第14話 調査

「むぅ、これは!」


「どうしたの、部長?」


「これは~!!!」


丸尾と杏は、凛の部屋で爆死事故のニュースを見てから、ほとんどは丸尾が一人で勝手にであったが原因を調べていた。むろんオカ研としてこのオカルト臭ふんぷんの事件を掘り下げない訳にはいかない!と丸尾が強硬に主張したためだ。今日も講義後、小さな部室にこもって新聞やネット情報をプリントアウトしては、せっせとスクラップブックにまとめている。


「ちょっと、だいたい何で私がこんな事しなきゃならないのよ!」


と言う杏ではあったが、丸尾の提供する情報科学概論の期末試験解答に釣られて手伝わざるを得ないのであった。彼はいったいどういう闇ルートで不真面目な学生にとっては黄金にも匹敵するような情報を入手しているのであろうか?


「あぁあ、何であんな地蔵みたいな先生の古文書みたいな授業をとっちゃったんだろ~、一生の不覚だわ。。。」


生来、直感とヤマ勘で生きている杏は、少しでも”数”であるとか”理”であるとかの文字が付く学問はアナフィラキシーショックを起こしてしまう。情報科学概論の五部刈り白髪でチビでシミのようで、杏の世界観とは絶対に相容れない、何を考えているか全く想像がつかない、地蔵の生まれ変わりのような講師の1回目の講義を聞いて、その事を思い出したのであった。


「すごい~、すごいですよ~、これは~!!!」


「ちょっと、もったいぶらないでよ!?」


「凛さんにも教えてあげましょ~、この興味深い彼らの犯罪心理を知れば、凛さんもきっと元気が出る事でしょ~!!!」


「ちょっと、やめてよ!ただでさえお兄ちゃんがパワハラで過労自殺したかも、って言われてるんだから!そんな犯罪者の心理、絶対に逆効果だって!」


「え、そうだったのですか、知りませんでした~。客観的に人間の心理が理解できてよいのかと思ってました~。」


「ふ~ん(ったく、、、あんたが凛の事件の事、全然聞いてなかったんでしょうが!!)。でも、凛がその過労自殺の事を追及しようとしても、弁護士とかそういうの?会社にもみ消されちゃうんだって、何か訴えられる手がないか探してはいるらしいけど、、、権力って怖いわね~。私、今回の件で決めた。絶対、会社員にはならないわ!」


「まともに勉学に勤しまない杏さんは、将来は会社員というより曲芸員でしょ~。ははははは~。」


「何だって~!」


丸尾が、珍しく本気とも冗談ともつかぬ軽口をたたいている。


(凛、早く戻ってきてよ。。。。)


凛は、あれからと言うもの、やはりほとんど学校には来ていない。実は、お互い物言わずとも暗黙の了解で彼女の抜けた穴を思い出さないために空元気を出している丸尾と杏なのであった。


「で、犯罪者心理って何よ?」


「おお、そうでした。これを見てください。」


「え、宮野のフェイスブック?そんなのまでチェックしてるの?悪趣味!!」


「まぁ、一寸の凶悪犯罪者にも五分の魂と言いますから。カニバリズム佐川の独白などもオカルト研究家としては興味深いのですよ~!」


「ちょ、ちょっと、何が何だか訳分かんないから、もういいわ。そこに宮野の心理なんかが書かれているのね?」


しかし、そこに書かれていたのは、心理と呼ぶにはあまりにおぞましい逮捕されるまでの犯罪行為の一部始終であった。

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