26-7 最強の敵参戦!!


 『…………凄くいい匂いがする…………、そして何か……硬い物と、とてつもなく柔らかい物のコラボレーション……、真夏にはちょっと暑いけど凄くフィットする、えっと、俺いつ買ったっけ抱き枕なんて…………』



「お兄ちゃまーー、栞お姉ちゃまーーあさ…………ってなにしてるのおおおおおお!!」


『あれ?なんで子供の声がするんだ?あれ、あ、そうか俺今家じゃなくって……』


「ぐえええええ」

「きゃああああ」


 俺の上に美月が飛び乗ってきたって、なんで妹の声も……


「…………うああああああああああ」

 妹が俺の布団の中に入り込み、さらにコアラの様に抱きついている。

 そして俺は抱き枕と勘違いして抱き返していた……



「栞姉ちゃま!!ずるいいいい!!離れてえええええ!!」


「えへへへへへへへへへ」


「お、おい!、栞、いつの間に」


「離れてええええええ」


「いや、美月も俺の布団に入るなあああ」


「やだーー離れないい、お兄ちゃーーーーん」


「ダメえずるいいいい、じゃあ美月もーーーお兄ちゃまああああ」


「ちょっと、離れて、ヤバいって、朝はやばい、まじでヤバいいいいい」



 ####




「つ、疲れた……」


 朝から二人の攻撃に会い、心身共に疲れた状態で電車に乗っている。


「それで急いで駅まで来たから突っ込まなかったけど、美月、その格好は何?」

 あの後飛び起き、ゆっくり朝ごはんを食べ、その後叔母さんに車で駅まで送ってもらった。


「えーー、ゴスロリ風?」

 超ロングの三つ編みツインテールに、赤いリボン、胸元にフリルが付いた黒のワンピース、スカート部分は短く裾は広がり、ギャザーがアクセントになっている。

 黒いニーソを履き絶対領域近くが編みタイツ状になっている。

 小4でこの格好ってヤバくない?


「ゴスロリってか、美月がもうすでにロリなんだけど」


「へっへー、どうお兄ちゃま、可愛い?」


「ハイハイ可愛い可愛い、……で栞の格好は何?」

 美月の反対に座る妹に聞く


「えーー白ゴス風?」

 妹はサイドテールでリボンの付いた小さな帽子を付け、やや胸が開いている白いワンピース、その胸の所に、これまたフリルが付きまくり、更にスカート部分にもフリルが、多分絵の担当が居たりするラノベとかだと、あまりのめんどくささで喧嘩になりかねない服装。いなくて良かった。

 白いニーソ、絶対領域に見えるガーターベルトにドキドキしてしまう。


「美月を見てから着替えに戻ったのはその為か……」


「えへへへ、可愛い」


「ハイハイ可愛い可愛い、よく持ってきてたな……」

 ちょっと大きめのキャリーバックだったけど、どんだけ家から持ってきたんだ?


「栞姉ちゃまの真似っこ」


「最初から持ってきてたから真似っこじゃないですうう」


「朝だってお兄ちゃまに抱きついて、ずっこいーー」


「お兄ちゃんに抱き止められて逃げられなかったんですうう」

 だって、抱き枕だと思ったんだもん、最高級妹抱き枕、10万位で販売しても余裕で売れそうな抱き心地……


「ずるいいいい、だったら美月も昨日の夜の添い寝のとき抱きついて離さなければ良かった!!」


「添い寝?、お兄ちゃん小学生と添い寝したの!!」


「いやいやいやいや」

 昼前で、そこまでではないが電車には結構人が乗っている、そして安曇野の田舎で白ゴスとゴスロリに近い姿の超美人JKとJSでかなりチラチラ見られている、中には「あれってたしか山野井さん家の美月ちゃんじゃない?」などと囁かれている。


 そこに美月の今の一言


「え?あれって誰?、美月ちゃんのお父さんじゃ若すぎですよね」

「そうよね、お兄ちゃんなんていたかしら……あとあの可愛い子が今抱きつかれたみたいな」

「とりあえず通報しとく?……」

 なにやらヒソヒソと俺らの周りで不審な声が……



「よし!、いとこの!美月、妹の!、栞、そろそろ降りるぞ!!」

 通報怖い、逮捕怖い、良かった近くて、これが松本までだったらやばすぎた、駅でそれなりの人が待っていて事情聴取とかされそう。


 駅からバスに乗りすぐに到着、大安曇野わさび農場、わさびは綺麗な水が大量に必要で、気温も高いとうまく育たないらしい


 農場といっても観光化されており、お土産、食事等がメインの様な感じがするが、その施設の真ん中に綺麗な清流が流れ、わさびが作られている。

 日光に弱いのか、黒いネットで覆われているので上からはあまりよく見えない

 下に降りる階段があり、降りると遊歩道の様になっておりわさびが作られている所を見学できる。


「うわーー、水が綺麗」

 妹がその水の綺麗さに感動の声をあげる。

 土ではなく砂利に植えられているようで、水が全く濁ってなく、緑のわさびが映える。

 水の流れがその砂利によってやや複雑に流れており、少し幾何学的な風景に見える。


 農場をぐるっと一周できそのまま見物しながら農場の端まで行く。


「こっちに水車があるよーー」

 美月は来たことがあるので、案内してくれる。

 階段を上がり、少し趣のある橋を渡り、農場から少し離れた所に水量の豊富な川が見えてくる。


「し、渋い、でもいいなー落ち着く」

 清流が流れ水草が映える、そこにガタガタと動く水車、水車には藻がびっしり付いて凄く良い雰囲気を醸し出している。


「わーーー、なんか素敵」

「何度見てもいいなーこの景色……」

 二人の言葉に何か凄く心がときめく、多分高校生には、子供にはつまらないという意見が多いだろう。

 あまり人混み、繁華街を好まない俺は、やはり周りから浮いている存在だと思う。


 石垣島でもそうだったが、その自分の価値観と同じ目線で、同じ風景に感動してくれる存在を物凄くいとおしく感じてしまう。


 二人が俺の腕に絡まって来る、そしてこの景色を一緒にボーーっと眺めている。


 妹、麻紗美、美智瑠、美月、自分が見た風景や景色を一緒に感動してくれる、そんな存在が身近に居てくれる幸せに感謝しつつ、しばらく三人でゆっくりその景色を眺めていた。












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