第2話BOYÖと葉精の物語

島の中心から大きく伸び上がったBOYÖは、空と大地そして海にいる生き物たちの思いを、その広げた葉と根で感じ取っています。

生き物たちの思いはさまざまです。

悲しみ、苦しみ、怒り、憎しみ、喜び、慈しみ、望み、癒し、BOYÖはそんな思いを感じ取り、自身の体に吸い込んで消化します。

上空に大きく広げた葉っぱから、温もりのある思いを気泡として撒いています。

大地と海底に広く伸びた根っこから、温もりのある思いを養分として溶かしています。

BOYÖは、冷たさのある思いを和らげ温もりのある思いを広げることで、生きる力をあらゆる物たちに注いでいます。


BOYÖは100年に一度花を咲かせます。

おぼろな冷気が立ち上る朝、日の出とともにその花は開きます。

大きく広げた葉っぱに陽の光が差した瞬間、水滴が弾けたような透明な花が葉っぱの上で開きます。

その花は、100年間体内に吸収していたさまざまな生き物たちの思いとBOYÖの思いが結びついた結晶です。

葉っぱの上に咲いた花は、陽の光を浴びて透き通った黄金色に染まります。

開花の時はわずかです。

陽の温もりで花は蒸気となって立ち上ります。

空に上って行く蒸気がやがて一つの形になりました。

それは二枚の葉っぱを広げた双葉です。

双葉はゆっくりと回転しながら空を浮遊しています。


上空を陽の光に輝きながら浮かんでいる双葉は、BOYÖの思いが姿となって現れた精霊です。

精霊はこの島では‘葉精’と呼ばれています。

BOYÖの思いを秘めた使者として、‘葉精’は生き物たちの夢に現れ、島に導きます。

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