karma3 青い女王への濃密な崇拝
緩やかな空気が漂う部屋の中、東郷のだらりとした声が皮肉交じりに問う。
「高官のおつかいってのはこんなところで道草食ってるほど時間がかかるのか?」
テーブル席につく整った顔立ちの男――
「ああ、なんでもアメリカとの合同任務の調整で会議するらしい」
「なるほど。そりゃ長引くだろうな」
東郷は何か察した様子で納得した。
「まさか、2人だけじゃないですよね?」
四海はこわごわと尋ねる。
「2人だけじゃなくてもこじれるだろ。こじれなかった試しがねぇ」
東郷と四海と親しげに話す
東郷と四海の質問に答える男は
「あの……こじれるというのは?」
氷見野は話の腰を折るようで申し訳ないという風におずおずと聞く。
「ああそうか。一応まだ新人だったか」
話したそうな古澤の唇が笑みを見せる。
「国際防衛間の合同訓練・任務の場合には、日本の東と西の実務総統者が調整を行うんだが、重要な任務の際は任務の目的や役割を綿密に共有するために会議が行われる。ただ東と西の実務総統者は折り合いが悪い。顔を合わせればいがみ合いが始まるってわけだ」
「鬼平参謀と
四海が補足してくれるが、また知らない単語が出てきて氷見野は反応に困る。
「政治学習塾。政界に携わったOBたちによって組織される民間の政治家養成塾だな」
東郷はポカンと呆ける氷見野に説明する。
「鬼平さんって政界の人だったんですか?」
「ま、噂だがな。本人から聞いたわけじゃないから確かじゃないが、いろんな人が言ってるくらいだからそうなんじゃないか」
曖昧な言い草だったが、噂話なんてそんなものだろうと氷見野は聞き流す。
「なんでも因縁があるみてぇでな。何かとぶつかるんだろうよ。収拾が大変だって事務局の連中が酒場で愚痴ってたそうだ」
古澤は楽しげに話し、野太い声で笑う。
「俺たちも振り回されることもあるしな。まったく、大人ってのはめんどくせえ」
東郷は口元に冷笑を浮かべて吐き捨てる。
「なんだあれ?」
呟いた研究員は防護性実験室と隔てる窓の向こうを食い入るように見つめる。
「ん? おおう、すげえな。ありゃどんな芸当だ?」
テーブル席についていた整った顔立ちの
窓の奥では激しい電流の筋が四方八方へ飛び散る様がいつもの光景だ。
ただ、帯電調整をしている
喜びに満ちる顔は感涙を持って表れている。だがそれは、待ち望んでいたことが現実のものとなった喜びだけでは言い表せない。来たる惜別に苦悩し続けながら念願を手に入れる日を待ちわびたのだ。現に、ソファで
この部隊に入ることになった日。エミリオはキス・アロウシカと取り交わした内容を想起し、身の引き締まる思いと迷いが体の隅々まで流れていく感覚に囚われた。
防護性実験室から
「今のはなんですか?」
「生受けし者が使ってはならない秘術」
「は?」
研究員の思考を置き去りにした
「あなたはこの世界に光をもたらす存在。私たちは、あなたをずっとお待ちしておりました」
「え……」
氷見野は隣に座っているいずなに目線で助けを求めたが、いずなは冷めた顔をして
「今後、苦しい戦いになることと存じますが、決して闇に心を奪われないでください。私たちは、あなたと共に戦い続けると誓約いたします」
妙な空気によって室内は時が止まったようだった。
その後を追って、新人の
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