46-5 葵の行く末


「と、ところで英語を誰が話すんだ? 美月話せる?」


「うーーん、話せるとは思うけど、話したこと無いから分かんない」


「分かんないって……」


「だって美月の知ってる事ってほとんど本からなんだもん、発音記号だけじゃ限界があるよ」


「そ、そうか……、て言うか発音記号だけで話せるとは思う、なんだ……、本当凄いな美月は……えっとじゃあ先生は?」


「私は国語の教師です!」


「そんな自信満々に……えっと栞は?」


「え? 話せる……といいね?」


「いいねって、マジかチート二人でダメなら……えっと主席の」


「僕に聞くなよ、英語は苦手科目だ」


「あー私もぉ」

 なんだ? これだけ凄い人間が揃ってて何故英会話が出来ない? 


「葵は、当然無理だよな……」


「にいに、眠い……」


「ああ、ピザ食って、そんなに時間が経ってないのにカレー食って、お腹一杯になったら眠くなるって、本当に子供だな……、えっと……どうしようか」


「私がぁ付き添う?」


「えっと、葵、あのお姉ちゃんと一緒に寝れるか?」


「にいには?」


「俺はもうすぐお客さんが来るからここに居ないと行けないんだ」


「じゃあ寝ない…………」

 目をこすりながらもウトウトとしている会長……ううう、可愛い……でも見た目は金髪美女なんだよ、金髪幼女ではないのでギャップが……、血でも吸ったら小さくなるかな?


「言ってる側からウトウトしてるじゃん、後で行くから、ね?」


「うん……」

 俺が常に側に居るから少し安心したのか、会長は少し離れた位では泣き叫ばなくなってきた。


「じゃあぁ行こう……ね、会長さ……葵ちゃん……うーーん、なんかぁ変な感じぃ」


「まあ、しゃーないよな、俺もいまだに慣れない、じゃあ、よろしく麻紗美」


「はーーい、じゃぁ行こうねぇ」


「うん、にいに早く来てねえ」


 麻紗美に手を引かれ、俺に手を振りつつ、二人は客間に行った。



「それで美月、どうする?」


「うーーん、いきなり葵ちゃんのにいにの件とか話したら警戒されるかも……でも美月は友達少ないから、こういうの得意じゃないから」


 美智瑠と麻紗美が友達になったからか、ちょっとだけ学校に行った時に作ったのか分からないが、美月が友達居ないから少ないに変わったのに少しホッとする。


「そうか……、俺も苦手だからな~~、それより会話がスムーズに行かないと難しいよな、うーーん」


「あ! お兄ちゃんそう言えば、さっきのライン普通に日本語で返信してきてたよ」


「え? そうなの?」


「うん、文章短いから何とも言えないけど、漢字も間違ってなかったし、普通に会話出来るかもね」


「おおお、そうしたら栞にまず打ち解けて貰って、それから協力して貰えば」


「うーーん、外国人の友達ってあまり居ないから出来るかな?」


「とりあえずいつも通りにやってくれれば良いから」

 ついでに栞がどうやって友達になるか見て勉強してやる。


 そんな会話をしていると、インターフォンからチャイムが


「早い! もう来た」

 俺は窓から外を見る、黒塗りの高級車……さすが大使の娘……あ、ボディーガードとか居たりするのかな?


「どうぞ、305号室です」

 一切英語を使わずに先生が自動扉を開ける……なんか大丈夫そうだな……


「じゃあ、私と美月ちゃんで迎えに行くからお兄ちゃん達は待ってって」


「え、俺は行かなくていい?」


「いきなり男の人が居たら警戒しちゃうでしょ、お兄ちゃんはここに居て」


「へーーーーい」

 そう言って妹と美月は玄関に行った。


「だ、大丈夫かな? 外国人なんて僕……緊張する」

 見た目外国人の美智瑠が言うとなんかちょっと面白い


「俺はこれで協力が得られなかったらって考える方が緊張するよ」


「そうだな……うん、ゆう、君は常に自分じゃなくて、相手の事を考える、凄いな」


「またそう言う風に俺を美化する、俺はこのままだと会長を一生面倒見なくちゃならなくなるだろ、だから結局は自分の為だよ」


「ううん、裕君は葵さんをそこまで見る義理なんてないのに、私が言ったからって、ここまで付き合う必要なんてないのに……凄いのね裕君って」

 美智瑠と先生が俺を褒める、っていうかこれで知らないとか出来るわけないだろ? どうして皆で俺を美化するんだよ。


 そう言おうとした時にリビングの扉が開く……栞がセシリーちゃんと手を繋ぎながら入ってきた……えええええ! もうそんなに仲良しに?


「セシリー紹介するね、そこにいるのが私のお兄ちゃん、あと私の学校の担任の白井先生と友達の美智瑠ちゃん」


「はろう、えっとえっと」

 美智瑠が英語であたふたしている、その容姿でされると笑ってしまう。


「ゆう、笑うな! 僕は日本人なんだ!」


「いや、それ以前に、栞日本語で紹介してるだろ?」


「へ?」


「いや、どうもおおきに、セシリーいいます、どうかお見知りおきを~~」

 

「大阪弁!!」


 髪はダークブラウンのセミロング、綺麗なブルーの瞳、鼻はやはり日本人より高く、口もやや大きい、にも関わらず顔全体が小さい、なんかアニメのキャラみたいな顔立ち、背はあまり高くなく、スタイルはスレンダー、足はやたら長い……でも妹と見比べてもそんなに変わらない、妹も日本人離れした体型って言うのが分かる。

 そしてその見た目から放たれる大阪弁……ギャップにも程がある


「あんれなんか、わだすの言葉やっぱりおかしいですよね、さーせん」


「えええええ、今度は東北なまり? とギャル男?」


「色んな人から日本語おせーてもろたんで、いっつも笑われるんどすえ」

 いやいやいやいや、それにしても酷い……英語なまりじゃなくって、そのまんまなまってる。


「えっと……、大使館に居るんだから通訳出来る人居ないのか?」


「ああ、わだす最近こっちにきたはんで、それに家では英語で話してるデース」


「アニメでも覚えてるのね……しかもよりによってあいつか……」


「えっと、とりあえず会話が出来るって事で良かったわ、えっとお腹空いてる? カレー食べる?」

 先生が立ち上がり、セシリーに問いかける、カレーってイギリスで食べるのかな? そう言えばイギリス料理って聞いたことないな、フィッシュアンドチップスくらい?


「おーー、カレー大好きだぜ、イギリスではカレーは国民食デース」


「そうなの?」


「うん、カレー粉ってイギリスで出来たから」

 いつもの様に美月が解説、本当に何でも知ってるな~


「インドじゃないんだ?」


「うん、インドからスパイスを持ち帰ってそれを開発商品化したのがイギリス」


「へーーーー」


「おう、この可愛いガキは物知りですね」


「いや、セシリー、ガキはダメだよ」


「ああ、ごめん、ごめん、えっとお子様でよろしいか?」


「いや、まあガキよりは……」


「えっと……じゃあカレーよそってくるわね」

 先生がキッチンに向かおうとした時にセシリーが言った。


「おう、テレポーテーション使わないデースか?」


「使えません!」

 やはりそっちも詳しいのか……



 なんか凄いキャラが来たな……これからどうしようか……まあ協力はして貰えそうな雰囲気だけど……


 俺は一抹の不安を抱えつつ、セシリーを見つめていた……て言うか、それより、いつまで妹と手を繋いでいる気だよ!


 あ、べ、別に妬いてなんていないんだからね!


 


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