第11話

 一日中鉄朗と馬鹿なことをして1日を無駄に潰した後、母さんが帰ってきた。鉄朗が家にいたことに勘づいたらしく、


「鉄っちゃん来てたのね。勉強したの〜?」


 と肩を回しながら言う。うん、でもああ、でもないなんとも間の抜けた声で返事をすると、母は溜息をつきながら言った。


「私は放任主義だから何にも言わないよ。どんな選択をしようとあんたの自由だからね。ただ、自分の人生にはきちんと責任を持つこと」

「わかってるよ。ちゃんとな」

「よろしい!後悔しないように遊びなさい!」


 ピンポーンとインターホンが鳴る。俺はワシワシと頭を撫でくりまわす手を払いのけて、玄関に向かった。


「すいません、こんな天気なのに」

「いやあ、大丈夫ですよ……もうほとんど雨も風も止んでますからね」

「お疲れ様です」

「はいよ。またどうもね〜……」


 出前の配達員は明らかに疲労困憊している。俺たちと同じかそれ以上の鬼畜は、確かにこの町にいるらしい。お疲れ様です。心で合掌し、2人分の寿司を受け取った。「あまり腹は減ってないが」そう思っていた時だった。


「うそ……!」


 母親の小さな叫びが漏れた。駆け寄り、パーカーを引っ張られる。彼女の指はリビングを差していた。


「な、なんだよ母さん」

「トグサ……ッ、あんた、望月さんと友達よね……!?」

「え、ええ……!ちょ」


 母は手を口で抑え震えている。

 見たくないと、思ったときだった。それは嫌でも俺の視界に飛び込んで、一瞬で心を奪い去った。

 本当にそのしらせは唐突だった。

 速報の文字が赤く走る。見覚えのある町並みが、上空を舞うヘリコプターから映されていた。俺たちの住む町だ。

 キャスターが目をぎらつかせて、早口にまくしたてる。


「……町、雁山かんざんの山中でこの山に住むと思われる男女数十人の遺体が発見されました……繰り返します……本日未明、雁山の山中でこの山に住む……」


 ピシリと亀裂の入る音がした。テーブルの上のグラスにヒビが入った。

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