26-5 最強の敵参戦!!


 「栞姉ちゃま、ずるいったら、ずるいいいい」


「ずるくないですうう、作戦なんですうううう」


 まだやってる……


 コンタクト外していたので見えてない……事になってるけど、俺に見られた事なんぞ気にも止めないで、そのままお風呂に二人で入り、着替えて食卓の前に来てまだ言い争っている……仲がいいんだか、悪いんだか


「悪いよお兄ちゃん!」

「良いわけないよ、お兄ちゃま!」


 …………相変わらず鋭いっていうか、もうテレパスとかの能力あるんじゃね? この二人……



 食卓には、結構凄いご馳走が用意してあった、弥生さん、叔母さん、俺、妹、美月で歓迎会が始まる。


「学校はどうだい、二人は彼女と彼氏はいるのかい?」


「えーーっと、あはははは」


 弥生さんの突っ込みに笑ってごまかす、妹が元カノで今は兄妹として付き合うっていう微妙な関係です!なんて言えません……


「あ、弥生さん私、おにい……」


「栞、このイクラ美味しいぞー、長野でこんな美味しいイクラ食べられるとは、イクラ好きだろ、ほら」


「え、あ、うん」

 あっぶねえええ、なんか言おうとしたぞ、本当誰にでも言うな最近。


「ゆう兄ちゃま、明日はどこに行くの」


「え、ああ、どこか行こうと言ったけど、どこにしようか……」

 ここに来る前に何ヵ所か行く所は考えてたけど、うーーん


「そうだね、この辺だとわさび農場位だね~、後は松本まで行くかかね」

 弥生さんがナンパされたという、この辺りじゃあちょっとした買い物は松本まで行く、松本城とかちょっと見てみたい。


「松本は行こうと思ってたけど、わさび?」

 ワナビなら、ここに一杯いるけど、わさび?


「水車とかあって、水が綺麗だよ、あと、わさびソフトが美味しいわよ」

 叔母さんがそう言う


「わさびソフト!」

 あ、妹が食いついた……そう言えばだいぶ前の旅行の時、明太子ソフトが超美味しいとか言ってたなー


「うーーん、でも美月も一緒にだからわさびとか面白くないんじゃ」


「え、美月あそこ好きだよ、ね、弥生ちゃま」


「ああ、美月は普通にわさび丼とか食べてたね」


「わさび丼?なにそれ渋い」

 て言うか、美月ってゲームのチョイスとか、わさび丼とか、本当に小学生? 言動もそうだし……、ああ、そうか……ミニ栞ではなく、ミニ弥生さんなのか、妹は弥生さんと争ってるみたいなものか、そりゃ手強いよ……


「じゃあ、明日はそこに行こう」


「わさびソフト、水車、綺麗な小川にお兄ちゃんと、えへへへへへへ」


「お兄ちゃま、わさび丼、あーーん、辛いよ、えーーお兄ちゃまってお子さま、えへへへへへ」


「…………」

 妹が分裂してる……



 そして食事が終わると弥生さんは書斎に叔母さんは台所に、そそくさと行ってしまう、何故なら……


「今からお兄ちゃまは、私のお部屋で一緒に寝るんだから、姉ちゃまは客間で寝てちょうだい、ひ、と、り、で」


「やだもーーん、一緒に寝るもーーーーん」


「だめですううううう、布団は一つしかないんですううううう」


「お布団まだあるから大丈夫ですううう」


「私のお部屋にそんなの認めませーーーん」


「いやですううううう」

 また始まった……、もうお前ら二人で寝てくれ、俺は一人で寝たい……


「あーーじゃあ~~、栞姉ちゃまは、私のお部屋のお兄ちゃまのお布団で寝てちょうだい」


「へ?、いいの?」


「うん!いいよ~~、お兄ちゃまは、私のベットで一緒に寝ましょうね」


「いやいやいやいや」

 なにこの子、俺を消したいの? あの渋さといい、アサシンとかなんじゃないの?


「そうよ!お兄ちゃまはどっちと寝たいの!!」

「そうよ!お兄ちゃんはどっちがいいの!!」


 あ、標的がこっちに来た……


「いや、俺は一人で……」


「却下です」

「却下です」

 揃ってるなー、二人でシンクロとかやったら?


「じゃあ3人で……」

 もういいじゃない、3人客間で寝ようよー俺疲れたよー。


「私は、……別にそれでも……」

 妹がそう言うと


「やだあああ、美月が勝ったのにいいいい、栞姉ちゃまずるいいいいいいい」

 今度は美月が泣きそうになって抗議する。


 ああ、もうどうする、うーーーーーん


「わかった、わかった、じゃあ栞、客間で寝なさい」

 俺は妹に向かって、一人で寝ろと指示をする。


「……お、お兄ちゃん……」

 妹の顔が大きく歪み、涙が溢れそうになるって、そんな事で泣くなよ~~


「やっぱり、約束は約束だよ栞」


「やったーー!!、栞姉ちゃまの負け~~~私の勝ち~~」

 美月が諸手を挙げて大喜びをし始める。


「で、美月、約束は今日一緒にいるだよな」

 俺は美月に賭けの確認をする。


「うん!ずっとでもいいよ~~お兄ちゃま~~」


「そうしたら、12時になったら俺は客間で寝るからね」


「え?」

「え?」


 二人同時に声が出たけど、表情は入れ替わる。


「約束は確か今日だろ、だったら12時迄だよな」


「お兄ちゃん……」

 妹の顔がうっとりした表情に変わる。


「ううううう、そうだった……、じゃあ、明日は3人だから、美月も客間で寝るううううう」


「だーーめ」


「えーーーーー、なんでええええ、あ、明日は3人一緒だってええええ」

 今度は美月が泣きそうになる、ってだからこんな事で泣くなよおおお。


「美月お風呂の時に言っただろ、まだ子供って、子供は早く寝ないとな」


「う、うううううううううう」

 美月は何か言い返そうとしてるが、何も出てこない、そんな自分にもどかしくなっているようだ。


「ほら美月、歯を磨いて寝る準備しておいで、眠るまで一緒にいてあげるから」


「ぶううううう、…………わかった……」

 俺は美月の頭を撫でて、洗面所に行くことを促した。


「じゃあ、栞、後で行く…………」


「えへへへへへへへへへへ、やっぱりお兄ちゃん…………えへへへへへへへへ」

 妹がまた異世界にぶっ飛んで行ってしまわれている……


 はあ、まだ初日なんだよなー、本当に先が思いやられる。


 ゆっくり本が読める日は来るんだろうか……









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