20-2 夏休み、海、水着!!


 麻紗美達と別れ、自宅への帰り道、妹のテンションは最高潮に達していた。


「うわー、うわー、お兄ちゃん、石垣島だってー、沖縄飛ばして、石垣島だよ!!」


「その前に、母さん説得しないと」

一応親の許可を得てからちゃんと返事するとは言ってある。


「え?大丈夫だよ、女の子3人で行くって言ったら駄目って言うかも知れないけど、お兄ちゃんも一緒だから、お母さん、ああ見えてお兄ちゃん信用してるから」


「まあ、父さんも母さんも結構適当だからなー」

母は看護士なんだが、あんな適当で大丈夫かと心配になる。


「それは否定しない」

二人でゲラゲラ笑う、昔から適当で、俺達兄妹がしっかりしなきゃって自覚を持って生活している。


「あ、そうだ、旅行の準備しないといけないから、明日買い物付き合ってねー」


「買い物?、何買いに行くんだ?」


「えーーー決まってるじゃない、水着!!」


「俺も行くんですか……」



「いしがき~うみ~お兄ちゃんと~♪」

妹が鼻歌を歌いながら隣を歩く、鼻歌も上手いとか、この万能妹なんなんだろうな


「麻紗美も美智瑠もいるのに、ずいぶん機嫌がいいなー栞」

あのヤキモチ焼きを通り越して、ヤキモチヤンデレ、ヤキヤンの妹が、麻紗美と美智瑠と一緒に行くっていうのに、いくら石垣島とは言え、なんでこんなに機嫌がいいんだ? と疑問に感じる。


「えーーだって石垣だし、それにー、あ!お兄ちゃん気付いてないんだーー」


「え?なにが?」


「そうかー気付いてないんだー、麻紗美ちゃんの話しをしっかり聞いてたんならわかると思うよー」


「えーー?なんだ?わからん」


「えへへへへへー、多分ねー私も確実かどうかわからないけどー、じゃあ内緒ー、向こうに着いてからのお楽しみだねー、えへへへへ」


 えーなんだ? なんだ? あの麻紗美の話しをちゃんと聞くって、そりゃ妹は、学校の授業だけでトップの成績を取るという、とんでもない能力の持ち主だから、わかったのかも知れないけど、一般人は、麻紗美の話しを聞き取るだけでも大変なんだよー。


 ああ、只でさえ色々不安なのに、めちゃくちゃ気になる、なんだ?……


「えへへへへへ、うはは、石垣島~~お兄ちゃんと~」

妹と俺は対称的な精神状態で家に帰って行った。





######################




「ほらね?全然大丈夫だったでしょ」


結局母は、へーそれってあんたの友達?、栞の友達について行くんじゃない?

母ちゃん……土産はハブでいいかな……生きてる奴


「大丈夫だったけど、なんだろこの更に行きたくない感じは……」



俺と妹は出発前日、水着を買いにショッピングセンターの水着売り場に来ていた。

早く石垣へ行けって?色々調べることがあるんだよ、俺も作者も……



「さあ、お兄ちゃん、私の水着を選んでね、お兄ちゃんの好きな奴!」


「水着ねー……」


「お兄ちゃんの好きな水着ならなんでも着てあげるよ、セパレートでも、ビキニでも、タンキニでも」


「タンキニってなんですか?」



「紐でも、Tバックでも、Vフロントでも」


「Vフロントってなんですか?」



「スク水でも、旧スク水でも、旧旧スク水でも」


「旧旧ってなんですか?」




「え!ま、まさか、お兄ちゃん私にあれを着せようって……」

妹がプルプル震える手で、水着を指差していた。




「女児用水着……ってなんでだよ!!」


「え?だってお兄ちゃんの本棚の、本の後ろに隠しておいてあるマンガ雑誌にそういう……」



「なんでだあああ!、なんで場所がわかるんだー!!、変えたのに、色々考えて絶対にばれない置き場所に変えたのにー!!!」



「私は、お兄ちゃんの事はなんでもわかるんだよ」



「栞!、いつの間に俺の部屋に入ってるんだあああ!、もう鍵付けるぞ!、ていうか、俺にそんな趣味はない!それは、俺が読みたかった奴の後ろに描いてあっただけだ!」 



「じゃあ、どれがいいの?お兄ちゃん」


「もうどれでも、いいです、帰りたい……、次は何処に隠せばいい……」


「えっと、ビキニかワンピースかスク水かだよねー」


「なんで、スク水にこだわる……、あの栞さん、流石にそろそろ、ここにいるのは辛いんですが、下着売り場並みにじろじろ見られて……」


「えーーー、お兄ちゃんに選んで貰いたいのにー、あーでもそうか、向こうで見せる方が可愛く見えるかー」


「栞は何着ても似合うよ、俺本屋にいるから、ゆっくり選んでいいよ、スク水以外で……」


「じゃあ、ごめんねお兄ちゃん、なるべく早く行くから」


俺はごゆっくりーと言って本屋に向かった。





###





「げ!!」


「あら~偶然ね、げって何よ!」


「ボランティアの件以来でございますね、会長……」

本屋に入ると、そこには生徒会長がいた。


「そうね、ていうか、なんなのあんたの妹」


「ああ、なんなんでしょうねー」


「非常識にも程があるわ、それにあんた、いっつも妹と一緒にいるし」


「ああ、まあいますねー」

だって最近妹が俺から離れないんだもん、家でも学校でも


「ちょうどいいわ、ちょっと話しがあるんだけど、顔貸しなさい」


「あ、いや今も妹が」


「まったく……、じゃあ携帯出しなさい」


「え?それは……」


「い、い、か、ら、早く出せ!」

俺の襟首をつかみ、グイグイ締め付ける、おいっ苦しい、っていうか人目が……


俺の携帯を奪い取ると、ラインを立ち上げる


「ふん、誰も登録されてないじゃない」

いるもん、妹とか麻紗美とか、母さんとか……うう


「よけいなお世話だ!いいから返せ」


「ほら、登録しといたから、今度時間があったら呼び出すわよ、既読スルーしたらタダじゃおかないからね」

じゃあ未読スルーしよっと


「まったく、何の用だよ、そう言えば今日金髪ヅラじゃないんだな、格好も地味だし」

赤っぽい色の、学校の時の髪型で、服も普通にシャツとデニムだ、すげえスタイルは良いけど


「だからヅラって言うなし、金髪は多分、もうしないわ……」

一瞬もの凄く寂しい顔をした生徒会長に、なにかがあったのが感じられる。


「ふん、じゃあまた今度ね、未読スルーしたら、やるからね」

やるって字をまたもや変換しないで、彼女は立ち去って行った。



「やっぱり絡んできたか、俺の未読スルーを見破るとは流石だな……したことないけど……」



しかし、石垣島だけでも気が重いのに、さらに生徒会長って、もう何? この始まって早々、先の思いやられる夏休みって……




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