第4話★ ~はじめまして!〈薫編〉~
「ああ、そうだったね!次は薫じゃない?」
と、美空ちゃん。よかった。ちゃんと乗ってくれた。
「じゃあ私が。改めて、はじめまして。って、本当は最初に言うべきだったんですけど、言いそびれちゃってすみませんでした。えっと、大家代理をしてます、
ん?大家代理……?
「……えーっと、大家代理ってことは、電話くださった方ですよね?」
「そうですけど…どうかしましたか?」
薫さんが不思議そうに首を傾げる。まあそりゃ、私が勝手に勘違いしてただけだから、当然の反応ですよね。
「いや…電話もらった時、てっきり大家さんの奥さんなのかと思ってたんですよ。実際に見ても、若く見積もっても私と同じくらいに見えたし。だから、まさか私より三つも年下だとは思わなくて……」
と弁明する。一瞬の静寂。そして……
「ぷっ!」
美空ちゃんが盛大に吹き出した。
「まあ確かに、薫ちゃんはしっかりしてるから、実際より上だと思われるタイプだよね」
青柳さんも笑っている。
「でも…奥さんって……ハハッ!」
「美空ちゃん、笑いすぎだから」
薫さんが美空ちゃんをたしめなる。なんかすごくツボだったらしい。
「ちなみに、本当の大家は咲良さんのお祖母さんです」
と、大橋さんが教えてくれる。
「まあ、今はお祖母ちゃんは老人ホームにいますし、両親は海外にいるので、実質私が大家みたいになっちゃってますけどね」
薫さんが補足する。
「なるほど……。とりあえず、初っぱなから失礼しました」
「ああ、いえ。お気になさらず」
私が頭を下げると、薫さんはにこやかにこう言ってくれた。優しい人でよかった。そうじゃなきゃ、来て早々追い出されるところだった。……あ、そういえば、
「私、勝手に頭の中で『薫さん』って呼んでたんですけど、なんてお呼びすればいいですか?」
「えっと……私はなんでも。坂本さんが呼びやすいので大丈夫です」
なんだか困惑させてしまった。
「ここのみんなも、呼び方ばらばらだしね~。ちなみに、春香はなんで『薫さん』だったの?」
美空ちゃんがこう聞いてくる。
「いや……、玄関で話してた時に『薫』って呼ばれてたし、年上だと思ってたから『さん』付けして、結果『薫さん』になった感じ、ですかね」
「なるほどね~」
美空ちゃんが頷く。納得してもらえたらしい。
「まあ、そのままでもいいと思いますけど、『咲良ちゃん』とか『薫ちゃん』とかにしてみてもいいでしょうし」
と、大橋さんが提案してくれる。
「そうですね……」
悩む。すごく悩む。『〇〇ちゃん』だと馴れ馴れしすぎる気もするけど、年下だと知った今、なんとなくだけど『〇〇さん』も呼びづらいし……。
「う~ん………」
私が悩んで黙ってしまっていると、
「ま、今考えても思い付かないなら、また後で考えればいいんじゃない?というか、春香ちゃん悩みすぎだから」
と青柳さんに言われた。
「そう、ですね……。そうします。すみません。後で決まったら言います」
「わかりました。本当に、なんでもいいですからね?あんまり悩みすぎないでくださいね」
困らせてしまってるだろうに、薫さんはやっぱり笑顔で返してきた。ホント、優しい人でよかった。
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