ぴなどれ(4)
お兄ちゃん。もうペアは当てに出来ない。私の魂の一部がペアの中にあるからわかる。ペアはもう完全に諦めてる。ペアの中には未だお兄ちゃんへの愛がくすぶっているけれど、それももう風前の灯火。
これを打破できるのはお兄ちゃんしかいないの。この時代のしがらみなんてないお兄ちゃんしか。
いい、考えて。お父さんは何のためにお兄ちゃんとペアを引き離そうとしているかを。
わかるでしょ? 全てはロータスルート家という血統を守り、ロータスルート財団を保持するため。お兄ちゃんの自我については一切考慮に入れていない。
つまりね、逆に言うならロータスルート家が守られるなら別にお兄ちゃんはいなくていいんだよ。
あと血統と言うけど、お父さんは別に家系図を引っ張り出して万世一系を保とうとかそんなことは考えてない。ロータスルート家だって所詮は百年前に成り上がった家系。百年前の革命で貴族が打倒され、ブルジョワ商家が台頭するんだけど、その一つがロータスルートなの。三代続いたから名家面しているけれど、社交界ではまだまだ新参者。だから血統に拘っている。何の? そう――結婚相手のだよ。
つまりね、ロータスルート家に名家のお嬢さんがお嫁さんに来てくれることが、お父さんの望みなの。わかるよね。
それってつまり、ロータスルート家にお兄ちゃん以外の男の子がいれば、何の問題もないんだよ。え? リークは一人っ子だろって? うん、そうだね。だからお父さんは躍起になってる。
でも大丈夫。奥の手があるよ。
今からそれを教えてあげるね。だからまずトランクからナイフを出して。念のためにサバイバル用のナイフを忍ばせてあったはずだから。
よし、いいよお兄ちゃん。それを使って今から――ペアを取り戻そう!
「リーク? 何のつもりだ? よもや私に刃向かうつもりではあるまいな?」
よおし、お父さんがナイフに興味を示した。取り敢えず切っ先をお父さんに向けて。でも一歩たりとも動いちゃダメだよ。まずはお父さんの様子を見よう。
「ほう、まだ学生で、世の中のことをろくに知らん貴様に何が出来る? この使用人連中を蹴散らし、ペアを連れてどこまで行ける? いいや、一歩たりとも前には行けぬだろう。貴様に力仕事は無理だ」
よし、いい感じに怯えてくれた。言葉の節々から恐怖が伝わるよ。今だよお兄ちゃん。そのナイフを――自分の首筋にあてがって! 頸動脈にぴたっと!
「むっ!? リーク貴様!?」
「リーク!?」
おやおや、お父さんだけでなくペアも素っ頓狂な声をあげちゃった。
でもそれくらいでないと、お父さんは倒せない。ペアも諦めて奥底に閉じ込めてしまった心を引っ張り出せない。
「何の真似だ。そんな物騒なもの今すぐ捨てろ」
お父さんが明らかに動揺した様子で喉を震わせる。手もそれに連動するようにぶるぶるとしていた。
「ぐ……それほどまでに、ペアを離したくないか」
当たり前だよ。好きとか嫌いとかはね、理屈では語れないんだよ。
なのに、お父さんは理屈で攻めてくる。
「だがなリーク。よく考えろ。そいつはただのメイドだぞ。血統だって知れない孤児あがりなのだぞ? お前は雑種になるつもりか?」
いいよ別に。雑種だろうが下種だろうが。きらきら綺麗な黄金の血が流れることに、一体何の意味があるのか私にはわからない。
お兄ちゃん、ぐっとナイフを奥へ。血を一筋垂らそう。
ほら、見る見るお父さんの顔が青ざめてきたよ。わからせよう、あの血糖――いいや、いいとこのお嬢さんを迎えることでロータスルートの百年しかない歴史に箔を付けようとする、ブランド主義者にね!
「それにペアとて不憫であろう? メイドとして育ってきた娘が、ある日突然令嬢になることなどできん。どれだけ煌びやかなドレスをまとい、豪奢な家に住んだとしてももって生まれた血の輝きは、決して出すことはできんのだ」
何言ってるんだい。ペアには教育係をつけて上流階級の仲間入りをさせるとか言ってたじゃないか。どの口が言うんだろうね、まったく。
私はもう呆れちゃうよ。でも、お父さんはこの説得にかなり力を入れてるみたい。
「それを知って、私はペアに相応しい男を用意した。お前では無理だ。幹部候補生といっても我らのような血統ではない。幹部候補生には多くの上流階級の息子がいたが、そいつは中産階級の成り上がりだ。留学だって相当無理をしたらしい。だが、それだからこそ私はペアの伴侶に相応しいと用意した。ペアにはそれでも身分不相応のきらいがあるが、私にできる最上級のはからいよ。貴様ではペアを幸せにはできん。血の不一致は抗えん」
まるで自分はペアにとてもよくしてあげてますよな言い方。
それはそうかもしれないね。他の家ではこんなことはない。確かにメイドさんは主人のあてがいで結婚するケースが多いし、それを主人もわかっているからそれ相応よりちょっと上の、いわゆるご褒美的な相手を用意する。
まあ、使用人同士の結婚がないわけでもないんだけど、実は少ない。
結婚は家と家の問題だから、もはや家族も同然であるメイドさんの将来は、主人が決めるってわけだ。それがこの時代の常識でありマナーなんだね。
でも、でもさあ。
それって傲慢なんだよ。結局の話、当事者の立場とか意思を無視して一方的に決めつけているわけで、しかもそれを将来にわたって押しつける。
それは今の日本でもあるね。いや、流石に減ったけど。昭和の頃までは本当によくあった。企業でも上司が部下の仲人を務め、上司が選んだ相手と見合いをさせる。
でも結局愛し合ってなくて、上司を立てる意味合いで結婚したからどうしても浮気に走るケースが出てくる。
愛のない家庭を捨て、妾を持つリーマンが昭和の頃に多発したのは実はこういう背景があったから。そしてそれを肯定するために『浮気は男の甲斐性』なんて言葉すら出来た。
だって昭和中期とか酷いよ? 金の卵世代の若者たちを一斉に結婚させるの。集団見合いとか集団結婚って言ってね、そこには愛なんてカケラもない。まさに上の立場からの一方的な伴侶の押しつけだ。断ると出世に響くから断ることも出来ない。
それでも愛をはぐくめるならいいかもしれない。愛を知らなかったならいいかもしれない。
でも、ペアとお兄ちゃんは違う。愛し合っている。
恋愛結婚は御法度な時代といってもね、それも時と共になくなっていく。廃れてゆく。だって、好きあっている人たちを引き裂く事なんてできないもの。
それでも無理に引き離そうとしたらもう――心中しかないよね?
さあ、お兄ちゃん。それをお父さんに伝えてあげて。
「ぐ……リーク。そんなことを言うか。ペア。お前、こいつにどういう教育をしてきた? あの報告書は嘘か?」
ぎっとお父さんがペアをねめつける。人のせいにして、醜いね。それでも高貴な血統の一員とやらなのかなぁ?
ペアは急に振られ、慌てて首を横に振る。
「あ、い、いえ。とんでもありません。大恩ある旦那様に嘘だなんて、そんな……」
「ならば何故、リークはナイフを突きつけ、私を脅す? ペア。お前もどうしてリークを止めない? 大恩あるのではないのか? 私を困らせて楽しいか?」
「う、だ、旦那様……私は……私は――」
ペアをいじめさせるのをやめさせようお兄ちゃん。ナイフをもっと押し込んで。血の勢いを増やすよ。
「リーク。ナイフを捨てろ。馬鹿な真似はよせ。お前の将来を思ってのことだ」
お兄ちゃんの将来? 違うね。ロータスルート家の将来だね。そしてそれは、断じてお兄ちゃんとは関係がないんだよ。
「り、リーク……貴様……」
もっともこれは私たちの住む時代での価値観。ここでは通用しないもの。
だからさ、今だよ。お父さんを黙らせる必殺の弾丸を発射させよう!
そう、お父さんの願い。それはロータスルート家をより高みへと昇らせるための伴侶を得ること。それはフレーズ家の娘を招き入れ、血縁関係を結ぶこと。
なら、男は別にお兄ちゃんじゃなくていい。
そしているじゃない。ちょうどいいのが。
わかるよね? 幹部候補生だよ。お父さんがペアにあてがった相手。おそらく中産階級で出世欲が強いならすぐに飛びつくよ。彼をロータスルート家の養子にしてしまえばいいんだ!
別にこれは私たちの時代だけの話じゃないよ。昔から色んな家系、色んな企業でやってたこと。男に恵まれなかった名家がよそから優秀な男を養子に招き入れる。
この手法はこの時代においても有効なんだよ!
さあ、これこそがお兄ちゃんもお父さんも満足できる、ウィンウィンの結末だ!
そしてこれを断ったら――死ぬ!
お兄ちゃん、さ、早く! お父さんに伝えて!
「それでいいのか? 私はやると言ったら本気でやるぞ? お前の言うとおり、あの幹部候補生を養子にしてもいいのだぞ? お前を駆逐しても構わないのだぞ?」
ほら、揺れ出した。そう、お父さんにとっては別にお兄ちゃんじゃなくていいという何よりの証左。
ロータスルート家の重みの方を選ぶ者なら、この提案は拒否できない。
お兄ちゃん、じっとお父さんを見つめて。本気だとわからせて。
「…………」
お父さんは沈黙し、にらみ返してきた。
でも負けちゃだめ。目で殺すの! お父さんの野望を撃砕するの!
「…………」
負けじとお父さんが眉間にしわを寄せ、一歩前に踏み込んできた。
ならお兄ちゃんも前へ踏み込もう。絶対に負けちゃダメ。ペアを手に入れるために!
そして――ついに。
「……ぐっ!」
お父さんは目を逸らし、ぎゅっと拳を硬く握った。
それから悔しそうに全身を震わせて、忌々しげに敗北を認める。
「……勝手にしろ。お前など我がロータスルート家には相応しくない。ペア」
「は、はい」
「ただいま、この瞬間を持ってお前を解雇する。どこへなりと失せろ!」
勝った。ついに今、この瞬間! 私たちは勝利した!
ペアとお兄ちゃんの未来が切り開かれた!
やった、やったよお兄ちゃん! これで私たちの――
「はいはーい、旦那様ストップですー」
と、その時。馬車からひょいっと優雅に降り立った一人のメイドさんが、そんな空気を切り裂いた。
そのメイドさんとは――
「ペーシュ、何の真似だ?」
お父さんが言った。そう、ペーシュだ。ノワも連れている。
「いけません旦那様。短気を起されちゃー」
ペーシュはいつもの朗らかな様子でお父さんの傍により、そっと背中に手を添えた。
毒気を抜かれつつも、お父さんは吐き捨てるように言い返す。
「だが、これの他にどうしろというんだ? 私はそんなにも寄り添いたいと願う二人の意思を尊重してやった。これ以上何を……」
「ノワ」
するとペーシュはまるでこうなることがわかっていたかのように悠然とした面持ちですっと後ろに手を伸ばす。
すかさずノワが一枚の紙切れと羽ペンを差し出した。
「はい、ペーシュ様。どうぞ」
受け取り、それをバケツリレーのようにお父さんに手渡した。
「これを」
「なんだこれは?」
受け取るや否や、お父さんが目を丸くさせる。
「こんなこともあろうかと、私、事前に用意していたんですよー」
何を? 私にはさっぱりわからない。
お兄ちゃん、ナイフを下げて。ペーシュに確認して。
「フレーズ家の承諾は得ていますー。あちらさんが欲しかったのはロータスルート家であって、別に坊ちゃまじゃありませんからねー」
しかしペーシュはそう言うだけで、具体的な回答を避けた。
でもわかる。ペーシュもまた、私と同じことを考えていたんだ。
ペアの万感を成就させるために。
そしてその相手は、おそらく――
「……ペーシュ、お前、一体どうやった? いや、どうやったかはわかるが、いつの間にやった?」
「それは秘密です」
にこっとウインクするペーシュ。
「え? え? ペーシュ……さん?」
ペアには何が何だかわからないと言った様子でただうろたえることしかできていない。
するとペーシュはうやうやしくお父さんからさっき渡した紙を戻して貰うと、今度はペアに向けてすっと差し出した。
「ペアちゃん」
「は、はい」
ペアが紙と羽ペンを両手で受け取る。
「これにサインを」
ちょいちょいと紙の下の方を指刺す。
それでようやくペアにもわかったようだ。さすが高等女学院卒。文字の読み書きはお手の物だね!
「え……こ、これは……っ!?」
にんまりと誇らしげに胸を張るペーシュ。
「フレーズ家との養子縁組ですー。これにサインすればペアちゃんは晴れてフレーズ家の一員となるのですよー」
「え、と、いうことは……え。え?」
ああ、やはりそうか。でも私の考えていたものとは違い、ペアをフレーズ家の養子に迎えて、その血統を持って正式にお兄ちゃんと結ばせようとしたんだ。
血統というのは血のことじゃない。前にも言ったけど血なんてものは血球と血漿と血小板で構成された単なる鉄の香りがする液体でしかない。
大切なのは、一族の家系図に名前が載ることだ。農民出身の豊臣秀吉が関白になる際に藤原家の猶子になったように、これまた農民出身の伊藤博文が武家の養子になったように、血統というものは直接的な血の流れとは実は全く関係がない。
今とは比べ物にならないほど家柄が重んじられていた時代ですら通用した戦術であるように、これだって勿論有効なのだ。
「旦那様はフレーズ家と婚姻関係を結びたかった。ペアちゃんは坊ちゃまと結ばれたかった。じゃあ、こうすれば両方の願いは叶うでしょー?」
「ペーシュさん……」
呆然とするペア。気付かなかったか。そうだろうな。私だってこっちに行くとは思わなかった。
ペーシュとは一体何者なのだろう。気になる。だけど今は……。
「えへ」
そうはにかむペーシュの笑顔に吸込まれ、一緒に未来を愉しもう。
ペアはサインしながら、乾いた笑いを森の中に木霊させる。
「あは、あはは……なにそれ? はは、ははは……ど、どうやったの?」
「さあー。どうしたんでしょーね」
教えてくれない。稚気とした笑いだけが世界を支配する。
「はは……あはは」
ペアもそれに続いて、笑いながらサインした紙をペーシュに渡す。
かくしてこの日、この瞬間、全ての者の願いは叶い、私の魂は天へと召されていくのだった。今度の魂は、緑色だった。
さて、ちょっとだけ後日談いってみようか。
「こーら、何サボってるのよ!」
相も変わらずペアはメイドさんの格好で、お兄ちゃんの教育係。お兄ちゃんの自室にペアの甲高い声が容赦なく響き渡る。
何も変わらない。一見して。
「ほんっともう。いつまで経っても成長しないんだから!」
それはお互い様じゃないかな。あ、お兄ちゃん笑った。どうしたの? え? なんでペアがまだメイドさんしてるんだって?
「え? 何よ。私がメイドさんしてちゃ悪い?」
そりゃ悪いよ。だって時期奥様ですよ? もっと立ち振る舞いというものをだね。
「いーの。まだ結婚はしてないんだから。結婚するまではメイドさんしてるわ」
え? 何で? お兄ちゃん訊ねて。
「何で? 特に意味はないわ。別にもう中級使用人とか関係なく個室になるしね。代わりにお給金はゼロになるけど」
あ、そうなんだ。個室は貰えたんだ。そりゃそうだよね。仮にも時期奥様ともあろう者が屋根裏部屋ってのはあり得ないよね。
でもお給金ゼロなのによくもまあお仕事できるねえ。それって奴隷って言うんじゃ……いや、奥様だから別にいいのか。いわゆる行儀見習いってやつだね。え、お兄ちゃん行儀見習いを知らないの? もうちゃんとお勉強した? 行儀見習いってのはね、今はもう廃れちゃったけど、昭和の末期くらいまでは普通にあったんだよ。イイトコのお嬢様がもっとイイトコのお屋敷に滞在して家事を勉強するの。勉強代がチャラな代わりにお給金なしで。だからお手伝いさんとはちょっと違うかな。
でも上流階級の奥様って家事しないんだよね。てかメイドさんなんかやってて上流階級のお勉強はどうするの?
「上流社会のお勉強? 勿論そっちもしてるわよ。フレーズ家御用達の教育係が派遣されるわ。ロータスルート家の教育係からも教わってるし。メイドなんかするなってよく怒られるけど」
そりゃそうですよ。メイドさんみたいなこと、上流階級の奥様はしません。
でもペアはなんちゃないと言った感じで窓をきいっと開け、空を眺めながらぽつりと。
「それにしてもペーシュさんがフレーズ家の人間だったなんて、思わなかったわ。世の中広ようで狭いのね」
あー、そうだったんだ。ちょっと待ってね。今調べてくる。
その間会話を楽しんでて。
「まあ、二十代で上級使用人やってるから何か変だなーとは思ってたけど。まさか忌み子だったとは……」
わかったよ! え? 早すぎ? いや、ほら、私って優秀だから。あ、ひはいひはい! ほほひっはらはいへ!
もう、何するのお兄ちゃん! えーとね、ペーシュ――ペーシュ・フレーズはね。元々フレーズ家の妾腹の子だったんだって。でも男の子じゃないから跡継ぎ候補にもなれなくて、妾さんだったペーシュのお母さんも産後の肥立ちが悪くて亡くなられたの。
そこでロータスルート家が恩を売る形で引き取ってメイドさんさせてたんだって。メイドさんといってもフレーズ家の血を引いているから特別扱いで下級使用人時代を短縮させて、五歳で中級使用人、そして二十歳で上級使用人になったんだって。今二十三歳だってさ。あ、ノワの前にいたお付きは三年で辞めちゃったらしいよ。ノワは二代目なんだね。
それでフレーズ家はペーシュに対して後ろめたさというか、弱味を抱えていて、今回はそれを利用した形になるみたい。
「ほら、いつまでぼうっとしてるのよ。ん? どうしたの? ああ、指輪?」
え? 指輪が気になるの? そういえばペアの左手はまっさらだね。今の今まで気付かなかったよ。お兄ちゃんよく気付いたねー。凄い!
「指輪は……ここよ」
そう言ってペアはメイド服の襟元を緩め、中からネックレスを取りだした。
そこに飾られているのは宝飾ではなく、七カラットはあろうかという大きなダイヤが埋め込まれたプラチナのリング。今の相場だと二千万円くらいかな。名家にしちゃ少しこじんまりしているのは、やっぱりフレーズ家やロータスルート家としても、釈然としない思いが多少残っていたのかもしれないね。
でもいいの。あの指輪の存在こそが重要なんだから。
ただ、なんで指につけないんだろ?
「だってほら、お仕事の邪魔だし」
あ、そうか。ダイヤでかいもんね。しかもめっちゃ高そうだし、メイドさんのお仕事中には身につけられないのもうなずける。
しかしいいなー、大きなダイヤ。あこがれちゃうなー。
でも、ある意味あれ、私のなんだよね。私とお兄ちゃんの、エンゲージリング。
「ふふ、似合う? 坊ちゃま」
ちらちらとネックレスにした指輪を見せつけながら微笑むペア。
凄く嬉しそうで、凄く幸せそうで、そして、凄く心地よさそうだった。
私も同じ気持ちだよ、ペア。
よかったね、ペア。そして私も、ありがとう。
「ああ、うん。違ったわね」
え? 何? あ、そうか。そうだよね。ちゃんと言わなきゃダメだよね。
さ、ペア。お兄ちゃんのことは、何て余計だったかな?
「……リーク」
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