5-2生徒会長


 「い、妹と付き合ってるってそ、そんな事誰も信じないだろ」


 できるだけ冷静な振りをしてって、おもいきり噛んだけど反論した。


「あら、どうかしら生徒会長のあたしが、お台場の観覧車のゴンドラの中であなた達がキスしてるのを見たって言ったらどうなるかしら」


「それはおまえの事だろうがー!」


「近親相姦の汚名を受けたくなかったら言うことを聞く事ね」


「き、き、き」


「わかった?」


 俺はどう言われても構わないが、妹は…


「ああ、別に言わねえよ、てかこんな事しなくても言いふらすつもりなんてなかったよ」


「どうだか、さっき階段で大声で言ったわよね」


「あれはあまりにもビックリして」


「ビックリでも偶然でも自分の意思に反してでも同じよ、ばらしたらただじゃおかない」

 その恐ろしい顔、どうしてこの女はそこまで頑なに昨日の事を封印しようとするんだ、確かに普通の高校生にしちゃ行き過ぎた行為なのかもしれないが、もっと進んでる奴等だって沢山居るだろ?いや、した事ないしよくわからんが


「わかったわね」


「……」


「わかったわね!」


「あ、はい」


 考え事をして返事が遅れる。


「そう、良い子ね、あなたお名前は」


 一瞬で猫を被たアルカイックスマイルの生徒会長に変化する。

こわ!


「長谷見 裕」


「そ、わたしは生徒会長の那珂川 葵なかがわ あおいよ今度は覚えておいて頂戴」


 いや忘れてた訳では無く記憶が飛び魚なだけなんだが


「ではこれで失礼しますわ、ごきげんよう長谷見君」


 そう言って不敵な笑みを浮かべながら会長は部屋を出ていった。


「な、なんなんだあいつは」


 生徒会長の態度の激変に戦慄を覚えると同時に、昨日妹とのデートを学校の奴に見られたというリスクの恐ろしさに強張る顔をはたき、生徒会室を後にする。


クラスに戻ると、まだあまり人は居なく妹も居なかった。


席に着くと残念東出が入ってくる


「ちゃーーっす長谷見はええな」


「ああ、お前もな」


「ああ、俺は朝練があるからなーてか毎朝たりいよ」


「お前さ生徒会長ってしってるか?」


「いやだから何部とか、朝練毎日あるんだ大変だなとか言えよ」


「いや興味ないから、で生徒会長なんだけどさ」


「相変わらずだなお前、生徒会長なー入学式で見たけどすげえ美人で上品で清楚なお姉さまだったよなーああ、あんな彼女が居たら」


 まんまと彼女の術中に嵌まっているな、恐ろしいてかお前、妹彼女にしたいって言ってなかったか?

諦めたとしたら生徒会長グッジョブ!


「この学校始まって以来の1年生生徒会長だったらしいからなーすげえよな」


「あ?じゃあ今2年か?」

「だろ?ダブってなければ」


 ダブリの生徒会長ってそれはそれで面白いな……


「生徒会長選挙っていつなんだ?」


「さあ?なんだ?お前立候補すんのか?」


「しねえよ」


 したところで、ほぼボッチの俺が当選するはずねえし、ほっとけやまじで


話を切り上げぶつぶつ言っている残念は放っておき、机に向かい肘をついた手に顎をのせ考え込む


 1年から生徒会長になるには1年生どころか2年3年生の支持を得られなければならないよなー下級生が生徒会長って心情的には抵抗あるよなー、

横柄な態度だと上級生から反感買うだろうしそりゃ猫被るか…。


「1年生、生徒会長ねー」


 ぼそりと呟くと妹が教室に入ってくる。

いつの間にか結構登校していたクラスメイトから一斉に声がかかる


「しおりーおはよう、しおりちゃんおはよう、栞さんおはよう、しおりんはよー、おっはーしおりん、しおーーー、でゅふふ長谷見氏」


とクラス全体から一斉に声を掛けられる


てか最後の奴!!!


「おはよーー」


 ニコニコ笑いみんなに挨拶をしている妹、既にクラスのアイドルと化している。

相変わらずの人気で皆に笑顔を振り撒いているその姿を見て

自慢の妹だなーと思う中に僅かにチクッと刺さる嫉妬


 友達が多い事による嫉妬では無く、(ほんとに、てかほっとけって何度いったら)その笑顔を俺だけに向けて欲しいと言う周りに対する嫉妬心を若干感じ、自分に少し嫌な気持ちになる。


 ふと思った……


 あれ?妹が生徒会長選挙に出たらワンチャンあるんじゃね?

他クラスにも上級生にもよく声を掛けられ友達も多い妹なら、と言う考えが頭をよぎる


まさかね…


 妹が自分からそんな事するとは思えないし

ないない、と心で思いつつ一抹の不安を隠せないでいた。

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