第40話 エピローグ 2

最後のお別れを愛おしむように最愛の兄の回想をゆっくりと終えると、凛は流れていた涙を拭い、部屋を見渡した。きれい好きな彼女に似合わない乞食の住処と化している。


「さ、いつまでもこんな事じゃいけないわ、片づけよっと。」


そう言うと、凛は静かに部屋の掃除を始めるのだった。


―――2週間後―――

綺麗に片づけられた塵一つない部屋で、凛は俊介の遺影を見つけ静かに手を合わせている。その顔には兄を思う献身さと同時に、安らぎと自信が見え隠れしていた。


(お兄ちゃん、お兄ちゃんを苦しめるものはもう無くなったから安心して静かに眠ってください。)


敏文が死んだ後、黄泉の世界からの彼のブログ更新はなく、凛はそれを俊介が成仏した証と解釈していた。


彼の冥福をひとしきり祈ってしばらく、静かに目を開き俊介のあばただらけの遺影を見る。生前そのままの穏やかで温かな瞳が凛を見返している。その今はいないはずの最愛の人との心のやり取りに安心する凛。ふと見ると、遺影にシミのようなものがついている。


「あら、何かしら?」


あの日以来、俊介の遺影は毎日のように布巾でふいている。シミなどあるはずがなかったが、気になって遺影を手に取ろうとする。凛は見た。その後ろに存在しているものを、、、。そして、それは、敏文を追い詰め絶望の淵へ追いやったのと同様、やはり感情のない目で、凛を見つめている。


「な、さ、小夜?もう、終わったのよ。あなたがやってくれたんでしょ?復讐?ひょっとして最後に挨拶をしに来てくれたの?」


凛が、ぞくっとしながらも、己の分身のようなかつての盟友に問いかけると、小夜は感情を押し殺した抑揚のない声でこう答えた。


「凛。私はお前を許さない。お前たちの一族郎党、ことごとく呪い殺してやる。これまで行ってきたことを後悔してやまぬように最大の苦痛を永遠に感じるようにして殺してやる。何度生まれ変わっても何度生まれ変わっても、何度でも何度でも必ず殺してやる。」


最期の瞬間、凛の脳裏に浮かんだのは、自身肉塊に変わりながら、破裂してゆく敏蔵を見やる彼の最愛の娘、祭のそれであった。。。

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