56-5 大人デート

 

 お台場からゆりかもめに乗り地下鉄に乗り換え途中下車、某有名ケーキショップに立ち寄る、堅そうな名前の有名ケーキ店、ショーウィンドウに並ぶケーキに目を輝かせる妹。


 そんな妹を見て、俺は先ほどの悪魔の心を圧し殺し、改めて妹として見る、妹ととして付き合うと心に決める……


「ねえお兄ちゃんどれにする? これなんか美味しそうだよね、あ、これも」


「栞の好きなのを買えばいいよ」


「えーーお兄ちゃんの好きなのも食べたい~~」


「俺の好きなのね~~、うーーん、これなんか美味しそうだな、じゃあ俺はこれ」

 正方形の形のチョコレートケーキを選択、妹はシンプルなイチゴのショートケーキを選ぶ、それをそれぞれ2個買い店を出た。


「あーーーー! 失敗したああ」

 店を出て再び地下鉄に乗った所で突然妹が叫ぶ、休日で空いているとは言え結構なボリュームだったので俺は慌てて聞き返した。


「な、何を失敗したんだ?!」



「ケーキ……どうして2個買っちゃたんだろ……2個買ったら、あーーんが出来ないよ~~~」



「は?」


「えーー、お兄ちゃんそっちの味知りたい、じゃあ、あーーーーんって流れがうちの定番じゃない!」


「定番て……」


「あーー失敗したああ」


「べ、別にそれくらい……2個でもやれば」


「え?」


「いや、別にあーーんくらい……」


「ふわああ、お、お兄ちゃん! お兄ちゃんが……デレた」


「デレ……って俺はツンデレか!」


「そうだよ! なんかツンデレキャラが少ないと思ったら一番のツンデレはお兄ちゃんなんだよ」


「なんでだよ!」

 (会長……)


「ううん、お兄ちゃんはもっとデレないと、今はツンツンツンツンデレくらいだよ!」


「いやいやいやいや、男のツンデレとか誰得だよ」

 澪は……あああいつのデレは雫にだけか。



「あはははは、私得かな~~~~」



 そんな下らない会話をしながら家路に着く、でも……楽しい、楽しかった、妹との会話が凄く楽しい、やっぱり今はまだ、まだこのままがいい、何も焦る必要なんてないんだよ、高校1年だぞ、まだまだ将来なんて先の事だ。


 だからこのまま俺が耐えればいい、今までの様に……


 

 何本か電車を乗り継ぎ地元の駅に着く、さすがにここから手を繋いだり腕を組んだりは控えている、妹は平気だよとは言うが、勘弁してもらっている……ほら今も何人かに挨拶されているし……妹がね…………ふん。



「たっだいま~~~~じゃあお兄ちゃん着替えてきてね、コーヒー入れておくから」


「ああ、ありがとう」

 今日は一応大人デートと言うことでジャケットを着て出掛けていたのでラフな部屋着に着替え、顔と手を洗いリビングに向かうと、既にいつの間にか部屋着に着替えてコーヒーの準備を終えた妹が座って待っていた……早いな……


 俺は上下スエットとラフな格好だったが妹は違った。


 今日は外が少し寒かったのでロングのワンピースを着ていたが、今はヒラヒラ超ミニスカートで上は可愛いらしい肩出しブラウス……色々チラチラ見える……いや我慢だ我慢……


「栞……寒くないのか?」


「今エアコン付けたから大丈夫~~さあ、お兄ちゃんケーキケーキ」


「エアコン付けて迄……まあいいけど……えっと同じの食べるの?」

 テーブルには俺が選んだチョコレートケーキが二つ並んで置かれていた。


「お兄ちゃんと同じ物が食べたいの! 同じでも、あーーんして貰えるし~~」


「まあ……いいけど……」

 そんなミニスカートで、そんな格好で……また俺の中の悪魔が目を覚ましそうになる、可愛い……超可愛い妹……ダメだダメだ、抑えなければ……


「いっただきまーーーす」


 そう言ってまずは一緒にケーキを食べる…………え? うわなんだこれ……


「え? これすげえ、ヤバいくらい染み渡ってる」


 大人の味……いやこれはダメだろ? 未成年が食べていい物じゃない気がする。


「ブランデーかな? 凄い染みてる……うわ下の方ヒタヒタじゃん」

 確かに大人のケーキだけど、これはさすがに凄い味だ。


「お兄ちゃん…………あーーんしよ」


「いや、それより、これはさすがに良いのか? 栞って……な、何してる!」

 俺は妹の方を向くと妹はケーキに乗ってるアーモンドを手でつかみペロリとなめてそれを咥えて俺の方を見つめるって……え?


「おにいひゃん……あーーーーーん」


「いや、いやちょっと待て栞お前、なんか目が、え? いやちょっと」


「おにいひゃ~~~~~ん」


「うわうわうわあああああああああ……うぐううっ」




 あああああああああああああああああああああああああああああああ………………





 ファーストキスは……俺のファーストキスは……チョコとアーモンドとブランデーの味が……した……。






「おいひいおにいひゃん?、もっとあーーんするうぅ?」


「うぐう、い、いや……ちょっと待って……」


「じゃあ~~次はおにいひゃんから、しおいにあーーんしてえ」


「えっと……栞さん、酔ってる?」


「あーーーーん、おにいひゃんあーーーんってばああああああ」

 口を一杯に広げて雛鳥の様に俺にケーキをたべさせろと要求してくるってちょっと、ちょっと待ってくれ、さっきの……


「はーーやーーーくーーーーーおにいひゃんはーーやーーーくーーーーー」


「いやいやいやいや、ちょっと待って、今それどころじゃ」

 気持ちの整理がそして理性が……


「えーーーーーじゃあ、さっきのかーーえーーしーーてーーー」


「うわああああああああああああああああああ」


 妹は俺の顔をがしりと掴むと再び俺の口に、さらには舌が…………、うわああああああああああああああああ…………



 そして5分後、妹は俺の口の周りに付いたチョコを散々なめ回しそのままコロンとソファーに転がりすやすやと寝始めてしまった。


「うううううう、もうお婿に行けない……」


 大人のデート……大人の味……うがああああああああああああああああああ。


 俺はすやすやと寝ている妹の顔を見つめている。


 妹の弱点がまた見つかった、今までは俺だけだったが、今回新たに見つかった……それはお酒、お酒が弱点だったか……そしてキス魔……


 いや……ダメだろこれ色々ダメだよな、無しで今回の話しも今のキスみたいな物も全部無しで無かった事に


 全部無かったことにしてくれえええええええええええええええ。



 



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