第5話 初めての嘘


「で。なんだって?」


事務所から出ると、ナギが待っていた。


男なのに、私と同じ背で、声の高さも男にしては高め。

顔はイケメンというよりは、お姉さんに可愛がって貰うタイプの甘えた系。


顔良し、演技良し、性格良し。


声優としてやっていく才能は、充分にある。


そんなナギが私を見て、にやにやしながら話しかけてきた。




「や。なんか、普通にアドバイスだった」


残念な顔を作って、ため息をつくと、ナギは一瞬戸惑って、ドンマイと励ましてくれる。




私はこの時……初めて彼に嘘をついた。




隠すのは辛い。

けれど、情報が漏れるのはもっと怖い。



だからもう暫くは、彼に秘密にしておこうと思った。

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