31-3 秘密の旅行


 俺達は貸し切り露天風呂に来ていた、いわゆる家族風呂ってやつだ。


「えっと、とりあえず、約束したから一緒に入るけど、バスタオルはしっかり巻いてくれよ、この間みたいに落ちないようにして……」


「うん!、大きい洗濯ばさみを、おばさまに貰って来たから大丈夫だよ、ほら」


 蟹の爪みたいな洗濯ばさみを俺に見せる、何に使うと思ったんだろうな~~、まさかこんな事に使うとは……


「……えっと、なんか一緒にお風呂に入るより、一緒に脱衣場で脱ぐ方が照れるというか、なんと言うか……」


「あ~うん、言われて見れば……下着脱ぐ所を見られるのは、私もちょっと恥ずかしい……かも……」



「そ、そうだよな、えっと、……じゃあ、……背中合わせで……」


「うん……」

 妹と背中合わせで服を脱いで行く、衣擦れの音がもの凄く気になる、……ああ、いまファスナーの下がる音が…………


 とりあえず、さっさと脱ぎ、タオルを腰に巻き妹を見ないように風呂場に行く


「あ、じゃあ俺、先に入ってるから」


「え!、あ、うん……」

 妹の声が少し高かったのは、恐らく下着を脱ごうとしてた所だったのかも……


 そんな想像をしながら浴室の扉を開けると、手前に洗い場があり、その先に檜木で出来た風呂桶、そして窓はなく外が見える。


 半露天っぽい作り、全体的に狭い印象だが、このホテルは大浴場が人気なので広い風呂に入りたかったら大浴場に行けという事なのかも。


 とりあえず、かけ湯をしておこうと頭からお湯を被る、すると扉が開く音が……妹が入って来た……


「えへへへへへ、お兄ちゃん、あらたまってだと、少し照れるね」

 バスタオルを纏う妹が俺を見て微笑む、あのタオルの下は…………やばい、軽く異世界に落ちてた。


「あ、じゃあ約束だからな、髪を洗おうか」


 そう言って立ち上がり妹を座らせる。


「じゃ、じゃあ……お兄ちゃん宜しくお願いしまひゅ」


「噛んでる噛んでる、はい目瞑って」

 笑いながらシャワーでお湯をかける、妹の髪が濡れ黒い髪の毛がお湯によって輝きを増す。

 キラキラ光る妹の髪に、思わずみとれてしまう。


 いやいや、じっくり見てないで洗わなければと、シャンプーを頭に付け後ろから洗い始める、肩口にペタりと着く髪をかきわける様に洗う、妹の肌に触れる度に心臓の鼓動が跳ね上がる、髪を持ち上げる度に見える、妹の濡れたうなじを見る度に気が遠くなりそうになる。


「痒い所は無いですか~~」


「胸!」


「はいはい」

 お約束の美容師ギャグで何とか誤魔化し、妹の髪を洗う、美月とそっくりな髪質は、やはりいとこ同士だけあるな~と


 美月よりも念入りに、頭皮をマッサージするかの如く洗っていると、鏡に映っている妹が気持ち良さそうに目を細めるのが見える。


「流すぞ~~」


 シャワーを頭からかけシャンプー流すと更にバスタオルが濡れていき、妹の肌にペタりと貼り付く。


 妹の美しいスタイルがタオル越しでもはっきりと見て取れる、ああ、本当にヤバい……


「じゃ、じゃあ次はリンスな~~」


 手にリンスを付け軽く馴染ませ妹の髪にリンスを付ける。


 本当に絹のような、サラサラした感触、リンスなんか要らないんじゃないかと思わされる。


 うう、ダメだ、何か喋らないと、本当にこのまま後ろから抱きしめたくなってしまう。


「えっと、栞は帰ったら友達遊んだりしないのか?」


「えーー?、うんとねーー、お兄ちゃん一緒に居たいから、断ってるよ~~、あ、そうだ、何か麻紗美ちゃんが花火に行かないかってメールが来てたよ」


「え!俺には来てないぞ……麻紗美……」


「お兄ちゃん、スマホの電源切ったままでしょう」



「あ、忘れてた……」

 会長のライン怖くて切ったままだった……


「もう、何かあったときに連絡取れなくなるでしょ~」

 そう言って俺をふくれ面で見る、膨らんだほっぺでも可愛いなー、思わず人差し指で突っつく


「もう~~お兄ちゃん~~」


 はいはい、可愛い、可愛いぞ!、そろそろリンスも馴染んだ頃かな


「んじゃ流すなー」


 シャワーでリンスを流す、やっと終わった、耐えた、俺頑張った……


「ほい、終わったぞー、美月の時よりちょっとだけ丁寧にしたからな、これで満足か~~?」


「うん!、お兄ちゃんありがとう、じゃ次は体洗って~~」


 妹が万歳をするって美月と一緒の行動をするんじゃない。


「それは自分でやりなさい」


 俺はそう言って浴槽に入る、当然貸し切りとはいえ、この後誰か入るのでタオルは外して入る、妹をちらりと見ると、腕を洗い始めていた。


 当然この後バスタオルを外して体を洗うんだろうからと、俺は妹を見ないように外を見た。


 ホテル以外の電気は見えない、真っ暗闇に近いが、ホテルの明るさでうっすらホテルまで登ってきた道が見える。


「ん、今何か居たような、しかも結構な数……」


 なんだろうと目を凝らすもよく見えない、でも何か動物の様な、牛が柵から出たのかな?でもそんな大量に出ちゃったら大変だよなと思い、外をよ~~く眺めていると……



「どうしたの?お兄ちゃん、何か居た?」

 洗い終わったのか、妹が俺の首に抱きつく様にして俺の肩口から顔を出す………………


 えっと……、今居る場所は浴槽の中、ちょっと外を覗きこんでいたので俺の上半身はお湯の中から出ていたが、あくまで浴槽の中だ。


 当然妹もここは公共に場所ってのは知ってる。

 頭も良いし、常識も持ち合わせている自慢の妹だ!


 つまり、当然ここにタオルを持ち込んで入るはずは無い……つまり俺の首に抱きついている妹は……全裸…………


「ちょっと、栞さん、あの……背中に、なにか……あたっているんですが……」


「え?、あーー、うん、えい!」

 妹は後ろから抱きつく力を強め背中にあたっているものを押し付ける……や、や、やーーめーーてーーー


「栞、ご、ごめん、もうダメ、俺、もう、限界だから、離して…………」


 その俺の言葉を聞いた妹はこう言った。


「……お兄ちゃんなら…………、いいよ……」




「し、栞!!」




 俺は振り返るなり栞を抱き締めた!!!






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