29-2 二人のタイトルマッチ
翌朝4人で松本に出かける、電車の中で妹は詰め将棋の本を、美月は最新定跡と書いてる本を読んでいる……いつ買ったんだ妹よ…………
「二人はどうしたんだい?将棋の本なんて読んで」
それを横目に弥生さんが俺に問いかける。
「さあ?」
明日の俺の権利を争ってますとは言えないので、とりあえず誤魔化してみた。
「旦那が好きだったからね~血筋かね~?」
そう言ってケラケラ笑う、あれってじいちゃんの形見か……
どうでもいいけど弥生さんの格好が……、白いワイシャツにデニムのジーンズはシンプルで良いんだけど、おそらくヴィンテージジーンズを履いている、そしてシャツは胸が大胆に開いており、見せブラらしき物がチラチラ……、グッ○のサングラスに、本物?あの文字が曲がっている高級時計、フラン○ミューラーをしている。
50代とは思えない、どう見ても30代前半下手すると20代……スタイルも滅茶苦茶いい……肌も綺麗……そりゃナンパされるよ……
ちなみに美月はゴスロリ、暑くないのか?、妹は白のオフショルダーワンピースにリボンの付いたストローハット、今日も可愛い
松本駅で降り、とりあえず松本城に行きたいと言うと、弥生さんは、「じゃあ喫茶店にいるからいっといで」と……弥生さんを置いて3人で城見物に行ってみる。
「美月は行った事ないんだ?、学校とかでも行かないの?」
「え?、あ、うん」と、なんだか曖昧な返事
そういえば美月って学校の話しとかしないよなー、夏休みなのに俺達にべったりだし、友達と遊ばないのかな?、まあ、おれ自身が友達と遊ばないしなー……いやいるし、少しはいるし……
お堀をいくつかの橋で渡ると全体が見えてくる
国宝松本城
戦国時代末期に徳川家康の監視を目的に建造されたという強固な城らしい
そして、城の中に入れるので入ってたみたが……
「急!階段急!!なにこれ階段ってより梯子じゃん」
「お兄ちゃんうしろにいて!、パンツ見えちゃう」
「て言うか、それじゃ俺が見える」
「お兄ちゃんは見ていいから後ろの人に見えない様にしてえ!」
「いや、俺も見ないし、てか怖い、上見ないで上がるの怖い」
「狭い、お兄ちゃま、ここ狭い、服が引っかかる~~」
「そんなごてごてしたものを着てくるからだよ~~」
城ってこんなに階段急なんだと、あと、どこも低い狭い、昔の人って小さかったんだと……、そりゃ弥生さん来ないはずだ……
3人は、城は外から眺めるに限るという結論に至った。
その後駅近くのデパートで買い物、弥生さんに俺は財布、妹はバック、共にそこそこのブランド品を買って貰う、「ありがとう婆ちゃん」と言ったら蹴られたけどね……
そして、それぞれちょっと買い物をして、弥生さん行きつけのフランス料理店で食事、「とりあえず肉と魚あとは適当によろ~」、なんて頼み方をしている、ワインなんかも適当に持ってこさせていた、本当に色々格好いいな、うちの婆ちゃんはと再認識する。
さて、ざっくり話しているのは何故かと言うと、美月と妹が心ここに非ずの状態で、話しがあまり弾まない
弥生さんもやはり締め切りが気になっているのか、そわそわしているし、まあ必然的に昼を食べたら帰ろうとなった。
######
「じゃあ、お兄ちゃま振り駒を」
帰るなり二人はすぐに着替え客間に入り、将棋盤の前で正座
どうでもいいけど扇子まであるのね……妹はさっきのデパートで買ったのか?
実力者が上座なんだけどよくわからんので、とりあえず妹が年上なので上座という事にしたらしい。
振り駒って歩を4枚取って投げるんだっけ?
うろ覚えの知識で駒を振り投げる。
「と金3枚なので美月が先手で」
俺が振り駒の結果を言うと二人は
「お願いします」と頭を下げてチェスクロックを押す。
美月は一旦目を閉じ精神を集中させ、まずは角道を開ける。
妹も間髪を入れずに角道を開ける。
美月は飛車先を突くと妹は角道を止める
「矢倉?」
美月はそう言うと銀を上げる
妹も同様に銀を上げる
「松本城ね」
ニヤリと笑い5六の歩を突く
いやいやいやいや、だからこれラブコメだから、りゅうおう○おしごと、とかじゃないから、9歳ロリとか被りまくりだから、どうでもいいけどアニメだと、あいと天衣って同じ発音だけど、どうするんだろう……アニメ化全く考えないで本書いてたんだろうな……
その後は駒組が始まり、両者矢倉に入城したところで夕食休憩に……
「お通夜かよ……」
夕食、二人はほとんど喋らずに、なにやらぶつぶつと棋譜を言っている、ってどんだけ真剣なの……あと脳内将棋まで出来るのね……なんなのこの天才二人は……
そして対局再開、持ち時間が共に1時間を切った所でついに駒がぶつかる。
「2五桂!!」
妹の3三の銀を狙いに行く美月
銀を上げる妹、すかさず端歩を取る!
「歩と桂馬の交換?」
全く予想してない手に妹は考える……
「取る以外にないよね」
そう言って桂馬を銀で取る。
美月は飛車先を突くと妹は4六の角を狙いに行く
角を引き8四の歩を突くと
「1四歩!」
先程桂馬を取った銀を狙いに行く美月
同銀同香同香で8三銀!!!
「飛車攻め!」
「違うよ、狙いはこっちよ栞姉ちゃま」
美月がそう言うと先程逃がした角を成込む
「あ!」
「ふふふ」
そう笑い美月の馬と成銀が妹の王の反対側を侵食していく
「くっ!」
妹の顔が苦悶の表情に……
しかし負けじと妹も美月の右辺を香車と歩で侵食する
「そんなの間に合わないよ栞姉ちゃま!!」
美月は金で飛車と角の両取りをかける
奇しくもチェスと同じような展開に……
「両取逃げるべからず」
そう言うと妹は王を逃がす。
「玉の早逃げ八手の得ね、でも逃げ切れるかしら?」
そう言って美月は飛車を取る。
同金に先程取った飛車を7一に打つ
「チェスと違って取った駒は使えるのよ栞姉ちゃま」
「そんなの知ってるよ!!」
3級の俺から見ても明らかに美月が有利な展開……しかし妹は諦めない、王を相手自陣に近付ける。
美月は香車に続き桂馬と妹の駒を取っていくが、妹はそれを気にせずに王を相手自陣に
「入玉戦法!!」
美月が言うと、妹はニヤリと笑う
「負けない絶対に!」
そう言うと美月が扇子を広げる
『百折不撓』
なんか小学生が渋い事書いてる……美月、まだ百回も折れてないでしょ……
「私だって絶対に負けない」
妹も扇子を広げ顔を扇ぐ
『お兄ちゃん命!!』
……いつ書いたんですか?
歩成香成で道を作り王を入玉させるべく相手陣地に攻めこむ、美月は入玉将棋になれてないのかミスを連発、自らも相手陣地に逃げ込む
既に両者時間を使いきり1分将棋になっていた。
先に入玉したのは美月だったが味方を残しての逃亡、妹の成金がそれを取って行く
両者入玉し、お互い駒を打っては成りを繰り返していく
もう勝負は着かない、しかし両者共に止めない
俺は入玉将棋のルールをスマホで見た。
24点に満たない方が負け、大駒が5点、小駒が1点
妹は飛車を取られていたが、その後軒並み駒を取っている。
俺は数を数えた、両者24点以上あった。
そしてそれは二人ともわかっている、しかし止めない、止めようとしない
どちらかが宣言すれば引き分け、又はアマチュアルールの27点法を適用するか
どちらにせよ宣言しなければ終わらない
二人は必死の形相で駒を動かしチェスクロックを押す
そしてトイレを我慢しているのか少し震えている
もう夕食から4時間以上経過している……そろそろ限界だろうが、しかし止めない……
「負けない……負けたくない……」
美月がそう呟く
「お兄ちゃんは渡さない、絶対に……」
妹もぶつぶつとそう言っている……
…………俺は二人の頭を両方共に抱き締めた!
「え!」
「あ!」
1分間の静けさ、3人の沈黙、その後にチェスクロックの終了の音が鳴る
「もう止めろ!、止めてくれ……」
俺はそう言って二人を止めた、俺の目から涙が溢れる
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃま!」
「もう止めよう、な?、明日は美月との時間も栞との時間も作るから、そして最後は3人で過ごそうな」
「お兄ちゃん……」
「お兄ちゃま……」
二人は俺に抱き付く、それを俺も抱き止める。
最後は3人でわんわん泣き始めた。
本当になんなんだ、これは~~~~~
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