第5話★ ~はじめまして!〈美空編〉~

 「さてと、一段落したみたいだし、次は私が自己紹介するね!」

美空ちゃんが周りを見回してからこう言った。

「改めまして、鈴懸美空すずかけみそらです!しがない舞台女優をやってる23歳です。よろしくね、春香!」

えっ……?

「に、23歳!?」

思わず大きな声を出してしまう。そんな私を見て、

「えっ、春香、どうしたの?」

と、美空ちゃんはびっくりしたような顔をしている。う~ん、何となく、申し訳なくて言いにくい。しかし、逡巡している私を見て、青柳さんは察してしまったらしく、

「もしかして春香ちゃん、美空ちゃんのこと、年下だと思ってた?」

と、ニヤニヤしながら言った。

「ギクッ…。あ、いや、あの~……。……すみません」

力なく頭を下げる。薫さんの時といい、失礼なやつだと思われてるだろうな……。いい加減怒られるだろうと覚悟を決め、顔を上げかけたその時。

「ハハッ、ハハハ」

美空ちゃんの笑い声が部屋中に響く。驚いて顔を上げると、確かに美空ちゃんが笑っていた。そして私を見ると、

「いーよいーよ。いつものことだから。三人に初めて会った時も、実年齢より下に見られてたしね」

と笑って言う。大橋さんも、

「確かに。俺も初めて見た時、高校生かそれ以下だと思ったからな」

と笑っている。

「それでも十分上に見られてる方なんだけどね。康介なんて、『中学生?』って聞いてきたんだから。ところで、春香は、私のこといくつ位だと思ってたの?」

興味津々といった感じで美空ちゃんが聞いてくる。この流れで凄く言いづらいが…これは腹を決めるしかない。

「えーっと…し、小中学生、くらい……」

「……」

場が静まりかえる。真顔の美空ちゃんと目が合う。次の瞬間、四人は大爆笑していた。私は、何故そんなにも笑われているのか理解出来ず、キョトンとしてしまう。

「美空ちゃん、記録更新じゃない?」

薫さんが笑いながらこう尋ねる。その横でお腹を抱え苦しそうにしていた美空ちゃんは

「そう、だね…はぁはぁ…小学生、が、出てきた、のは…はぁ…初めてだと、思う」

笑いすぎで息も絶え絶えになりながらこう答える。どうやら、間違いの最年少記録を更新してしまったらしい。それで笑われていたのか。

 その後しばらく美空ちゃんは笑い続けていた。

「はあ~~、ここまで笑ったのは久しぶりかもしれない。…春香、ホントに気にしなくていいし、実は年上だったからって気を使う必要もないからね?」

ようやく笑い終わって息が整った美空ちゃんがこう言ってくれた。寛大だなあ。

「あ…ありがとうございます」

「あ、敬語禁止!呼ぶ時も『美空』か『美空ちゃん』だからね!」

…急に怒られた。

「今から敬語使う度に、罰金100円だからね!」

美空ちゃんは頬を膨らませてこう言った。罰金100円って…小学生かっ!

「…わ、わかった。頑張る」

「それでよし!…じゃあ、そろそろ康介が自己紹介する?」

と、美空ちゃんが青柳さんに話を振った。

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