karma2 日本の防を司る者たちの来訪

 少しずつ暑さも和らいできた10月。攻電即撃部隊ever4はダラダラと廊下を歩いていた。地下8階のドアを開いた丹羽は目を丸くさせた。


「あれ、なんでここに?」


 丹羽は優しく表情を戻し、珍客に声をかける。


 コントロールルームには見慣れない顔がちらほら。だが、氷見野に見覚えのある印象的な人物が1人だけ。


攻電即撃部隊ever4のみなさん、ちわーす」


 整った顔立ちの男は緩い感じで挨拶する。


防雷撃装甲部隊over7。なんでこっちに?」


 藤林隊長はコントロールルームに入りながら親しい様子で尋ねる。


「いつものお使いだ。トラックで運ぶより流星ジェットで運んだ方が早いからな」


 気だるそうに言う短い黒髪の男。


「それなら、自分たちで走って帰った方がよかったんじゃないか?」


 東郷は苦い表情で聞く。


「和歌山から山口まで走るなんてかったるいだろー?」


 最初に声をかけてきた整った顔の男がハニカミながら言う。


「確かに」


 丹羽は同意する。


「んでもよ。高官の急用に付き合わされたからって、わざわざここに来たのはなんなんだ? こんな機械だらけの場所より面白いとこなんざ上にいっぱいあるだろ?」


 東郷は空いているソファに座る。ソファには他にも攻電即撃部隊ever8の隊員たちがいた。


「まあ、それもよかったんだけどね。隊長がいなくなった! って慌てて探したら基地事務局にいてぇ、出てきていきなり8階に行くぞぉー! って言い始めたんだよ~。なんでそうなったのか詳しく聞いたさ。今日帯電調整に攻電即撃部隊ever4が出るらしくって、一度攻電即撃部隊everの女王の生放電を見たいんだとさ」


 昔話をしているみたいに物語る女性は肩を竦めてみせる。鼻にかかった声が特徴的で、生島とあまり変わらない年齢、もしくは少し若い容姿であると氷見野は感じた。


「で? 攻電即撃部隊ever4の女王の放電を見てどうする気なんだ? 女帝さん」


 藤林隊長はニヤニヤしながら生島を見据える。当の生島は、攻電即撃部隊ever4ご一行がコントロールルームに入ってきて、下につく隊員たちが話し込んでいるにもかかわらず、放電中の隊員の様子ばかり見ていた。すると、突然怒声が響く。


「無礼者っ!!」


 長い銀髪を結んだ背丈の高い女性は藤林隊長に詰め寄っていく。厳しい顔つきは迫力満点。女性でありながら藤林隊長とほとんど変わらない身長は、戦いに恵まれた体格をしているように見えた。


「女帝などの低俗な呼称で呼ぶなっ! 隊長がその名を嫌っていることをお前が知らないわけがないだろう!」


「わ、悪かったって。そう喧嘩腰になるなよ。おたくの隊長さんと親睦を深めたかったんだ」


 藤林隊長は苦笑いをしながらなだめようとする。


「はい、お疲れ様です」


 ウォーリア研究室の研究員がマイクを通して防護性実験室にいる隊員に帯電調整が終わったことを告げる。


 生島は防護性実験室を見通せる窓から視線を外し、ようやく氷見野たちに顔を向ける。相変わらずの透明感と吸い込まれそうな美しさがグッと引き込んでくる。


「川合隊員」


「はい!」


 川合と呼ばれた背丈のある女性は生島に向き直り、姿勢を正して返事をする。


「そんなに声を荒げなくてもいいわ。女帝と呼ばれるのは苦手だけど、広まってしまったものは仕方ないし」


「しかし……」


「私のことを思ってくれるのは助かるけど、そんなに大きな声を出されたら他の方々に迷惑でしょ」


 川合隊員は眉尻を下げて悲しそうな表情をする。


 すると、防護性実験室からコントロールルームに通じるドアを開けて入ってきた、エミリオ・テュラスタは妙な雰囲気を悟る。しかし、向かいあう面々を把握し、なんとなく状況を察したエミリオは、ソファの方へ向かい出す。すれ違いざまに攻電即撃部隊ever8の隊員が防護性実験室に入っていく。


 生島は視線を移す。凛とした瞳は氷見野を真っすぐ捉えた。


「あなたの放電、見させてもらうわね」


 生島はクスリとも笑わない。


「は、はい……」


 氷見野は緊張を感じずにはいられなかった。

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