第17話 あの橋の上で

帰り道。パラパラと雨が降り出したので、傘を借りて事務所を出た。


紙袋にぎっしり台本が詰まっている。

雨の日に持って帰るなんて、どれだけ運が悪いのだろう。


心なしか、先程より雨足が強くなった気がした。



丁度大きな橋の上を通りかかった時、見たことのある青年が傘も差さずに、川を見ている。



私は嫌な予感がした。




顔色も、髪も、服も酷く荒れている。



生きる気力を全て、何処かに置いてきたような青年。


けれど、私は見ただけで分かった。




よく見てみると、彼は橋から身を投げようといていた。





ふと例のニュースが、頭を過ぎる。



____ひょっとすると、『星空めぐみ』が身を投げたのはこの川だったのではないか?




「死なないで!!」




気付いた時には、傘も紙袋も投げ出して、彼の身体を此方側へ全力で引っ張っていた。


「何してるんですか!!」


私は、思わず声が震えた。


「もう、どうでも良くなっちゃって」


前髪で彼の目は見えない。

けれど、泣いているように見えた。


『青空めぐみ』は本当に彼の婚約者だったのだ。


先程私に声をかけてきたのは、彼女が本当に死んでしまったのか……真実を確認するためだったのか。




私が演じたか…

彼女が演じたのか……




その返事が、最後の希望だったのだ。



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