第7話★ ~はじめまして!〈健太編〉~
青柳さんの目を大橋さんが見つめ返す。数秒経ってから、ふっと息を吐いて、今度は私の方を向いた。
「じゃあ、自己紹介します。えっと、
言い終わると、大橋さんは黙ってしまった。
「………」
「………」
私もどう話を振ればいいか分からず、黙ってしまう。今まで、何かしら突っ込みどころがあるような人たちだったから、こういう至って真面目そうな、ある意味「普通」な人は、逆に困ってしまう。そんな私たちを見かねたのか、美空ちゃんが声をあげた。
「唐突ですが、質問タ~イム!」
「え、どういうこと?」
薫さんが美空ちゃんに問いかける。
「いや~、健太も春香も話題に困っちゃったみたいだから、一問一答みたいな感じで、春香が質問して健太が答えるってやっていけばいいかな~と思って」
「なるほどね。いいんじゃない?」
美空ちゃんの提案に、青柳さんが乗ってきた。
「ということで、春香!何か健太に質問ある?」
美空ちゃんが私に振った。…突然質問しろと言われてもな~。何を聞けばいいのやら。
「えっと……じゃあ、とりあえず、お誕生日は?」
「…11月22日」
いい夫婦の日か。…でも、ここにこうやって住んでるんじゃ、独身だろうしな~。特に話を広げられない。
「じゃあ、血液型は?」
「A型です」
なるほど。やっぱり真面目そうな人って、A型なこと多いよね。
「春香が、『やっぱりな』って顔してる」
美空ちゃんに指摘された。
「うっ…」
「あ、図星?まあ、ああいうのは全員に当てはまるわけじゃないとはいえ、健太と薫はいかにもって感じだよね」
ニヤニヤしながら、美空ちゃんがこう言う。
「咲良さんはともかく、俺は別にそれらしい感じではないだろ」
と、大橋さんが反論する。…どうやら無自覚で真面目らしい。
「まあまあ。はい、次の質問は?」
青柳さんが話を戻す。
「あ、えっと…出身は?」
「埼玉県」
大橋さんは淡々と答える。
「埼玉…って、方言とかあるんですか?」
ふと疑問に思って尋ねてみる。
「うーん、どうなんでしょう?有るには有ると思いますけど、あんまり方言だと意識したことがないので……」
少し困ったように返された。
「そうなんですね」
「そういえば、春香ちゃんは?どこ出身なの?」
青柳さんが聞いてくる。
「私は千葉です。千葉も一応方言有りますけど、私も大橋さんと同じで、方言らしい方言って、あんまり思い付かないですね」
「そうなんだ。まあこのご時世、関東はそんなに話す言葉、東京と変わらないよね。…よし、じゃあ次いこうか」
青柳さんに促される。
「そうですね…じゃあ、彼女とか?いらっしゃるんですか?」
何気ない気持ちで聞いてみた。しかし、
「………」
大橋さんは、驚いたような困ったような、何とも言えない顔で、黙りこくってしまった。他の三人も、気まずそうな顔をして、何も話そうとはしない。…何かマズイことを聞いてしまっただろうか。
「すみません。困らせるようなつもりは無かったんですけど…、ホントに何の気なしに聞いてしまって…。あの、今のは忘れてください」
思わず謝る。すると、大橋さんはようやく口を開いた。
「あ、いえ…。こちらこそ、すみません。気にしないでください。えっと、彼女はいないです」
「そうですか…」
気まずい。凄く気まずい。そんな空気を吹き飛ばすように、青柳さんがこう切り出した。
「そろそろ自己紹介終わりにしよっか。みんなのこと、何となくわかったでしょ?細かいことは段々とでいいだろうし。春香ちゃんもそろそろ自分の部屋見てみたいんじゃない?」
「あっ…、そう、ですね。見てみたいです」
「じゃあ、私が案内しますね。こちらへどうぞ」
薫さんに促されて席を立つ。それに合わせて、他の人たちもそれぞれ席を立って、各自の部屋に向かう。
「じゃあ、また晩御飯の時に集合ね~」
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