第19話ある日の‘ふうじい’と‘グラッド’さんの話
〝ドッスン、グッチョ〟〝ドッスン、グッチュ〟そのたびにわしの体は飛び上がった。
土をこねるのに、今日は一段とグラッドさんの力が入っておるようじゃ。
何を作ろうとしているのか。
わしは彼のところへ行ってみることにした。
「こんにちはグラッドさん、今日は何を作ろうとしておられるのかな?」
体を丸め、宙を舞いながら グラッドさんは応える。
「こんにちはふうじいさん。今日は私のところに来たのですか。」
グラッドさんは何度も飛び上がり、土の上に落ちながら話している。
「昨日、雨が降ったでしょ。いつものように‘ニョロんぱ’が現れて歌っていたでしょ。その歌が妙に頭から離れなくて、夢を見たんですよ。私の作る器の穴からニョロんぱが出たり入ったり、そのたびに陽の光が穴に輝いている。
ニョロんぱが穴の膜になってレンズのように陽の光を反射しているんです。そしてニョロんぱが通った穴に風が吹き込み、音が鳴っている。器の穴が輝いてそして音が鳴る。私は音と光を帯びた器を作ってみたくなったのです。
その器に少しの水をため、葉っぱを浮かべたいと思ったのです。」
その後、彼は一心に器を作り始めた。
わしが彼の邪魔にならないようにその場所を離れようとした時じゃった。
彼はわしに言った。
「ふうじいさん、次はどこに行くのかわからないけれど、‘ガット’さんのところへ行くようだったら伝えて欲しいんです。薄いガラスの膜を届けてくれないでしょうかと。」
わしは歩きながら応えた。
「ほう、ほう、伝えておくよ」
そして、ガットさんのいる洞窟に向かった。
わしはガットさんにグラッドさんのことを伝えた。
すると、彼は指先を洞窟の壁に向け、透明の体がほんのりと明るくなったところで丸く円を描いた。
壁から透明の薄い膜が剥がれ、ガットさんの手のひらに落ちた。
わしはその膜を受け取り洞窟の外に出た。
そして贈り物を届ける‘葉精’を呼ぶため、杖を上に向け何度か空をかき回すことにした。
杖が回転する空間から半透明の体に何本もの長い脚を持った双葉が現れた。
わしがガラスの膜を渡そうとすると、双葉はその長い脚でその膜をやさしく包み込み、ゆっくりと回転しながら空に消えた。
数日後、グラッドさんから葉書が届いた。
「ふうじいさん、この間はガットさんに伝えてくれてありがとう。あの時の器が完成しました。ぜひ見に来てください。」
明日、グラッドさんのところに行ってみることにした。
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