20-3 夏休み、海、水着!!
石垣島行き当日、妹と一緒に家を出る。
「お兄ちゃんと、石垣島~~」
もう、一昨日からテンションが高く、俺は低く、高低差在りすぎて耳が……
そんなどこかのお笑いのギャグを言い切る気分もなく、駅に向かって歩いている。
本日の妹のコーディネートは、黒のノースリーブタンクトップTシャツの上からリネンの薄いピンクのシャツを重ね、裾を腰で縛り、ボトムは白のキュロットスカート、サンダルヒールに胸の所にサングラス、相変わらず、おしゃれで可愛い
俺? 本当に聞きたい? Tシャツにベージュのハーフパンツ……
駅に着くと既に麻紗美が待っていた。
胸元が少し開いた白を基調とした花柄のロングワンピース
麻紗美の私服はほとんど見たことないので新鮮だった
全国でもトップクラスに暑い県だけに、本日も茹だるようだ。
麻紗美も日陰にいたが、首筋には汗が滴り、豊かな胸の谷間に流れて行くのについつい目が奪われ……
「ぎゃあっ」
妹が足をおもいっきり踏んで俺の前を通っていく、だってしょうがないだろーそりゃ見ちゃうよ
「美智瑠ちゃーん、おはよー」
妹は、俺の足を踏んだ事を気にも止めずに美智瑠に挨拶する。
駅の中からガラガラとキャスターを引っ張りながら美智瑠がやってきた……
「美智瑠その格好……」
俺が若干引き気味に話しかける。
「え?似合わないか?」
「いや、まあ似合ってはいるけど……」
美智瑠は青と白のボーダーチューブトップ(へそだし)にホットパンツ姿、大きなサングラスをして現れた
「えっと、お店で石垣島に行くって言ったらこれを勧められて……おかしいか?」
銀髪美少女だからまあ似合うんだけど、派手というかなんというか……
とりあえず、胸は小学生の時に会った時とほぼ変わり無い……お帰り美智瑠……
「なんか、今、凄く失礼な事を想像された気がするんだけど」
そんな事を言う美智瑠を無視して
「さあ、みんな揃った、じゅあ石垣島に行こうか」
「おーーー」と声を掛け合い、全員で羽田空港に向かう。
1時間ちょっとかけて羽田空港に着く、時間があったので、お茶でも飲もうとなり、その前に先に搭乗手続きをして、荷物を預ける。
自動荷物預け機に苦戦しつつ、それでも余裕があったので、喫茶店でお茶をしながら今日の予定について麻紗美が話し始める。
「ホテルはぁ3時チェックインだからぁ、到着したらぁ入れるけどぉ、時間が時間だしぃ、先にちょっと観光してからぁ行ったほうがぁいいかもぉしれないけどぉ、時間あるかなぁ?」
「そうだねー行きたいね、どこかある?」
麻紗美が持ってきたガイドブックを見ながら、女子3人が、どこに行くか決めている
「明日からはぁホテルにぃビーチがあるからぁ、そこでぇ泳よぐのとぉ、あとはぁ八重島観光にぃ行くのとかはどうかなぁ」
「それは、今日の夜のホテルで決めようか、元々麻紗美の旅行なんだから麻紗美の行きたいところ優先でいいぞ」
やはり元々麻紗美の旅行で、俺達はそのおこぼれの参加だしね
「えー、いいよぉ、みんなのいきたいところでぇ」
「まあ、それも含めて飛行機の中で考えようー」
テンション高い妹がそう言ってその場を締めた。
そして搭乗時間が来る。
……いや、来てしまった。
夏休みとは言え平日出発だった為、飛行機は結構空いていた、それほど大きな機体ではなかったので、4人並んで座れない為に、座席は窓際2席を前後で取った。
俺と妹、麻紗美と美智瑠で座る。
「お兄ちゃん、飛行機乗るの久しぶりだねー」
昔家族旅行で一度だけ乗ったことがあるんだが……
「ん?お兄ちゃんどうしたの?」
俺は小声で妹に打ち明けた
「じ、実は飛行機苦手なんだよ」
「えーーそうなの!」
「しーーーっ」
前の二人が座席の隙間からこっちを見る、俺と妹は二人で手を振ってごまかした。
「えーー知らなかった、だからあんまり元気無かったんだー、なんで?」
「いや小学生のときに乗ったじゃない?、あの時、離陸の時の加速にビックリしてね、ただその時はそうでも無かったんだけど、そのあとに本で魔の11分て言うのを読んでさー」
「魔の11分?」
飛行機のエンジン音が響き始め、緊張が段々高まる。
「そ、そう、飛行機には魔の11分ってあってね、離陸と着陸の時の11分が危ないって言われてるんだけど、特に危ないのは離陸の時だって……」
「着陸じゃないの?」
「着陸も危ないんだけど、離陸の方が怖いって言うパイロットも多いらしくて、何でも離陸はエンジンを限界まであげるから、壊れる事があるらしいんだけど、壊れてもスピードが出てると途中で停まれないから、そのまま飛ぶんだけど、壊れてない方のエンジンだけだと出力が足らなくて落ちる事故があるらしいってのを読んだら怖くなってさー」
「へーーそうなんだ、……怖いねお兄ちゃん」
「栞は平気そうだな……」
「うん、今は全然平気」
「今は?」
「うん、だって落ちて死んじゃってもお兄ちゃんと一緒じゃない? お兄ちゃんだけとか、私だけだったら、そんな話し聞いたら怖くなっちゃうけどね」
そう言って妹は俺の手を握る
「前も言ったでしょ、たとえそこが地獄だってお兄ちゃんと一緒なら私は楽しいのー」
やがて飛行機が加速する、俺が妹の手を握りしめると、妹は握り返してくれた。
こんな情けない、取り柄も何もない兄の俺に、この完璧な妹は、どうしてそこまで俺の事を好きでいてくれるのか、俺はそれが何なのか何がきっかけなのか本当に知りたくなっていた。
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