付の中では軽いパニックになっていた。
そして、ギルドカードを2人の手元へと渡った。
「…以上で登録手続きを終了とさせていただきます。」
「ステータスは?カードに表示されてないが?」
「えっと…それは…」
『測定不能…そう出たんじゃない?』
「……成る程、まぁいいや。」
「え?」
『ちょっと!』
「行くぞ」
「はい」
アリスが測定不能が出たと答えた時、満面の笑みでエルの反応を待ち、「褒めて褒めて」と顔に書いてあった。しかしその事を察したエルは気にしない素振りを見せると、アリスは「噓でしょ!!?」という表情を見せる。2人は登録を終え外へと向かい、その途中他の冒険者達が2人を睨みつけているが、2人は有象無象の連中は眼中に入らないと言っているかのように平然としていた。そして、エルが扉に手をかけ開くと、シウラが後ろを振り向き…
「覗き見は悪趣味だと思いますが?」
「?」
中にいる冒険者及び受付の者達はシウラの言っていることがわからないという反応になる中でその言葉の意味を理解した者は1人だけであった。シウラは中の者達へ一礼をし、エルと共にギルドを後にした。
別室にて…
「マジかよ 気づかれた」
受付の奥の部屋にある階段の上にある部屋にいる者は、受付の女性の報告を聞き〈透視〉で2人の登録者の様子を観察していた。2人の登録者のステータスが測定不能という報告を受けて…又はランクGに成り立ての冒険者のステータスが測定不能など前例がないからである。(しかもLv1である)
そしてその者達の様子を観察し、この国のギルドのトップであるギルドマスターの魔法が気付かれていたのだ。
「此れは困ったな…」
ギルドマスターはこの測定不能という結果に納得すると同時に頭を抱え悩むこととなった。
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