64-1 これからが本当のハーレム展開?


 ハーレム展開、嫌う人は嫌うけど、主人公が男の恋愛物で長期連載になると、どうしてもそういう展開になると思わないか? そもそもハーレムって何人からなんだ? 2人? 3人? 4人?

 それくらい普通なんじゃないのか? そもそも飽きるだろう? いつまでたってもくっつかない恋愛物でキャラが3人じゃ……

 だから、ハーレムって言うのは仕方の無い事なんだ。

 っていうか俺はハーレムなんて作ってないから!


「お兄ちゃん!」


「はい……」


「さっきから何をぶつぶつ言ってるの!」


「いや、栞がハーレムハーレム言うから、小説のよくある展開についてひとり言を……」


「だってそうでしょ! お兄ちゃんに言い寄る人を片っ端から生徒会に押し込んで、そこに毎日の様に通って、私達は臨時役員なんだよ!?」


「ま、まあ……」


「去年3人でやってたのに、今年は何人いるのよ、人多すぎでしょ」


「いや、ま、まあ……」


「だから今日こそは早く帰って家でイチャイチャするの! わかった!」


「いや、早く帰るのは良いとして、なぜイチャイチャするんだ?」


「私がしたいからに決まってるでしょ!」


「おい……」


「したいの、イチャイチャしたいの! お兄ちゃんとイチャイチャするの、するっってばすーーるーーのーー、もうやだやだあああああああ」

 朝飯を食べながら目の前でじたばたしだす妹……パンツの色? もうおしえねえよ……


「いや、あの栞さん?」


「部屋に内鍵付けた癖にいいいいいいいい、ひどいいいいいいいいいいいい」

 栞は更に手足をじたばたと椅子の上で暴れる。っていうか絶対俺にわざとパンツ見せてるだろ…………だから言わねえよ!


「わーーった、わーーーったから」


「お兄ちゃんイチャイチャしてくれるの!」

 目をランランと輝かせ俺を見つめる栞……このワンパターン妹……でも畜生なんでこんなに可愛いんだよ……


「わかったよ、イチャイチャはしないけど、そうだな……たまには早く帰って久しぶりに放課後ティータイムをするか」


「わ~~~~~~~~い」


「なんかそこはかとなく懐かしい響きだなぁ……」

 俺と栞はそう約束をして、手早く朝食を済ませ、一緒に学校に向かった。



 ###



 いつもの様に教室に入ると、栞の周りに女子が群がる。 女子が……女子だけが……って……あれ?


 いや、いつもは女子だけじゃない、男子もある程度は近寄るんだが、まあうちのクラスは女子が圧倒的に強いので、栞の側に近付く男子は女子の後ろから遠巻きに見ているんだが、どういう事か今日は一人もいない……あれ? っとクラスを見回すと、教室の端に男子が群がっている場所が……まあ群がると言っても大した人数ではないんだが……


 おれが不思議そうにそっちを見ていると、その男子の輪が割れ、中から女子が一人出てきた……あいつか……そう、西園寺 茜だ……


 茜は物凄い不機嫌そうな顔で、俺の方に歩いてくる……う~~わ、めんどくさそう……


「あんた! もっと早く来なさい、あいつら邪魔でしょうがないわ」


「邪魔って……」

 男子連中が俺と茜を注視している……本当辞めてくれ、益々男子連中から孤立しちゃう。


「あれだけ言ったのに近寄ってきて、ほんとめんどくさい……あんたが側にいないからよ!」


「いや、そんな事を言われても」


「ああ、めんどくさい、あんたこんな所さっさと辞めて私の家に来なさい!」


「家にって……」


「私と一緒に留学すれば良いのよ、高校とか行く必要なんて無いんだから」


「いやいやいやいや、必要でしょ?」


「この国は最終学歴しか見てない国よ、そもそも私と一緒にいれば将来の心配なんて何も無いんだから」


 言い切りやがった……どんだけの金持ちなんだよ……


「俺に留学なんて無理だよ」


「ふん、そうね、あんたの妹とは大違いの学力ですもんね」


「うるせえよ」


「でも大丈夫、最高の家庭教師を雇ってあげるわ」


「いやいやいやいや、学校って勉強だけじゃ無いだろ?」


「例えば?」


「例えばって、いやほら、その…………友達とかさ」


「あんた友達いないじゃない」


「い、いるわ! 少しはいるわ!」


「はん、友達なんて必要なの? まあどうしても欲しければ友達なんて私がいくらでも用意するわよ」


「マジで! いやいやいやいや、そうじゃない、用意とかそれって友達か?」


「はん、あんたが思っている友達とやらに聞いてみたら? 俺達友達か? って」


「聞くか! もし違うって言われたら軽く死ぬわ!」


「ふん、所詮友達なんてそんなもんよ、要らないわ」

 茜はそう言うと少し寂しい顔をした。


「…………お前さ」


「はーーい、席に着いてねえ」

 いつの間にか鳴っていたチャイムに全く気が付かなかったのか? 先生が教室に入ってくる。茜は先生を一瞥すると俺に背を向け何も言わず席に戻っていった。


「はあぁぁぁ…………」

 一体なんなんだ? なんで俺なんだ? そんなに金があるなら、俺より良い男探した方がよくね? 世界中にごまんといるだろ?


 俺は深いため息をつくと隣を見つめそしていつもの様に声をかけた。


「麻紗美……ホームルーム始まるぞ、これくらいで気を失ってると本当に戻って来れなくなるぞ……」

 いつもの様に嫌な事があると気を失って回避するという特技を使用していた麻紗美に軽く注意をして視線を先生の方に向ける。


 でもさ、ハーレムハーレム言ってるけど……ハーレムってこういう事じゃないよな? もっと良いもんじゃないのかハーレムって?


 俺は麻紗美と栞と茜の3人を順番に見て再び大きなため息をついた。




 

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