6-1これってハーレム展開の序章?


 昼休み、母が夜勤だった為に本日弁当は無く、朝も食べられなかったので、死ぬほど腹が減っていた。


 購買か学食にでも行こうと立ち上がる。


「ゆうぅ、これえ1日遅れだけどおぉ、誕生日プレゼントーー」


 相変わらずゆったりした話し方で中学のクラスメイト、酒々井麻紗美しすいあさみが隣から話しかけてくる。


「ああ、ありがとう、て言うか麻紗美、俺の誕生日知ってたのか」


「うん、前にい良くゆうがぁ、栞ちゃんとぉ年子だってぇ説明してたときにいぃ、あいつがぁ3月でぇ、俺は4月って言うときぃ、たまに日にちまでぇ言ってたからあぁ、それでえ覚えてたんだけどぉ、昨日持ってくるのぉ忘れちゃってぇ、……私しゃべり方だけじゃなくてえぇ、こういうのもぉとろいよねぇ、ごめんねえゆぅ」


 麻紗美がこんなにしゃべるのは滅多に無いので、ちょっと感動しつつ、プレゼントを見る。


 緑色のかわいらしい包装用の紙を両側からリボンで縛ってキャンディの様にして何かを包んでいる。


「大したもんじゃないんだぁ、クッキーを焼いたのぉ良かったら食べてえぇ」


「おお、凄いな手作りクッキー、麻紗美お菓子作るの好きってっいってたよな」


「うん、前にぃゆう食べたいぃって言ってたから、いいよぉって言ったらぁ、受験だしい同じ高校だろぉ、受かったらぁ頼むよってぇ言ってたからぁ焼いてきたぁ」


「そうか、ありがとう食べていい?」


「いいよおぉ」


 包装を開けるとチョコレートの入った丸いクッキーと市松模様の四角いクッキーが数枚入っていた。


「おお、すげえ市販品みたいだな、おお旨い」


「えへへ、ありがとぉ」


 空腹だった為にもう一枚食べようとしたときに鋭い視線が


 あ、っと思い視線の方向を見ると、教室の少し開いた扉から顔半分だけ妹のひきつった顔が見える。


 廊下から

「しおりー早く学食行かないと席なくなるよーーーなにしてるのーー」と聞こえてきた声に


「うん、今行くーー」と返事を返す、こっちを見たまま…

 こええええええええ


 麻紗美に「後は家で食べさせて貰うよ、ありがとう、おれ購買行かないと」と言って、慌てて教室を出ると外に数人の妹を含む女子グループが、食堂方向に向かって歩いていた。


 おしゃべりしながらノロノロ歩いていた為に、追い抜き妹をチラ見、友達と楽しそうにしていたので、ちょっと安心しつつ廊下を曲がる。


 するとその先に銀髪美少女、美智瑠みちるが歩いて向かって来る


 美智瑠は俺を見つけると


「やあ、今日も中庭か?、僕と一緒に食べるかい?」


「あ、いや今日は購買で何か買って食べようと思ってるんだが」


「今日は僕ちょっと一杯作り過ぎてしまってね、少しで良かったら食べてくれないか」

 持っていた弁当の包みを持ち上げ見せてくる


「あ、いや、そう?」


 購買の味気無いパンと、昨日見た美智瑠の弁当を思い浮かべ少し迷うと、後ろから鋭い視線が


 振り向くと廊下の角から顔を半分出し妹のひきつった……


「しおりーさっきからどうしたのー?」


「うん、今行くーーー」


 妹が返事をしている、こっちを見たまま……


 慌てて美智瑠に視線を戻し

「ごめん今日は購買の気分なんだ、また今度な」


 そう言って、そそくさとその場を後にする。


「はあ……、今日の家での放課後ティータイムは荒れるなー」と独り言を呟きながら購買に行きパンを購入


 中庭は美智瑠がいるし、教室も麻紗美がいる、何処かに食べる所は無いのかと校内をフラフラ歩く


 もう便所で食べるのか?ほんとのボッチ飯?


 なんて事も考えたが、さすがに止め校舎の影で適当に食べる。

 食べている最中に頭の上から声が聞こえる。


「あら、こんな所でお食事随分お寂しそうね」


 俺の上の窓から生徒会長の那珂川 なかがわ あおいが声をかけてくる。


「ちょっとな」


「あらつれないお返事ね、大丈夫よあの事を黙っててくれるなら何もしないわよ、それとも」


 小声で話しながら、葵は手を伸ばし俺の頭を撫でる。


「何かしてほしいのかしら」


 その時またもや視線が……、そちらを見るとすぐそこの食堂の窓から半分顔を出した……


「こんな所誰かに見られたらヤバいだろ」


「あら、そうね私とした事が」


 おほほほほと笑いながら去っていく

 妹に視線を戻すと友達に引っ張られて行くのが見えた。


「うう、教室にもどるのがつらい、家に帰るのはもっと辛い」


 なにも今までの伏線をここで一気に回収しなくても良いだろ……


 何んなの、この辛いハーレム展開……どんなラノベ作品だよ。


 俺と妹が修羅場すぎる。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る