karma11 永遠に近い戦場
司令室では戦地の状況把握に努め、悪化の一途を辿る戦況を覆すべく
、各機関との調整に追われていた。
「戦力が足りない!
斎藤司令官はマイクの向こうに怒鳴る。
また、一部の
通信できる状況にある
そこで、
「
斎藤司令官が通信を切ると、鼻息を吹かし、虫の居どころが悪そうに顔をゆがめた。
空では未だ星が見えないばかりか、また小雨が降り始めた。
黒く染まった空にうっすらと浮かぶ雲。動きが遅く、ゆったりと流れていく。上空で言い知れぬ力が働いているんじゃないかと思えるほど、妙に厚い雲だった。
その厚い雲から降り注ぐ小さな雫は、
西松は一心不乱に目の前の脅威に立ち向かった。生物は手足と頭を操り、捨て身で突進してくる。拳や蹴り、頭突きのスピードは大きな鉄の柱を破壊する。
更に宙に浮かんだ手が爪を飛ばしてくる。これも
それを悟った蓬鮴は、
勝谷は通り魔の
すばしっこいウォーリアの息の根を止めるには、数秒でも0コンマ1秒でもいいから、動きを止める方が
勝谷は前方に電撃を放つ。
壁は崩壊し、突破されてしまう。それでも速度を落とす効果はあった。
勝谷は妙な異変を感じると、足が横に引っ張られた。横転した体が止まり、すぐさま起き上がる。視界に入った足には、生物の手が足かせのように掴んでいた。
電撃で弾こうとしたが、背後で空気を裂いたようなかすかな音を聞く。
激しい爆発的な閃光を地面に放った勝谷は、衝撃を身に受けながら前に飛び出した。そのすぐ後に、大きな三日月の刃が振り下ろされる。地面スレスレで止まり、風圧が放射状に地面を伝っていく。
勝谷は振り返り、視界に捉える。生物が勝谷の正面で振り切った姿勢で立っていた。附柴のワイヤーの餌食になり、身動きを封じられていたが解いたようだ。その痕は火傷となって刻まれている。
生物は両手で操って武器を引く。刃こぼれすらない三日月が生物の後方へ向かう。
勝谷は足下を確認する。先ほど放った電撃で生物の手は振り落とせたようだ。
生物は腰を落とし、豪快なフォームで振り上げる。斬撃が飛翔したが、勝谷は真正面から来た攻撃を軽々とかわし、異次元の速度で走り出した。
ゾワゾワと嫌な感覚が勝谷の首筋に貼りついていた。体を真っ二つに斬られていたんじゃないかと思うと、生きた心地がしなかった。
かく乱させるために速度を上げて走る勝谷は、自分に狙いを定めた生物を確認する。しかし走りに関して圧倒的に劣る生物は、勝谷を追う素振りを見せていない。
生物が見下ろすと、電撃の名残を受ける細胞片が地面でけいれんしていた。完全な姿となった生物は、右に回しながら後方へ刃を引くと、体をひねって振り切る。刃は地面を擦りながら半回転した。
生物は自分の細胞片を斬ったのだ。当然、斬られた細胞片は再び細胞を作り出す。手の形となった細胞も、スラリと伸びる足を引き千切っている。
恐れていたことが起こっていた。自分で身を裂いた方が分裂しやすい。数で圧倒しようというのか。再生の速度も早まるばかり。
すでに数時間前から生物の怖さをまざまざと見せつけられている。この状況から脱することができるだろうかと、負の思考に陥りそうになる。
だがここから逃げ出せば、生物に負けたことを認めているようなものだ。内なる反骨精神が挫けそうな勝谷の心を奮い立たせる。ボロボロの体を酷使し、終わりの見えない戦いの中を奔走していく。
附柴にはもう戦場における殺戮を
生物の強さにねじ伏せられる恐れを感じていた。自身が恐れを
恐怖心を抱きながら戦う自分が炙り出された気分だった。
殺すだけじゃ物足りなくなっている。ラッキーでも、加勢された結果でもいい。生物たちをいたぶることができるのなら、卑怯な手を使ってでも生物たちの畏怖の対象となりたかった。
附柴は爪の弾丸をあしらいながら、大手を振るう完全な姿の生物に焦点をあてる。附柴は細胞片の間を縫って全速力で生物に向かい出した。
生物との距離が5メートルと差し迫った時、生物の頭がわずかに左に回る。生物は急接近してきた附柴に反応した。三日月の刃は振り子のような軌道を描いて、附柴を刈ろうとする。
ほんの一瞬だった。シールドモニターでも観測することが難しいほどに、光速の境地へ踏み入れた電撃が、生物の片腕を断裂させた。
観測できないのも無理はない。附柴が近距離で電撃を直線的に放ったのだ。
生物はもう片方の腕で遠心力と重さをコントロールしながら振りたかったが、持ち方が悪く、刃は地面を擦って地に落ちた。
その隙を突き、附柴は前に飛び上がる。伸ばした手は生物の長い武器だった。武器を奪い、攻撃の手を減らそうとした。
附柴は武器を掴んだ。しかし、生物の足下に落ちた腕が何の前触れもなく浮き上がると、附柴の顔に飛びかかった。大きな手が隊員の視界も担うシールドモニターに覆いかぶさる。
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