54-6 兄妹と姉妹
深夜お兄ちゃんが寝静まったのを見計らい、私はそっとお兄ちゃんの部屋の扉を開ける。
慎重に音を立てずに、慎重に慎重にゆっくりと扉を開ける。
この時の為にお兄ちゃんの部屋の扉は私が日頃から整備している、ドアノブは分解整備してスムーズに回る様にしてるし、蝶番に注油も欠かさない、でも、それでも慎重に音を立てない様に私は扉を開ける。
扉を開けるとお兄ちゃんの部屋から扉の外に空気が流れ込む、ふわりと香るお兄ちゃんの部屋の香り、何度嗅いでも飽きないその香りに思わず顔がにやける。
赤ちゃんの顔に息を吹き掛けると笑う様に、お兄ちゃんの部屋の空気が、匂いが私の顔に当たると私も反射的に、にやけてしまう。
シンと静まり帰ったお兄ちゃんの部屋、私はお兄ちゃんを起こさないように慎重に、物音を立てずにそっと、ゆっくりと、ベットに近づく。
この緊張感、お兄ちゃんにバレないようにそっとそっとお兄ちゃんの元に向かう。
起こさないようにお兄ちゃんの寝ているベットの脇迄歩く、ゆっくりと歩いていると、段々薄暗さに目が慣れていく。
お兄ちゃんは子供の頃から真っ暗の中で寝るのは嫌い、なのでいつも常夜灯を点けて寝ている。
うっすら暗い部屋に目が慣れてくると、お兄ちゃんの顔がぼんやり浮かんで見える。
まあ、私のお兄ちゃんeyeは別に暗闇でもお兄ちゃんが見えるんだけどね、お兄ちゃんeye……お兄ちゃん愛!
でも心の目で、お兄ちゃんeyeで見るより、この目でそのままのお兄ちゃんを見る方が、ずっとずっと楽しいから目が慣れるまで待つ。
慣れてくると、はっきりと睫毛から毛穴まで見えて来るお兄ちゃんの寝顔、お兄ちゃんは寝相がいい、いつも頭の左側を枕に乗せ、壁側ではなく部屋側を向いて寝ている。
私はお兄ちゃんを起こさないように、細心の注意を払いつつベットの脇にそっと座り、真横からお兄ちゃんを眺める。
すやすやと寝息が聞こえる、時々小さなイビキもかくお兄ちゃん、お兄ちゃんのイビキは凄く良い音色、まるで鈴虫の様なの。
私はお兄ちゃんの寝顔をじっと見る、お兄ちゃんの寝顔を見るのが好き、大好き、ううん、どんな顔でも大好きなんだけどね笑顔も怒った顔も、お兄ちゃんの…………泣き顔も。
美月ちゃんのせいでお兄ちゃんは一緒に寝てくれなくなった、この間迄一緒に寝てた時は毎日こんなに苦労無く、もっともっと近くで見れたのに……美月ちゃんの馬鹿……
だから前から時々やっていた、お兄ちゃんの寝顔鑑賞会を復活させた。
ああ愛らしい、素敵、お兄ちゃんの寝顔は子猫よりも可愛い……愛しい、愛くるしい、あああ、癒される、お兄ちゃんの寝顔は私の心を癒してくれる、何時間でも見ていられる。
最近生徒会長選挙のせいでお兄ちゃんと一緒に居る時間が減った、ううん、去年迄と比べると格段に増えたんだけど、でも人間一度贅沢を覚えちゃうと、中々元には戻れないの。
朝も昼も夕方も夜も、そして深夜も、ずっとずっと一緒に居たい、この間迄それは叶った、叶っていた、
まあ厳密にお風呂とかは別なので完全に叶ったわけではないけれどそれは殆ど叶った、叶っていた。
もっともっと一緒に居たい、24時間、365日一緒に居たい、それがずっとずっと続けば、一生続けば良いのに。
でも仕方がない、今のこの状況はお兄ちゃんが望んだから、お兄ちゃんの望み、お兄ちゃんの希望、それは私の望みであり、私の希望でもある。
でも、でもね、お兄ちゃんが他の女の子と一緒に居るのは嫌、本当は話しているのを見るのも、嫌。
お兄ちゃんに嘘は駄目って言っておきながら、私は自分に嘘を付いている、本当は私、そんな良い子じゃないの、本当は凄く嫌な子なの……お兄ちゃんに嫌われたく無いから嘘を付いているの……自分に嘘を付いているの。
だからストレスが溜まる、だから癒しに来たの、この可愛い可愛い寝顔は私の物、私だけの物。
この寝顔を他の人に見せたくない、この寝顔を取られたくない、お兄ちゃんを取られたくない。
今は我慢の時、お兄ちゃんと一緒に居る時間が減るのは辛い、お兄ちゃんに敵認定されているのも辛い、でも……お兄ちゃんは分かってくれる、私のしている事はお兄ちゃんの為なんだから、だから……今は我慢の時……この寝顔を見て耐える時。
私はお兄ちゃんを愛する為に生きている、お兄ちゃんに愛される為に生きている。
私はお兄ちゃんの為に生きている、私の全てはお兄ちゃんの物だから。
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