15-1 俺の嫁?


 中間テストはさらっと終り、試験休みが明け、妹のおかげで数学のテストは異常に高い点数で返ってくる。


 昼休み、いつも通り妹と弁当を食べ、妹は友達とのお喋りに参加し、俺は自分の席で本を読んでいると、教室にクラス担任見た目中学生、ツインテールの教師、白井里美通称ジャッジメントが来る。


「長谷川……裕くん、ちょっと来てもらっていいかしら」

 唐突に担任に呼び出しを食らう、俺なんかしたっけ?


「うーーーい」

 返事をして妹を見ると、こちらを見ているので、目でよくわからんが行ってくると言うと、妹は大好きと返して来る、まあ俺の想像だけど。

 などと下らない事を考えつつ、白井先生の後を付いていく。


 白井先生のピョコピョコ跳ねるツインテールを、ついつい弄りたくなる衝動を抑え後ろを歩く、前から見るとスーツなので先生なのかな?と思うが、後ろからだと生徒にしか見えない、しかも中学生……何この教師?、まあ、とあるアニメで小学生みたいな教師がいたが、あれよりはましか。


 しばらく歩き、会議室と書いてある部屋の前で止まる。


「入って長谷川くん」

 白井先生に促され、中に入ると、そこは長机が2つ平行に並び椅子が十脚程置いてある、それほど大きくない会議室だった。


 先生は机の前の椅子を二脚引き、斜めにして半分向かい合う形にセットし、俺に座るよう言ってきた。


 席に座り前を見ると、俺をじっと見つめる白井先生、俺は?な顔になり見つめ返す。

 暫くお互い見つめあっていたが、さすがになんだこいつ? と思ったので声をかける。


「あのー先生?」

 はっとした表情になった先生。


「あ、ごめんなさい、えっとねーどこから話そう、えっとえっとまずねこれ」

 慌て気味に見せられたのは、なにか難しそうな書類

 文科省だの、学校教育だの、奉仕活動だの、書いてある。


 え? 何? 俺に奉仕部とかに入れって事?、あのキャラとの相違点は妹だけだぞ? ちなみにうちの妹の方が可愛いぞ


「で、これが?」


「えっとね、まあざっと説明するとね、うちの高校でもボランティア活動をしなきゃいけないって事なんだけどね」


「ボランティア活動ですか」


「そうそう、それでね、何のボランティアをするか、どういう活動をしたか、まあそういった事を資料として残して、できれば今後継続的に行うとかって事をしなきゃみたいな話が会議で決まってね」


「はあ」

 正直ボランティアに興味があるって言った事は無い、そもそも興味ないし、なんでその話しを俺にしているのか理解できない。


「当然学校側が強制的にさせるってのはおかしいから、生徒会が中心となって、自主的にやりましょうって事になったわけね」

 先生は若干焦りながら話している、まあ多分まだ若い為に押し付けられた様な事なんだろう


「でね、先生、生徒会の顧問をやっていてね、この仕事をおしつ、いえ頼まれたのね」

 やっぱか


「ただ、今までやった事がなかった事なので、どこから手をつけていいか、どうやったらいいか手探りな状態なのよ」


 なにか、肝心な事をなかなか言わない、そんな歯に物が詰まったような感じがしたので直接的な事を聞いてみた。


「で、なんで俺が呼ばれたんですか?特にボランティアなんて、やった事ないんですが?」


「えーっと一緒に……、えーーっと頼めるのがあなたしかいないって言うか、そうそう、部活も委員会もやってないでしょ長谷川君」


「まあ帰宅部ですね」


 委員会はじゃんけんで勝って逃れた、妹がクラス委員になりそうになったが、困った顔をした瞬間、私が代わりにやりますとクラスの女子が次々に手を上げ免れていた。


「だからちょっとでいいから、手伝って貰えないかなー」

 お願いと手をあわせこっちを向く白井先生


「いや、すみません」


「ダメ?」


「はい」

 正直興味ないし、めんどくさい、今は妹の事で手が一杯という感じ、最近放課後の妹のひとときは俺の中で大切な時間になっている。


 しかし先生はめげずに何度も誘って来る。


「すみません、ちょっと遠慮したいんですが」


「どうしても?」


「はい」

 なぜここまでしつこく俺が誘われるのか分からない、妹ならまだしも、妹?




「ううう、ううう、うえええええええええええん」

 そう考えている瞬間、突然先生が泣き始める! はあ? なにこれ




「うう、長谷川君があああああ、ゆう君がああああああ」

 手を目の所にあてて、漫画の様にベタに泣いている。


 はあ? なになに? なにが起こってるの?

 俺は全く意味がわからない、ワケガワカラナイヨな状態




「私の事、お嫁さんにしてくれるって、言ってたのにいいいいいいいい」




「はあああああああああああああああ?」



 なにを言っているのか、さっぱり分からない、なんだこのシチュエーション? しかも嫁? 俺の?



「……あの先生?」


「うえええええええええん、あんな可愛かったのにーーひどいいいいい」

 見た目中学生なので、中学生を泣かしているようで、いたたまれなくなる。



「あのー先生、一体なんの事なんでしょうか?」


「ひっくひっく、やっぱり私の事わすれちゃったの、お嫁さんにしてくれるって言ってたのに」


 涙で化粧が落ちて、可愛い顔がパンダみたいになっている

 いや、覚えて、ん?その顔どこかで


 すると、先生はファイルから一枚の封筒を取り出す。


「ひっく、ううう、これ、やっぱり私の事……忘れているのかもって、……家から持ってきたの」


 封筒の中を開けて、中の手紙を取り出す。

「私の……宝物なの」


 そう言って机に手紙を開いて置く、そこには




『おねえさん、たすけてくれてありがとう、きれいなおねえさんにたすけてもらってうれしかったです。

 やさしくてきれいなおねえさんが大好きです、しょうらいぼくが大きくなったらけっこんしてください、ぜったいしあわせにします           長谷川裕』





「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」


 無くした俺のラブレターが、今頃こんな所で発見された……











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