karma3 寄り道
6体の
「
司令官の静川蒼梧は苦言を呈する。
「ちょっとくらいいいだろ。ケチいな」
東郷はぶつくさ言う。
「その代わり、迎えはけっこうです。通学バスに乗らなくても、僕たちはちゃんと帰れますから」
静川司令官は呆れた様子で観覧席にだらりと座る。
「帰還の際には必ず連絡をよこしてくれ」
「了解」
通信の最後にかすかに聞こえた
「蒼梧君に借りができちゃいましたかね?」
四海は微妙な笑みを浮かべて尋ねる。
「借りってほどでもないだろ。ちょっと寄り道するだけだ」
東郷はどこ吹く風という具合に簡単に言う。
「日が暮れないうちに帰ればなんとかなると思うよ」
丹羽は白い雲が浮かぶ空と同じ高さまで飛び上がる。丹羽の横では並走するように大きな雲が流れていた。
「蒼ちゃんのフォローは任せてくれ。いずな、その時はよろしく」
藤林は調子よく頼む。
「分かった」
「お、素直だないずな」
東郷は前を走るいずなに対し、ニタニタと嬉しそうにする。
「それくらいなら協力する。一応隊長の仕事でもあるし」
「あの、隊長」
氷見野は話に割って入る。
「ん、どうかした? 氷見野さん」
「これからどこへ行くんですか? 任務外のことみたいですけど」
一瞬間が空いて、藤林の声が漏れる。
「あ、そっか、氷見野さんは知らなかったね。僕ら隊員、つまりウォーリア部隊、特殊機動隊、初動防戦部隊、他ブリーチャー対策の関係者。みんなで大切にしている習慣があるんだ」
「習慣、ですか?」
田園地帯へやってきた隊員たち。高速で動くことを常とする隊員たちの周囲では、風を切る音が鳴り続けている。そういった音は遮断できる選択的吸音センサを内蔵しているARヘルメットなら気になることはない。
「ああ……。別に規則じゃない。僕たち隊員が自主的にやっていることでね。ただ、
藤林の声が湿気を含んで伝わってくる。いずなもそうだったが、何か重要な用事でもあるんだろうかと、氷見野は考えを巡らせる。
その時、いずなが左を
「隊長」
「どうした?」
「花を調達してくる」
「ああ、じゃ丘で待ってるよ」
「うん」
いずなは走る列から逸れて1人違う方向へ走っていく。急こう配の坂の向こうに街が拝めた。
「これから行く場所は、僕たちにとって重要な意味を持っている」
藤林隊長は氷見野が抱く疑問の返答を続ける。
「僕たちはあの場所を、
聞き慣れない名前だった。そんな場所は外国くらいにしかないはずだが、もしかして別名だろうかと頭の中で検索をかけるも、思いあたるものは見つからなかった。
「もうすぐ着くよ」
氷見野たちは海沿いの道路へ出ると、そのまま道路を走り抜けていく。
あまりに海に近い道路はブリーチャーたちの侵入を防ぐ一環として、防護壁が建てられている。沖縄の防護壁よりも低いが、堅牢な防護壁であり、
壁の圧迫感に少しの恐怖心を抱きながら、藤林たちの後ろをついていく氷見野。この先に一体何があるのか。興味を持たずにはいられない。鼓動は
隊員たちが目指す先で待ち受けるは、長らく人が寄りつかなくなってしまった灯台と遊歩道。そして、他の造形物とは違ってまだ新しい謎の石碑。優雅な無数の花たちに囲まれるそれは、無人の岬で待っている。
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