51-3 妹の座争奪戦


 『お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん』


 私の頭の中は常にお兄ちゃんで一杯になっている、お兄ちゃんを思っていると幸せになれる、でもそれだと学校生活が出来なくなるので学校に居るときはほんのちょっとだけ頭のリソースを違う事に傾ける、授業とか友達とか……


 自慢ではないけど、私には友達が一杯いる、友達は私の人生に於いて凄く大切な物だと思っている、でもお兄ちゃんと比べるとそれは些細な物、お兄ちゃんと友達のどっちを取るかと聞かれれば、私は迷わずお兄ちゃんを取る。


 だから学校に居るとき私は、ほんの少しだけ不幸せな気持ちでいる。


 私の人生、ううん、私自身、私の命よりも大事な物、それはお兄ちゃん……


 今は何を気にする事も無く家ではお兄ちゃんの事を全開で考えられる、お兄ちゃんお腹空いたかな? そろそろお風呂かな? 眠くなってきたかな? って常にお兄ちゃんを観察してお兄ちゃんに言われるより先に行動する。


 私はお兄ちゃんの事は何でも知っている、それでもお兄ちゃんの行動を先読みするのは難しい、お兄ちゃんは優しすぎるから私に頼み事は滅多にしてくれない。


 今日も食後のコーヒーに少し牛乳を入れたかったらしく、一口飲んだら立ち上がりキッチンに行って自分で取ってきてしまった……


 何でも言って欲しい、どんな些細な事でもお兄ちゃんの為に何か出来るのなら私は幸せなのに、私のお兄ちゃんに対する唯一の不満、それは……私に迷惑を掛けない様にする事が私の為だと思っている事。

 

 お兄ちゃんの為なら、お兄ちゃんの事なら何でもしたい、死んでくれって言ったら喜んで死んであげられるくらい何でもしたいの、お兄ちゃんはそれが分かって居ない

 だからお兄ちゃんの事をもっともっと観察をして、お兄ちゃんの事を知り尽くす事が私の今の目標、お兄ちゃんが考える前に考えられる様になりたい


 


 ううん、私はお兄ちゃんになりたい



 朝起きたらお兄ちゃんになってないかな? お兄ちゃんと入れ替わってないかな? って思っちゃう


 最近一緒に寝てくれる様になってこの思いは一層強くなっている。


 映画でもあったよね、入れ替わっちゃう奴、お兄ちゃんと入れ替わったら……………………はああああああああああああ


 もうまずは(自粛)して(自粛)もして、(自粛)しちゃう、だってお兄ちゃんどんなに頼んでも断るんだもん。


 あ、でも入れ替わるとお兄ちゃんが私の身体に…………


 ちょっと、ちょっとだけ恥ずかしいけど、私をたっぷり見てくれるって言うのは結構嬉しいかも……


 そ、そうだ! いっそ私がお兄ちゃんの身体で私を………………


 ああ、でもどうなんだろ、やっぱりお兄ちゃんがこう来てくれるっていうんじゃないと、自分の目線で自分にってちょっと嫌だな……


 そうだ! もういっそ、お兄ちゃんと身も心も一緒になったらいいんじゃないかな? お兄ちゃんの身体と心に私が入り込むってなったら、お兄ちゃんと同化出来たらどんなに幸せなんだろうって考えちゃう。


 お兄ちゃんもっと私に命令して、お兄ちゃんもっと私に頼み事をして、お兄ちゃん! もっと私にお世話をさせて!



 『お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん』


 今日も私はお兄ちゃんの事で頭を一杯にしていた。

  



 しかし……今、私は最大のピンチに陥っている……、お兄ちゃんをお兄ちゃんと呼べなくなってしまうかも知れないと言う最大のピンチに……


 お兄ちゃんをダーリンとか、あなたとか、旦那様って呼ぶ方がどんなに言いかとも思った。


 でも昨日、お兄ちゃんは私にお兄ちゃんと呼んでくれるのが一番いいと言った。


 私もお兄ちゃんの事をお兄ちゃんと呼ぶのが一番好き……


 そう、お兄ちゃんがそう言った以上、私はこの妹の座争奪戦に必ず勝たなくてはいけない

お兄ちゃんの考えは私の考え、お兄ちゃんに黒と言われれば、それは黒なのである!


 

 私の妹の座、一番のライバルは美月ちゃんだと思っていた、ううん、今でもお兄ちゃんにとっての一番の妹はひょっとしたら私では無く美月ちゃんの様な気がする……


 やはり私とお兄ちゃんは年が近すぎる。


 でも今回美月ちゃんは居ない、まあ遊びに来るらしいけど、お店では働けない……多分?


 そうなると一番のライバルになるのは、あの子…………そう……雫ちゃん……


 先生と会長は年上ってハンデが大きい、麻紗美ちゃんはお母さんみたいなイメージ、セシリーは妹って感じじゃない、美智瑠ちゃんは妹っぽいけど美智瑠ちゃんなら勝てそう、でも


 雫ちゃん……幼稚園の時は双子? って言われるくらい似ていた、今でも髪型を同じにしたら似ているかも……そうなって来ると大問題がある…………


「ううううううううううううう」

 私は泣きたくなる、こればっかりは私の力ではどうにも出来ない、お兄ちゃんの好みだったら性格だって体型だって変える自身がある、ポッチャリが好きなら何キロだって太ってあげる、スレンダー良いって言えばガリガリに痩せてあげる、おとなしい子が好きなら一生喋らない、しゃべる子が好きならずっと寝ないで喋り続けてあげる、お兄ちゃんがやれって言ったら大抵何だって出来る!


 でも、でもおおおおおおお……


「おっぱいだけ大きくは……自分では……出来ない…………」


 そりゃ頼めば出来るよ、お兄ちゃんがそれを望めば私はやるよ! でもお兄ちゃんがそんな事を望む分けがない……寧ろそんな事を勝手にやったら嫌われちゃう……


「でも、でもお兄ちゃん……絶対におっぱい大きい方が好きだよね……」


 だっていつも麻紗美ちゃんの……、見てるよね、石垣の時だってガン見してたよね……お兄ちゃんの例の本もおっぱい大きい女の子の所のページが特に読み跡が残ってたよね……


 私の巨乳互換が雫ちゃん……まずい……ピンチだ!!


 ああ、あの都市伝説が本当なら、お兄ちゃんに大きくして貰えるかも……

「もし雫ちゃんに負けたらお兄ちゃんに大きくして貰おうかな?」


まあ負けた時の事は後で考えるとして、容姿では勝てない可能性が……となると、もう後は性格、キャラでお兄ちゃんの妹心をゲットしないと……

 

 「お兄ちゃんの好きな妹、お兄ちゃん好みの妹」

 私はそれを考える、深く深く考える、お兄ちゃん好みの妹に……どうやったらお兄ちゃんの理想の妹になれるんだろうか?


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