karma15 生命、力尽きぬ
今日初めてその生物の姿を確認した
「あれは……」
風間が過去に見てきた生物たちの姿とは、まったく合致しなかった。
司令室で元雷神エクシリアーズのメンバーが見ていれば、誰かしら反応を見せる者がいたはずだ。6年前に起こった富山県の屋内ドーム施設襲撃事件で、ミミクリーズが
浮き出る胴体の筋肉は彫像の
「撃てっ!!」
班長の号令は音割れして全隊員に伝った。連続的な発砲音と青い閃光が様々な方向から響く。数で勝る人類の銃撃が、駆ける生物に浴びせられる。しかし、レーシングカーに引けを取らないスピードを出す生物が被弾した弾は、指折りで数えられるほど。特殊機動隊と初動防戦部隊が射撃する場所まで迫ってきていた。
小さな隊員たちは退避の動きを見せ始める。すると、1つの
山から飛び出してきた時から攻撃対象としていた
放置された耕作地は雑草が生え、更に水分をまともに吸ってないために硬く仕上がっている。その環境下で地面に力を加えた走者の動きに、大きな支障が出ることはなかった。
生物は竹中隊長の先制攻撃をかわした。全速力で駆けた竹中隊長の
増山が着る
増山を正面から見ると、
増山の
空間にも青い光線が視認できた。一瞬だけ辺りが異常な明るさに包まれ、爆音が弾ける。
ブリーチャーの特性の1つは感電しにくいことである。これは防衛軍関係に入れば始めに覚えることだ。
増山が放つ青い光線は、感電させるためのものではない。熱傷、圧迫、衝突による衝撃波攻撃であった。それらの効果を狙った攻撃は、とっさに上体を起こした生物の異様な腕が防御する。
数年、十数年の戦歴を持つ
腕は異常な太さがあった。特に二の腕にあたる部分。人が両手に抱えないと持つのも一苦労な岩が入っているくらいに太い。肩と
攻撃は目にも止まらぬ速さで始まりと終わりを告げた。生物はガードに使った腕を弾かれ、体の軸がぶれる。足は反射的に数歩後退し、バランスを取った。稲光を受けた生物の両腕は特殊な組成物により形成され、皮膚は熱や圧迫などによる耐性が強化されていた。増山の攻撃はほぼ効果がなかったと言える。
バランスを保つことになった生物。たった数秒、隙が生まれた。
生物の腕が後ろに引っ張られる。その次、生物の背後に鈍器のような衝撃が襲った。生物の体は前に傾いていく。
荒れた畑の土に生物の巨体が倒れる。表面は砕け、硬い土が飛んだ。風間の着る
その上空、一番星すら消してしまう輝きを放つ
青い稲妻を纏う槍は四天の闇夜を翔ける。槍は飛来途中で即座に5つに分かれる。5つに分かれた槍はしっかりとした細い糸で繋がっていた。本弾を中心にして、四隅に配する。
生物の動きを封じていた風間は発砲音を聞いて振り向く。タイミングを計るため、大きな四角形を宙で作る5本の槍から目を逸らさない。かぎ爪型の小さなカッターが、ワイヤー銃の口のすぐそばに出てくる。ワイヤーを切り、風間は槍が着弾する寸前で避けた。
生物の手足と腰に槍が刺さった瞬間、槍が青い閃光を散らす。槍は長さを伸ばし、地面深くに入り込む。槍が貫通しきって動けなくなった生物は、鈍い鳴き声を轟かせる。
周りで様子を見守っていた特殊機動隊や初動防戦部隊の隊員たちは安堵の息を零す。竹中隊長は司令官への信号を出して通信する。
「どうした?」
司令官の
「奇形種の生け捕りに成功しました。
「なるべく傷つけないよう息の根を止めてくれ」
「了解」
竹中隊長は手を前にかざす。生物に向いた
通常であれば生物の皮膚が電撃をシャットアウトする。だが、通電する槍が体内を貫通しているため、内部にまで痺れを起こした。感電した生物は小刻みに体を震わせる。けいれんする生物は声も上げられない。
竹中隊長は何度も電撃を放つ。赤黒い手は自身の血液に塗られ、薄く緑を被っていく。うめき声がかすかに漏れたとしても、電撃の音が消してしまった。
20回ほど電撃を浴びせたところで、竹中隊長の手が下ろされた。
地面に這いつくばり、微動だにしなくなる生物。特殊機動隊と初動防戦部隊の数人が慎重に生物に歩み寄る。
「終わりですかね」
風間は竹中隊長に近づきながら聞く。
「だろうな」
竹中隊長は通信を行う。
「こちら竹中。
「! ……竹中隊長!」
増山の声が割って入ってきた。
その時、男のわななきが木霊する。声はすぐに消え、代わりに異様な生々しい音が聞こえてきた。
生物は二足で立っていた。フルフェイスのヘルメットをも噛み砕き、胴体だけの人を持って頬を膨らませていた。
人を両手で持つ生物。しかし、腕は4つ生えていた。
生物の手から人の胴体が離された。
頭のない死体が地面にドサリと落ちる。
その様子を司令室で見ていた静川蒼梧は眉をひそめる。
「新しい腕と手を作って抜いたのか」
生物の口から赤い血が垂れ、
竹中隊長は奇形種のブリーチャーの生命力に違和感を抱きながら、生物を睨みつけている。
生物はゆっくりと屈み、2つの両手を地につける。拳の先が地面についた瞬間、雄叫びを上げながら
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