第16話 私達の日常

2人揃って事務所に戻って早々、記者の人からアニメ「砂漠のオアシス」についてインタビューを受けた。


キャラへの思い入れや、アフレコで大変なこと、新人声優としての抱負など。

そして雑誌用にナギとセットで写真を撮影された。


私、ちゃんと仕事出来てる。


その時、ナギは幾分私よりカメラへの対応が上手かった。

それに違和感を感じる。

私が尋ねると、残念そうな顔で呟く彼。


「僕、専門はアイドル声優だから…仕事は撮影会とか、映像系が多いんだよね」


「それって声優なの?」


「そこ触れちゃダメ!」



彼自身、そこは見ないようにしているらしい。



インタビューが終わると、私はマネージャーと少し打ち合わせをした。


声の仕事はアニメだけではなくて、街の中に沢山溢れている。

その中から仕事を見つけてきて、斡旋してくれるのがマネージャー。


以前受けていたオーディションで、引っかかった仕事を知らされ、そして、台本を受け取った。


丁度ナギも終わったようで、事務所のベンチでお互い近況報告をする。



やはり仕事の差は歴然で。

台本にしてみても、彼は私より3倍近くあった。


「何それ…台本分厚過ぎじゃない?」


たまたま私が手にした彼の台本が、普通のアニメのページ数を平気で凌牙する数だったので、気になって尋ねる。


「おまっ…見るなよ!」


横から、真っ赤な顔で反発してくる彼が面白くて、つい意地悪をしてしまった。


「なんで、いいじゃん」


奪ってパラパラ中身を見る。

開いて瞬間分かった。


他と違う、喘ぎ声のようなシーンが多い。


これは、いわゆるR18というやつではないのだろうか。


__________


NO,124


『あっ……んふっ…や、やめて…』


NO,125


『お前、ホントここ好きだよね』


________




「違うの! 違わないけど!」


横で無実を訴えるナギ。


「随分…アダルティな台本だね……」



私は無心で言葉を返した。

まさか、ナギがこんな役をするとは思わなかったから。

そりゃ、こんな顔が良いんだ。

女の子の1人や2人、経験済みだろうが。


「違うって!誤解!これはBLなの!」


聞き慣れない単語。


「びーえる?」


「そうそう、ボーイズラブ。男同士の恋愛」


ナギは必死に説明する。

別にそんな焦らなくてもいいんだけど。


「男同士なのに、なんで濡れ場があるの?」


そもそも、そんな演技、養成所で習ったことない。


「マキノって、ホント純粋だよね……」



BLの正体を、私が本当に理解するのは、もう暫く後の話。

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