55-1 祭りと政

 

「お兄ちゃま~~~~~~」


「美月~~~~~~~~~」

 久しぶりに生美月がこっちにやって来た、いや相変わらず可愛いな~~俺の美月は。


「もう電話だとお兄ちゃまのお顔がちゃんと見れないから~~寂しかったよ~~」


「たまにビデオ通話してるだろ~~」


「えーーあんな小さい画面じゃ嫌だよ~~それにこうやってお兄ちゃまとくっつけないし~~」


「俺も美月の可愛い顔がはっきり見えて、こうやって美月を抱きしめられて嬉しいよ」


「お兄ちゃま~~~大好き~~~♡」


「美月~~~~♡」


 美月が俺の首に抱きついてきたので、俺も美月を抱きしめて、くるくると回す、いや可愛いな~~もうフランス人形よりも可愛い、ああ、本当に美月を部屋に飾って置きたいな~~





「あのぉ……毎回そうやってぇ抱き合ってるけどぉ私たちがぁ居るのぉ分かってるぅ?」


「相変わらず……君って奴は……」


「ゆう君って……やっぱり……ガチロリなの?」


「アンちゃん、通報……」


「ちょっと、どう見ても小学生じゃない……あんた……本当に見境無いのね」


「はぁはぁ美月ちゃんかわゆす」


 生徒会室にはいつものメンバーにプラスして雫と澪もいた。



「は? いとことの再会を喜ぶなんて普通だろ? な? 美月~~♡」


「ね、お兄ちゃま~~♡♡」


 金曜日の午後、美月が生徒会室に来た、これから週明けの選挙の為に最後のお願いを皆で行う、というか行っていた。


「妹に飽きたらずいとこ迄とは、どこまで鬼畜なの? この男、雫! 近づくんじゃない、鬼畜が移る」


「移るかそんなもん!」


「お兄ちゃま、そろそろ行かないと」


「ああ、うんそうだな……」


 授業はとっくに終わっている、既に部活動をやっていない生徒は帰宅している時間、俺達はさっきまでその生徒達に投票のお願いをして一度生徒会室にもどってきていた。


「本当にやる気?」


「本当にやるのか美月」


「うん、やっぱりお姉ちゃまに勝つには目立たないとね」


「良いのかなぁ?」


「み、美月ちゃん、かわゆす、かわゆす」


「本当にこれで勝てるの? 勝たないと私の大事な雫が好奇の目に晒されるのよ!」


「そうそうそう言えば、裕、なんで澪さんが協力してくれるのか僕は聞いてないんだけど」


「ウンウン」

 他の皆が一斉に相づちを打つ、言ってないからね、言えるかそんな事。


「まあ、それは……」

 俺は澪に何か言えと目配せをするも、澪は雫とイチャイチャしていて割れ関せずでこっちを見ていないって……おい!。


「とりあえず時間が無いから、はい美月ちゃん衣装」

 この間学園祭で会長が着ていた魔法少女の衣装を美月が着れるように手直しして渡される。


「いつの間に直したんだ?」


「この間ね、皆の着た衣装も取ってあるわよ、着る?」


「いや、皆でやったらふざけてるって思われるから止めようって美月が、な、美月……って……」


「ん?」


「ちょ、み、美月! な、な、何脱いでるんだ!」


「え? これに着替えるから」


「ちょ、待て、俺がまだここに」


「ああああああああ! ロリコン! 出てけえ」


「わかったって、今出るって」


「そういいながらぁ、ガン見ぃしてるぅ」


「もしもし、今小学生の下着姿を覗く変態が居ます、すぐに来てくれますか?」


「おい! 澪! どこへ電話を!」


「ハフハフ、み、美月ちゅわん」


「お前も出ろ! セシリーーー!!」


「しょ、しょんな殺生なああああ、もうちょっと、もうちょっと」


 俺はセシリーを連れて慌てて生徒会室を飛び出る。


「あああ、美月ちゅわんの可愛いお胸をもうちょっちで拝顔出来たのに、裕さまのいけず」


「裕さまって、またキャラが……そうかそうだよなお前って……なあセシリー」

 扉の前で俺はセシリーに真剣に聞いてみた。


「はーい?↑」


「どこの特命刑事だよ、今回の選挙どう思う?」


「どうとは?」


「勝てるか?」


「わたくに聞いても…………まあ、いい勝負になるかも知れませんね」


「大使の娘なんだから政治や選挙戦は間近で見る機会も多いと思ってな」


「まあ……最初は無謀でしたさかいなー、何も言えへんどした」


「そうだと思ったよ」

 セシリーが全然喋らない、セシリーなりに俺達に気を使って居たんだろうと今更ながら思ったがやはり。


「人気、知名度、どれを取っても栞様が上、決定的な差は地盤、栞様はこの辺りじゃあ超有名人ですさかいね、他から来た会長では信用の差が大きい」


「まあな……栞の友達ってうわべだけの付き合いじゃないからな~」

 メール、一つで誰もが協力を惜しまない、そんな信頼関係を構築している栞と戦うのが選挙なんて、それなんて無理ゲー?


「神ですからね、わたくしの栞様は♡」


「お前のじゃねえ……、俺のでもねえけどな」


「それは自分の物にしたいと言う気持ちが入っているお言葉でっしゃろか?」


「そんな事は…………」



「まあ……それでも良いところまで来てるんじゃ無いですかね、最後はお祭り騒ぎにしていますし、所詮選挙なんて暇潰しみたいな物、政治に興味ある人なんて殆どいない、謂わば選挙はお祭りみたいな物ですからね」


「良いのかね? そんなので」


「良いんじゃないですか? 政治の政と書いてまつりごと、と読みますしね」


「まつりごとね、神を祭るか……」


「どちらの神が勝つかですね~~~栞神か葵神か」


 まあ……栞は神になって欲しくない……そんな遠くの存在に、これ以上俺から遠い存在にはなって欲しくない、だから……



「お兄ちゃま~~~~着替えたよ~~~~」


「おおおおおお、美月ちゅわあああん、超可愛い、ペロペロ♡チュッチュッしてもいいとですかあああ♡♡♡」


「お、落ち着けセシリーーーー!」

 魔法少女の格好をした美月に興奮するセシリーを宥め俺は皆に言った。


「さあ、最後のお祭りだ! 行くぞ~~~」


「おーーーー!」

 


 あ、そう言えば美月が何をやるか言ってなかったね、だって言いたく無かったんだもん、最後まで反対したんだもん、でも美月がやらなきゃ勝てないからって……そう、これからやることは……


 美月ファンクラブの……ミニコンサート、くっそロリコンどもめ、美月を変な目で見てる奴は片っ端から殴ってやる!


 魔法少女美月と共に会場の講堂に向かう、うわあ集まってるよロリコン共めロリコンなんて最低だ、皆死ねば良いのに……あれ? なんか胸が痛い……何故だろう。



「皆~~~元気~~~~美月だよ~~~~~」



「うおおおおおおおおおおおお! 美月ちゃあああああああああん」



「なんなんだ一体うちの男子どもは」


 うちの男子が殆ど来てるんじゃないか? 一体どうなってる、うちの学校は……てかそもそも許可が下りるとは……うわぁ校長も来てるし……


「まあねえぇ……1年はぁ栞さん、2年はぁ元副会長や会長、3年はぁ澪さんがいてぇうちの学校ってぇ女子のぉ力がぁ強くてぇ男の子はぁ皆押さえつけられてるからぁ、ああいう幼いぃ女の子を守ってあげたいってぇ感情がぁ溜まってるんだろねぇ~~」


 俺の横で見ている麻紗美がニコニコしながら美月を見ている、ちなみに会長と美智瑠、雫は音響やら照明の手伝い、俺と麻紗美は警備の名目で後ろから眺めている、セシリーは……なんかオタ芸集団一緒に踊ってる……澪は「行くわけないでしょ、でも雫は今回だけ貸してあげる」と言って生徒会室で待機中。


「わかるけど、美月は最強だぞ、ある意味栞よりも強い」


「見た目でぇそこまではぁわからないからねえぇ」


「まあ俺の前だけは少し弱くて、可愛い素直な女の子なんだけどな、俺の美月♡」


「ロリコン……」



 美月はスカートをヒラヒラさせウサギの様に舞台を跳ね回り、3曲歌ってから会長と共に舞台で選挙宜しく~~と言ってミニコンサートを終了させた、曲はまあアニソンだ、魔法少女のアニソン、俺は5人の盗撮者とセシリーを取り押さえ、携帯のデータをその場で削除させた……


「しょんな殺生なあああああああああ」


 さあいよいよ週明けは選挙の投票日、朝に各クラスのHRで投票用紙に記入し放課後開票され結果が知らされる、栞はメール以外動きは無かった、わざとなのか、余裕なのか、それとも……



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