朝から徹底討論! 冒険者ギルドは必要か!?

ちびまるフォイ

だから冒険者ギルドは辞められない

【 朝から徹底討論! 冒険者ギルドは必要か!? 】


「みなさん、おはようございます。

 今日は現代でも社会問題となっている冒険者問題について

 カリスマ冒険者のエクスカリバー斎藤さんをお招きしています」


「よろしくぞい」


「その語尾は?」


「安易なキャラづけぞい。

 こうしないと誰が誰としゃべっているかわからないぞい」


「なるほど。文章力低下の昨今の問題も反映されているのですね。

 では次にコメンテーターをご紹介しましょう」


カメラが対面している席の向こう側を映す。


「批判エッセイを書かせればランキング蹂躙。

 好きなことは異世界チート批判さん」


「イセカイ、コロス」


「日本語大丈夫ですぞい?」


「冒頭でかましておかないとなめられるので」

「ヤンキーかよ」


「そのほか各界の有名人を招いていますが

 この人たちは後半になっても発言権はないので忘れて大丈夫です。

 それでは討論を開始しましょう」


会場全体が拍手に包まれる。

各界の有名人の出番はこの拍手で終わった。


「まずいいですか?」

「どうぞ、批判さん」


「どうしてギルドに入るんですか?

 あんたのように力があるなら自分で単独行動したほうが

 むしろ効率的に思えます」


「ああ、それね」


わかりきっていたよ、と言いたげにエクスカリバー斎藤は肩をすくめる。


「ギルドは世界からたくさんの情報を収集するわけ。

 だから、どこで誰が困っているかの情報を探すなら

 ギルドに行った方が効率いいぞい」


「いや、でも――」


「見知らぬ土地に来たとき、自分で歩き回るよりも

 案内所で聞いた方が早いぞい? そういうことぞい。はい論破」


冒険者はまくしたてるように持論を展開した。


「でも、あなたがやってるのって、全部個人レベルですよね?」


「え?」


「ギルドからクエストをもらって行くこともありますけど、

 ほとんどが自分の気持ちやらで動いてるじゃないですか」


「ここで、エクスカリバー斎藤さんの略歴をまとめました」


スクリーンに年表が表示される。



・異世界に到着

・困っている少女を助ける

・ギルドに入る

・少女の村を救いに行く

・王国の紛争を止めるため活躍

・王女の政略結婚問題を解決

・大陸に来た巨大ドラゴン撃退



「この内容で間違えありませんか?」


「ぞい」


勇者は首を縦に振る。


「まず、ごろつきに絡まれている少女を助けるのは

 ギルドの依頼ではないですよね?」


「ぞっぞっぞ! なにを言っているんだぞい!

 そんな依頼がギルドから来るわけないだろう!」


「ですよね」


コメンテーターは「ギルドに入る」を飛ばして次の項目へ。


「で、そこで助けた少女の話を聞いて

 故郷の村を助けにいったわけですが、これもギルド経由ではない?」


「ぞい。少女は貧しい奴隷出身だったから、ギルドに依頼するほどの――」


「じゃあ次」

「聞けよ」


「少女の村をエクスカリバーによる毒殺で救ったあなたですが、

 その働きを評価されて王国へと召還されたわけですね」


「ぞい。そこで王国同士の戦いに協力してほしいと言われたが

 そこは正義の冒険者として戦いを止めようと頑張ったぞい」


「それもギルドは?」

「王の勅命だからギルドじゃないぞい」


「んで、両国の王様の不倫問題を文春に報道させて紛争を収拾させたあなたは、

 各国の覇権争いに巻き込まれて、王女の政略結婚に巻き込まれると」


「ぞい。なかなか波乱万丈であろうぞ?」


「ちなみに、この政略結婚編は誰の依頼で?」


「王女ぞい。金髪ブロンドロリ巨乳の王女様に

 胸に抱き付かれて泣かれて頼まれたら断るわけにいかないぞい」


「……なるほど」


コメンテーターは最後の項目へと移った。


「最後のドラゴン襲撃事件ですが――」


「これは大変だったぞい。異界から飛来したドラゴンにたいして、

 王国全土の力をまとめて倒すのは骨が折れたぞい。

 まぁそれもこれも、俺のリーダーシップとカリスマがあってこそぞい」


「以上ですね」


コメンテーターは表示されていた画面を消すと、核心に迫った




「え、ギルドいらなくね?」




いい気分で自分の功績を話していた冒険者も青ざめた。


「いやいや、いままでギルドの依頼ひとつもないですよね?

 なんなんですか。何のためにギルド入ってるんですか?」


「い、いや……省略されているだけで、多少はやってるぞい?

 隣町の買い物とか……ぞい」


「それくらいならほかに誰でもやってくれるでしょう。

 大陸の危機を救う任務があるのに、のんきにギルドで仕事探してたら

 それこそバッシングですよ!!」


「そ、それは……ぞい……」


「結局あなたは、無所属の冒険者という肩書が嫌なだけで

 ギルドに籍を置いているだけの幽霊冒険者なんですよ!!!」


「ぞぃぃ!」


冒険者のイスがひっくり返ってしまう。


「ここで、冒険者ギルドにアンケートを取りました。VTRどうぞ」




Q.異世界から来た冒険者についてどう思いますか?


『まぁ、正直迷惑ですね。大きな依頼ばかり求めるんですよ。

 ギルドとしては小さな依頼の方が数が多いんです』  ――ギルド受付


『異世界冒険者? いたんですか?

 あまり顔見せないし、協力系の依頼でも見ないですね』 ――冒険者A


『依頼もだいたいが個人で達成されていますね。

 他の人と協力することないんで、どうしてギルドに来てるのか…』――ゴブリン




映像が終了すると、冒険者の顔色は絶望的に悪くなっていた。


「まとめると、

 ・ギルドでの依頼をこなさない

 ・依頼は大きいものしか手をつけない

 ・ギルド内での協力もしない

 という、個人的な行動が多いように感じますね」


「ぞ、ぞ…………ぞいぃ……」


「ギルド所属のバッジをつけてたいだけじゃないですか!

 無所属の冒険者として扱われたくないだけで、

 肩書きしか考えないプライドの塊なんですよ! あなたは!!」


コメンテーターに指摘された冒険者だったがこれには反論。


「そんなわけあるか!! 俺はそんな肩書などどうでもいい!!!」


「な、なんだと……!?」


「ニート冒険者で上等だ!! こんなバッジが欲しくて、

 ニート冒険者として扱われるのが怖くてギルド所属してると思ってるのか!!」


冒険者は襟についてたギルドの紋章を引きちぎり、地面に投げ捨てた。

その男らしさに全員が釘付けになる。


「ギルドは俺の心のよりどころだ!! それだけだ!!!」


冒険者の弁に全員が拍手を送った。

コメンテーターも言葉から感じる強い意志に負けた。


「わかりました。理屈じゃないんですね。

 たとえ、非効率で意味がなくても、そこにギルドがあるから登録する。

 冒険者とはそういうものなんですね」


「わかってくれたか」


コメンテーターと冒険者は固く握手を交わした。


「最後に聞かせてください。

 あなたにとって、ギルドとは何ですか?」


冒険者はまっすぐな目でコメンテーターに答えた。





「可愛い女冒険者と出会えるか期待する、

 冒険者にとって大切な出会いの場ぞい!!」



かくして冒険者の出禁が確定した。

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