61-1 明けまして……おめでとう


 おかしい……お兄ちゃんの様子がおかしい……


 何がおかしいかと言うと……お兄ちゃんと美月ちゃんの仲が良い……いや……仲は前から良かった、でも今はそれ以上に良い、良すぎる……良すぎるの!


今私達はスキー旅行からの帰りで、お母さんの実家で美月ちゃんの家でもある長野県の安曇野に電車で向かっている。


 その電車の中、4人掛けボックスシートに私達は3人で座っている。

 座っている配置はお兄ちゃんの隣が美月ちゃん、私の前にお兄ちゃん。


 お兄ちゃんの隣が……美月ちゃん…………


 そう……私は昨日美月ちゃんと帰りの電車でお兄ちゃんの隣をどっちが座るかを賭けて勝負した。

 

 そして……見事に負けた……ぐはっ……


 なのでお兄ちゃんの隣の席は今、美月ちゃんの物になってしまっている。


 まあ、向かい合わせに座っているし お兄ちゃんを横からじゃなく前からたっぷり見れるから良いんだけどね……もし私だけ一人席だったら辛いけど、3人で一緒に居られるから疎外感も無いし……


 

  ただ……これは聞いてない……目の前で繰り広げられるお兄ちゃんと美月ちゃんのイチャイチャ……な、何? なんなの? 何があったの?


「お兄ちゃま、美月の事好き?」


「何言ってるんだ!好きに決まってるだろ?」


「わーーい、えへへへへへへ」



 きいいいいいいいいいいい!


 何? なんなの一体? 私あんな直接的にお兄ちゃんから好きだよなんて、言われた事無い……羨ましい……羨ましすぎるよおおおおおお!


 お兄ちゃんどうしたの? なんで美月ちゃんにデレデレなの?


 ま! まさか!!


 昨日お風呂で……お兄ちゃん……ま、まさか……美月ちゃんと一線を越えちゃったんじゃ!?

 そうよ、そもそもなんで二人きりでお風呂に入っていたのよ! 私に隠れてこそこそと……ま、まさかお兄ちゃんから?


お、お兄ちゃんが、つ、遂に……真性のロリコンに!?


どどどどど、どうしよう、通報? で、出来ない、そんな事出来ない……お兄ちゃんが刑務所に入っちゃったら……離れ離れになっちゃう……


 じゃ、じゃあどうすれば…………そ、そうだ! ロリでも合法なら! 私がロリになれば合法!


私は持っていた化粧ポーチから髪ゴムを二つ取り出すと髪の毛を2本に結んだ……そう、ロリと言ったらツインテールだ!


 どう? お兄ちゃん、どう? 私は黒髪ツインテールをフリフリさせてお兄ちゃんに笑いかける………………



 見ないいいいいいいいいい! 全然私を見てくれないいいいいい!


「お兄ちゃま、はい、あーーん」


「あーーん、お、旨いなこれ」


「あん、お兄ちゃま、美月の指まで食べちゃだめえ」


「ああ、ごめんごめん、美月の指の味だったか、どうりで美味しい筈だ」


「そうなのー? 美月も味見してみよっと、うんお兄ちゃまの味がするうぅ美味しい~~」




ば、な、なんなのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


 なんなのなんなの一体、え? まさか付き合ってる? これってもう完全にバカップルじゃない? え? 高校生と小学生って付き合って良いの? いや違う! お兄ちゃんは私と付き合ってるんだから……でも……よく考えたら妹と平気で付き合うって言っちゃうんだから、小学生とも平気で付き合っちゃうかも……

 

 私が言うのもなんなんだけど、お兄ちゃんてそう言うの気にしないし……


 まさかまさかまさかまさか……本当に本当に昨日の温泉で……私が入った時……既に二人はもう……


 いや、そんなわけない、そもそも二人は裸じゃ無かった……いや、でも……タオルの下は裸だし……え? まさか本当に? そんな……お兄ちゃんが……美月ちゃんとなんて……


 そう言えばお兄ちゃん……今朝から様子がおかしい……私の目を見ない……何か隠している様な、やましい事がある様な……


 隠している事……私に言えない事……やっぱり、やっぱり美月ちゃんと!


そんな……お兄ちゃんが、お兄ちゃんが、真性のロリコンになってしまったなんて、そんなああああああああ…………


 と、とりあえず確認しなくては……本当にそうなのか?



「えっと、なんか随分仲が良いけど……二人とも……ど、どうしたのかな?」


 遂に聞いてしまった、二人に……だってあまりにイチャイチャしてるんだもん、別に隣の席は譲ったけど、お兄ちゃんを譲るとは言ってないし。


「え? 普通だよ、ね、お兄ちゃま」


「ああ、うん何か変かな?」


 無自覚だよおおおおおお…………


 お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん! どうしたのお兄ちゃん、まさか! 美月ちゃんに洗脳されたの!? 美月ちゃんなら可能……ううん、そんな事あり得ない、美月ちゃんがそこまでするとは思えない。


 それよりもお兄ちゃん、今も私から目を反らした……何? なんなの? まさか!

 


 昨日お風呂で着ていた下着が気に入らなかった?


 だってだって、昨日は普通に寝るって思ったから、いつも付けている普通の奴にしちゃった……


 油断したあああああ、そ、そうよね、美月ちゃんが居るとはいえ、お兄ちゃんと同じ部屋で寝るんだもん、何があるか分からないよね。


 お兄ちゃん……幻滅したのかな? あんな普通の下着を見て…………ああ、昨日に戻りたいよおおおおお……


 仕方ない……これからは油断しないようにするとして、問題はこっちだ、目の前でまたイチャイチャし始めるお兄ちゃんと美月ちゃん。


 駄目だ、奪わないと、美月ちゃんからお兄ちゃんを奪い返さないと、お兄ちゃんをロリの道から修羅の道から救わないと!


 妹として、そして愛する人の為にもお兄ちゃんをロリコンの道から美月ちゃんの魔の手から救い出す!


 お兄ちゃんの為に、そして美月ちゃんの為に……


 そうよ、これは…………聖戦だ!!





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