生首キャッチ(解決編)
あくまで憶測だが、幽霊の魂胆はこうだ。
きっと投げられる生首は、最も手放したくない者のものなのだ。
大切な人の生首なんて、言わば其の者の死を意味する。だから、驚きとともにそれを信じたくなくてみんな首を手放してしまう。
でも、本当はそれは一番手放してはいけないもの。ずっと抱きかかえておかなければならないモノなのだ。
だから、俺にしてみればこれを手元から零れ落ちさせることなんてありえないのだ。
「お前は、大切なものを気付かせてくれる幽霊なのか?」
静かに問いかける。
幽霊は何も答えない。
「もしそうなんだとしたら、それはきっと素晴らしいことなんだと思う。でも結構みんな迷惑してるんだ。
もうやめてくれないかな?」
その言葉で幽霊は姿を消した。
空っぽになった腕の中で、さっきまで感じていた
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「これでもう大丈夫だと思うけど」
あの幽霊が物分かりの良いヤツなら、俺の言葉に従ってくれるはずだ。そう信じるのは馬鹿馬鹿しいのかもしれないけど、俺にはそうするしかなかった。
「そうか、
照れ臭くなって頭を掻いていると、足に包帯を巻いた生徒が俺に深々と頭を下げた。
「あの、本当にありがとうございました。私、怖くて怖くて……また部活に出れるようになって良かったです」
先程まで見なかった顔だ。怪我の意味は言わずもがな、この子は幽霊の被害者のひとりなのだろう。今になって姿を見せた理由も、俺が幽霊を追い払ったとの連絡を受けたからなのかもしれない。
「それは良かった。
ところで、君が見た生首は誰のものだったんだ? あ、答えたくないなら答えなくて良いんだけど……」
「え? えっと……自分の生首でしたけど……
その意味はわかっている。
わかっているけれど、笑って誤魔化すことにした。
きっと彼女に訪れた怪異の方が本物なのだろうから。
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます