30 月の裏側
月には裏と表がある。
地球から見える方が表そして反対側裏となる。
よく勘違いするのが月は自転してないから表側を向いていると思う人がいるがそれは間違っている。
月は自転している、そして月の自転は月が地球の周りを回る公転と同一の約27日
地球を1周すると、自転が1回転する。
要するに月自身が地球に対して常に表を見せ続けていることになる。
月の表側にはウサギやカニと思わせる有名な海と呼ばれる平原が存在するが、裏には大きな海と呼ばれる平原はほとんど存在しない
月の裏には、でこぼこの細かいクレーターだけが存在する。
地球から見える美しい月、その裏側は表と全く異なる表情を見せ、そして地球からはその姿は絶対に見えない……美しい月が決して自分の裏側を見せたくないという意思を持っているかの様に……
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「お兄ちゃま~~~」
今、美月の部屋で二人っきりの時間を過ごしている、結局勝負は引き分けとした、一応アマチュアで採用している27点法だと美月の勝ちだったので、妹は「帰る準備をするから二人で1日出掛けておいで」と言ったが、美月が頑なに「引き分けだから午前中だけでいい」と固辞、午後は3人で遊ぼうと言うことになった。
当然半日だと出かけるには時間が無い、美月に部屋で二人でお話しでもしようと言われたので、今ここにいる。
そして、いまの状況……
「お兄ちゃま~~~」
「あの美月さん、なぜ正面に座らずに、俺の膝の上に座るのかな?」
「えーー?座りたいから~~、あと賞品だから~~」
「なんか美月が賞品みたいになってるんだが……」
「えーー?そう?、じゃあ美月を賞品として貰ってね~~」
「いやいやいやいや」
「えーーー?要らないの~~?」
「小学生が賞品とかもう通報とか逮捕とか以前のもっとヤバイやつだから、貰わないから」
髪の長さといい、日本人形みたいで飾って置きたくなるけど。
「何処かに出かけなくてよかったのか?」
「うん、お兄ちゃまと二人っきりでゆっくりお話しがしたかった、だけだから」
「それだったら栞と勝負しなくても、そう言えばよかったのに、栞だってそれくらいは……」
「ううん、お兄ちゃまとは別に栞姉ちゃまとはちゃんと勝負したかったの、でもやっぱり凄かった栞姉ちゃまは……」
「小4が高1に頭のゲームの勝負を挑んで引き分けなんだから美月の方が凄いよ」
「ううん、美月の得意なゲームでも勝てなかった、他だったら完全に負けてる……」
「どうして、そこまで栞に負けたくないなんて思うんだ?」
「…………だって栞姉ちゃまは、美月の目標でライバルで尊敬に値する人だから……」
「うーーん、まあ確かに栞は凄いけど、負けたくないからって今からそこまで肩肘張らないでもいいと思うけどなー?、この凄い量の本を毎日読んでるんだろう?、ちょっと頑張りすぎじゃないか? 美月はもう少し遊んだ方がいいと思うぞ、そういえば俺達とずっと一緒だけど、友達とかは大丈夫なのか?」
前にも言ったが美月の部屋は本で溢れかえっている。
「…………」
「ん?どうした?」
「お兄ちゃま…………友達って……必要?」
「え?」
「前に本で読んだの、学校の友達と将来を通して友達で居続ける確率っていうのを……」
「社会人になって、家族が出来て、それでも学校の友達と交遊している人数って何人だと思う?、わずか数人いるかいないか、0って人も一杯いる……そんな希薄な人間関係を無理して今する必要ってあると思う?」
「えっと、いや、まあ……でもほら、友達と遊ぶと楽しいし……」
俺が言っても全く説得力が無いな……しかし小4のセリフとは思えない、何か達観してると言うか、諦めてると言うか……
「全然、ちょっとした事で、すぐにわかんないとか、出来ないとか言うし、美月がやって見せると、美月は天才だから出来るとか言うし、……何よ天才だからって、美月だって努力してるんだから、本当の天才なんて知らない癖に!!」
「本当の天才?、美月は知ってるのか?」
「……栞姉ちゃまと弥生さん」
「ああ……」
確かにあの二人は天才かも知れない、でも俺から見たら美月だって凄い才能の持ち主だと思うけど。
「美月はあの二人が目標なの、まずは栞姉ちゃまを目標にしてるの、栞姉ちゃまに追い付きたい、栞姉ちゃまに勝ちたい」
「そうか……それは大変な目標だな」
「うん、だから友達と遊ぶ暇なんてないんだ」
「じゃあ俺なんかと一緒にいないで、栞と一緒にいないと」
そう言うと膝の上の美月は俺を見上げ微笑む。
「ううん、だってお兄ちゃまは一番の天才だもん、少しでも一緒にいて吸収しないとね~~」
「は?俺が天才?」
何を言ってるんだこの小学生は、平凡過ぎる俺が天才?
「うん、栞姉ちゃまも、弥生さんも、美月の目標なの、でもお兄ちゃまはね、目標じゃないの、一生敵わないくらいの天才……」
「栞も美月も俺を買い被り過ぎてるよ、俺は天才なんかじゃないし魅力もない、普通なんだよ、むしろ元祖天才の方がしっくりくるな」
本当に美月も妹も勘弁してくれ、俺には才能も魅力も無いんだから、自分が一番わかってる……
「ふーーーん、栞姉ちゃまには魅力的って言われたんだ」
「え?、あ、いや」
「そうか、お兄ちゃまの魅力か、栞姉ちゃまって、そういう感じなんだ」
「は?、え?」
本当に何を言ってるんだ、この小4は?
「えへへへ、そうか~栞姉ちゃまはそうなんだ~」
「何を言ってるんだ?」
「さてなんでしょうね~~、美月わかんな~~い」
「さっきすぐにわかんないとか言うって友達バカにしてた癖に……」
しかし友達少ない、少ない俺でも、大事だから2回言ったが、友達要らないとか、意味ないなんて考えはちょっと心配する、特にこういう田舎だと尚更だ、多分頭が良すぎるんだろう、特に田舎だとライバルも居ないだろうし……同世代が物凄く子供に見えてしまうって事か……、天才が故の苦悩って奴だな……
「でもさ、俺達は明日帰っちゃうだろ、友達居ないと寂しくないのか?」
そう言うと美月は膝の上でくるりと回り、向い合わせの状態で俺に抱きつき顔を胸に埋める。
「え?ちょっと、美月!」
「………………寂しいよ……寂しいもん……、友達なんて居なくてもいい、でも……お兄ちゃまが居ないと、栞姉ちゃまが居なくなるのは寂しいよ、……行かないでよ、…………帰らないでよ、…………うう、……うえええええええええええん」
「美月……」
俺は美月の長く綺麗な髪を撫でた。
「うう……、去年は我慢した……、お兄ちゃまと栞姉ちゃまが受験だから邪魔しちゃ駄目と思って……でも寂しかった、……会いたかった、もう終わりなの?、もっと居て、美月の側に居て、行かないでえええ……」
美月の腕に力が入る、俺を離さないかの如く必死にしがみついている。
「美月……、また来るから、正月また来るよ、弥生さんから今度はお年玉貰いに来ないといけないしな」
俺は美月の頭をそっと抱きしめる。
美月の髪から甘い香りがする……いや俺はロリじゃない、ロリじゃない……
「うん……」
「あ!、そうだよ、美月が今度はうちに来ればいいんだよ、もう、そろそろ一人で新幹線とか乗れるだろ?」
「え?、行っても……いいの?お兄ちゃま……」
美月が顔を上げ俺を見つめる、やべえマジ可愛い……俺ってちょっとロリ?、いやいやいやいや
「当たり前だろ、母さんも会いたがってたよ、寂しくなったらいつでもおいで」
「うん!!!!お兄ちゃま大好きいいいいいい!!!」
「うわあああああああああああ」
美月が俺のほっぺにキスをしてきた事は、まじでここだけの事にしてください、特に、どうか妹にはご内密に……
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