karma15 反射空戦機体レオネルズ
積み上がった箱が数メートルもの高さで並べられている。誰もいなくなった資材置き場では、運搬機械だけが健気に仕事をしている。
曇天の中、鋭い
崩れた箱の山の向こうから、資材置き場へゆっくり入り込んできた白と紫を配色された
「これでこのエリアは完了か」
黄色を基調とした赤いまだら柄の
「うん。もう一度周辺を警戒かな」
「あるいは加勢だな。司令部に指示をあお……」
その時、ちょうど司令部から通信が入った。
「司令部より報告。ジャマイカ領空に複数のヴィーゴを確認」
「おや。また厄介な生物が来るみたいだね。僕らで対応しようか?」
丹羽は余裕しゃくしゃくといった様子で尋ねる。
「そうだな。足止めくらいはしておくか」
「どういうこと?」
ヘブンエミッサリのテッド・サービス・グリッドは、
「ヴィーゴの厄介さは各国で周知されている。ジャマイカでは、ヴィーゴの飛行能力と攻撃力に対応するため、新たな対抗策を講じているんだ。ジャマイカ空軍の特殊部隊、
すると、クーンという斬り裂くような音が空に響いた。
視界に一瞬捉えた機体は、普通の無人戦闘機のようだ。
丹羽は物々しい音を耳にしたことで、開戦の第幕の
ジャマイカ西の沖合に向かって、無人戦闘機がスクランブルした。
高速で曇天の空を水色の機体が駆けていく。不穏な音を聞いた海鳥は急いで海へ降下する。その後に、つんざくような音が通り過ぎた。
飛行機体が真っすぐ向かっている先では、同じく飛行する者がまとまってジャマイカへ侵攻しようとしていた。その体は曇天の色と見紛う灰色。空気を裂いて迎撃機体を大きい瞳に捉える。
それがなんであろうが、敵の領地に踏み込む以上、自分たちの敵と思うのは自然だろう。すでに戦う気満々だったヴィーゴの手には、先端が
ヴィーゴも一般市民に知れ渡るほど有名になっていた。
灰色の皮膚を持った人型の異形。細い尻尾を持ち、先は花のような形状をしている。顔はリスザルのように大きな瞳をしていて、爪は長くて黒い。背中のブースターで飛行し、後ろの体内に隠した棒状の武器で光弾を打ち放つ。
だが、あきらかに事前の情報とは一部異なる部分があった。飛んでいるヴィーゴの背中。ブースターを仕込んでいるが、妙に膨らんでいる。
膨らんだ部分は飛行の抵抗でブルブル揺れている。そのピンク色をした物体から、細い触手が伸び、ヴィーゴの体に巻きついている。
無人戦闘機は自動で捉える。また、ヴィーゴも視認し、戦闘機に向かってレーザーを放った。戦闘機は光の軌道から逸れ、回避する。すぐさまヴィーゴの後方に回り、射程に捉える。
機体側面から火を噴き、幾弾ものミサイルが放たれた。
ミサイルはヴィーゴの速度にも負けず追尾する。執拗に追ってくるミサイルをかわし、旋回しようとするミサイルへ光弾を撃った。
ミサイルはヴィーゴが放った光弾に突然標的を変え、イノシシの
ミサイルに手こずっている隙に、戦闘機はヴィーゴの上から垂直に急降下しながらマシンガンを撃ち放った。
ヴィーゴはすかさず先端を
レーザーや弾丸が空で行き交い、衝撃によってわずかに厚い雲が膨らんだ。
司令部では早速対ヴィーゴ用の部隊の出動を命令していた。
「レオネルズ。準備はいいか?」
「こちらレオネルズ。準備はいつでもできてるぜ!」
シャル司令官に返答した陽気な男は、基地のとある部屋にいた。
そこは機体を収納する格納庫でもなければ、エアポートでもない。
円筒型の機械の中。腕や足、腰や肩に、
極めて薄い緑色に染められたナノセルロースの筒にいる奇妙な衣服を着た隊員たちは、浮いていた。同じように筒に入った隊員は、いずれも密着性の高い黒のマスクと丸縁のゴーグルをつけていた。
「よし。レオネルズ、出動!!」
シャル司令官の合図と共に、セント・アンズ・ベイ基地の円柱の建物の天井が開く。
開いた天井からまたたく間に飛び立ったいくつもの影。垂直に上昇した影は、上空で一旦体勢を整える。
機体は両腕と一体となる
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