第6話★ ~はじめまして!〈康介編〉~
美空ちゃんの言葉を受けて、青柳さんが私の方を向く。
「会った時に軽く挨拶したけど、改めて。
という言葉と共に、爽やかな笑顔を向けられた。最初に会った時も思ったけど、青柳さんは何となく「人たらし」というか、さらりと相手のバリアを溶かしてくるというか、なんかそんな感じがする。きっと昔から人付き合いが上手いタイプなんだろうな。それとも、年の功ってやつ?
「32歳ってことは、私より10歳上なんですね。見た目的に、もうちょっと若いと思ってました」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん。…もしかして、何かおねだりかな?」
青柳さんがニヤニヤしている。こう言ってくるってことは、今までそういう人が相当数いたってことなのか。
「別にそんなつもりは全くないんですけど……」
「普段お前にまとわりついてる奴らじゃあるまいし、坂本さんがそんなこと考えてるわけないだろ」
大橋さんが呆れた顔で青柳さんを見る。
「まとわりついてる、ってどういうことです?」
不思議に思って聞いてみる。
「昔からなんですけど、こいつコミュ力高いし、顔も…まあ、整ってる方なんで、そこそこモテるっていうか、女子に囲まれてることが多くて。今も職場の女性社員が休み時間の度にこいつの所に来ては、少しでも多く自分を構ってもらおうとアピールしたりしてて。……正直、ちょっと迷惑なレベルなんです」
大橋さんが、ため息を吐きつつこう言った。…大橋さんはあんまり人の悪口とか言わなそうなのに、その大橋さんに迷惑って言われるレベルって、一体どれだけなのか。
「迷惑なんて言っちゃダメだよ。せっかく来てくれるんだから」
と青柳さんは言うものの、
「お前がそうやって甘やかすからいつまでもあのままなんだろ。一回ちゃんと言ってやれよ。向こうの為にもなるだろ、その方が」
と、大橋さんが諌める。それを見ていた美空ちゃんも、
「人間関係を大事にするのはいいことなんだけどね~。でもほら、一回危ないのあったじゃん。康介の知り合いだっていう人が来てさ、薫が応対してたら、ナイフ取り出して振り回してたやつ。ああいうのまたあったらヤバいしさ、ある程度は断るべきなんじゃない?」
と、大橋さんを援護する。……って、ちょっと待て、
「ナイフ!?」
それはなかなかにマズイやつなのでは……。しかし、
「そ。康介のこと本気で好きだったみたいでさ。で、康介と一緒に私らが住んでるってのがどうにも気にくわなかったらしくて。そんなこと言われてもって感じだけど。まあ、ナイフ持ってくる時点で、だいぶヤバい人であることに変わりはないね。危うく薫がケガするとこだったんだよ~。さすがに警察呼んでどうにかしてもらったけど」
と、美空ちゃんはどこかサバサバしているというか、あまり気にしていないように見える。
「あれはホントに申し訳なかったです。…まあ、もうあんなことはないようにするからさ」
青柳さんもなんだかあっさりしている。…そんなことでいいのだろうか。そんな思いがどうやら顔に出ていたらしく、青柳さんがそれを吹き飛ばすように笑った。
「大丈夫。もう昔の話だし。春香ちゃんを危険な目に遭わせたりしないから、心配しなくていいよ。…さ、この話はもうおしまい。次は健太の番でしょ」
そう言って、青柳さんは大橋さんへと目配せした。
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