第15話 SNS

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それは、どこにでもいる普通の女子大生の杏が読むにはあまりに生々しい、女子高生コンクリート詰め殺人事件を起こしうる人間が持つ心理のありのままの叙述であった。


[今日、垂に言い付けて女を一人調達した。勝呂高校の三年生だ。麻雀で負けた腹いせにまず姦すことにした。]


[連れと寄ってたかって殴ったら、顔が2倍に膨らんだ!おもしれ~!!]


[今日、あいつが隠れて家に帰ろうとしたから、罰としてかかと落としした。頭を押さえてひーひー言ってやがる、笑える。]


[くせ~な~、あいつの身体。むかつくのでタバコを舌に付けた。じゅっ、といって、転げまわってた。いい気味だ。]


誰が見ても何をやっているか分かる内容だ。そのSNSには男女問わず同年代の友人たちが多数登録されている。当然、宮野の素性や行動など分かっているであろう。という事は、少なくとも彼らはこの事実に気が付いているという事になる。SNSにアップする、そんな状態で半ば公然と監禁しているのに、どうして誰も追及したりしないのだろうか?意識が働かないでのであろうか?それとも復讐が怖いのか?


普段は新聞も全く読まないし、選挙も行かないし、痴呆症なんじゃないの?とたまに凛に言われるし、今ある日常に何の疑問も抱かない、問題意識なんて言葉は辞書にはない杏ではあったが、このSNSにはさすがに戦慄を覚え黙り込んでしまった。


しかし、その記述はある日(おそらく被害者をコンクリートに詰めた日であろう)を境に、短絡と凶行と出鱈目と軽躁だけに彩られた文章から、じわじわと焦燥と虚妄と不安とそして恐怖を抱く文章に変わっていく。非現実を思わせる首をひねるような表現もアスファルトにびっしり生えた雑草のように至る所にあり、病的な何かを杏に感じさせた。


「げ、何これ!?これが部長の言うオカルト!?」


「そうですよ~!罪の意識と祟りへの恐怖がないまぜになった犯罪者心理でしょ~!背後には霊の存在も匂ってきますよ~!!!」


「そ、そうね。。。」


遊園地無料ツアーと、ちょっとした怖いもの見たさで入部したのが杏であって、当然、霊の存在など信じてはいない。しかし、このとき生まれて初めて、人外の存在を間近に感じたような気がして、背筋に冷たいものを覚えたのであった。


[昨日の夢で変なもん見た。あの女のユーレイっていうの?くだらね~(笑)。]


[またあの女の夢を見た。いっちょ前にこっちを睨んでやがる。もっと苛めとくんだったな~(笑)。]


[昨日もまたあの女だ。いいかげんうるせーな!]


宮野は沙紀を殺して以来、毎日彼女が夢に出てくるようであった。読んでいた杏は宮野の罪の意識がそうさせているのね、そう思った。


[今日、あの女の影を感じた。胸糞悪い。むかついてそこらのおっさんを殴ってやった。]


、、、


[今朝、口からセメントが出てきた。小倉も同じらしい。なんだこりゃ?]


――――――――――――――


その日付、宮野が逮捕された当日を最後に、ー収監されているのだから当たり前だがー更新は途絶えている。


「セ、セメントって、、、」


「でしょ~。被害者を隠蔽するのに使った、セメント!ですよ~!!何か前日に腹持ちの悪い硬いものを食べたのかもしれませんが、人知を超えた何かを感じさせるでしょ~!!!」

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