63-3 悪夢の転校生
「あああああああああああ! まただあああああ、またお兄ちゃんにいいいいいいいい」
なんなのなんなの一体!
またお兄ちゃんに言い寄る女子が現れた。もうRPGのモンスター並みに沸いてくる感覚……
前から思っていた通りになった……お兄ちゃんは高校に入ったら絶対にモテるって……だから私は勇気を出して告白した……そして案の定お兄ちゃんの元には次から次へと女の子が……でも今まではまだ良かった。小学生以下の恋愛感しか持ち合わせていないお兄ちゃん……だから周りもあまり積極的にお兄ちゃんには迫って行かなかった……でも……まずい……遂に刺客が来た……
「そろそろ……本気を出す時かも……」
今までは控えていた……え? 結構迫ってたって? あれでも控えていたの!! だって……だってええ、お兄ちゃんが引くんだもん!
でも……もうそんな事は言ってられない、だって今回の相手はお兄ちゃんの事なんて考えていないから……
そう、そうなんだ。今までのライバルは皆お兄ちゃんの事を考えていた。だから恋愛に消極的なお兄ちゃんに対して積極的になれなかった。でもあいつは、あの茜っていう女は違う……お兄ちゃんの事なんて全く考えていない……自分の欲しい物を手に入れるだけ……
「相手に取って不足なし……受けて立つ」
どんな手にしろお兄ちゃんを奪いに来るなら敵だ。お兄ちゃんが望んでいない相手にお兄ちゃんを渡すなんてあり得ない。
美月ちゃん、美智瑠ちゃん、麻紗美ちゃん、雫ちゃん、会長、先生、セシリー、もしお兄ちゃんが自分から誰かを選んだのだとしたら、それは仕方がない事だって思う……だって私は妹だし……
でもお兄ちゃんは今の所私を選んでくれている。私と付き合っている! これってよくよく考えたら凄い事なんだよね、皆よりも圧倒的に有利なんだよね……
仮に誰かと……な関係になっても、それはあくまでも浮気、私と別れない限り私がお兄ちゃんの正妻なんだから。
だから今までは遠慮していた。ライバル達に、遠慮していたの……でももう遠慮はいらない、あいつに対しては、あの茜っていう気取ったお嬢様に対して遠慮なんかしてられない! 今この状況で私が目指すものはただ一つ!
「遂に、遂に伝家の宝刀を、私の切り札を出す時が来た!」
そう、なんて言ったって私はお兄ちゃんと一緒に暮らしている……もうこれは圧倒的に有利、圧倒的勝利、やるしかない……
「既成事実……ふふ、ふふふふふ、ふふふふふふふふふ」
これはあの茜っていう女に対しての緊急避難的な行動なのだから何も問題はない!
そして、切り札を使える最大の理由はお兄ちゃんだ! この間も言ったけど本当に最近お兄ちゃんの目が、私を見る目が間違いなく変わった。お正月から今でもずっと続いている。あの獲物を捕らえる様な目、私の身体を舐める様に見る目線……それがなんと、あのお兄ちゃんから向けられている!
他の男の人からそんな目で見られたら身の毛がよだち、即通報するレベルなんだけど、でも……その相手がお兄ちゃんなら、こんなに嬉しい事はない。
お兄ちゃんが私を、私の事を意識している?
「えへ、えへへへへへ、えへへへへへへへへへへへへ…………」
私は早速鏡の前に座り身だしなみを整える。
これまでの失敗を生かし、裸で~~とか下着で~~とかは控え、ちゃんと可愛いパジャマに着替え勿論下着もちゃんと可愛い上下お揃いの物を着用する。
「いつもいきなり迫るからお兄ちゃん慌てちゃうんだよね、さりげなくそっとお兄ちゃんのベットに忍び込めば……ふふふふ、お兄ちゃんにリアル妹抱き枕をプレゼントしちゃう~~」
え? そんなもの欲しがる人なんていない?
そんな事ないもん! お兄ちゃん前に寝ぼけて抱き締めてくれたもん!
そしてあわよくば、寝ぼけているお兄ちゃんが私をそのまま…………えへ、えへ、えへへへへへへへへへへへ。
もう手段は選ばない、でも、でもね……さすがに私からって言うのはどうかなって……ううん……それもありかも知れないけど、やっぱり初めてはお兄ちゃんからって……
「正妻は私……あんなポット現れて正妻を名乗るなんて……」
お風呂で念入りに身体を洗い、凄く良い香りのするとっておきのシャンプーも使った。すべすべお肌になるボディーソープも使った、サラサラの髪になるリンスも……これでお手入れは準備万端! 今日は私とお兄ちゃんの記念すべき日になる!
私はそっと部屋を出てゆっくりと音を立てずに扉を閉めた。
お兄ちゃんは隣の部屋、今は間違いなく夢の中……
「さあお兄ちゃん、私と一緒に一夜の夢を、そして私の夢を叶えて~~~」
ゆっくりと音を立てずに廊下を歩き、お兄ちゃんの部屋の前に……
そしてそっと扉を……そっと……そ…………
「そ、そんなああああああああああああああああ」
お兄ちゃんの部屋の扉が開かない……ドアノブを回しても全然開かない……これは間違いなく鍵がかかっている。でも鍵なんて美月ちゃんから教わった方法で開けられる……開けられるの……鍵穴があれば……でもお兄ちゃんの部屋の扉には鍵穴なんて無かった。
「内鍵って…………そんなあああああああああああ」
いつの間に内鍵を……こればかりはどうしようもない……後でお兄ちゃんが居ない間に内鍵を外せる様に細工をするしか……
私は仕方なく今日の作戦、お兄ちゃんにリアル妹抱き枕プレゼント作戦を中止した。
でも……私はこれで確信した。間違いない……お兄ちゃんは……
私の事を意識している……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます