20話 元クラスメイトと再会ですよ
あの天国で地獄のようなゲームをプレイした次の日。つまりは日曜日。
時刻は午後二時。
俺は一人買い物に出ていた。
今回買うのは勉強用のノートを五冊、ラノベを数冊、そして妹たちへのおやつだ。
最後の一つはまぁ、買い物行くんだったら買って帰ってあげようって感じなんだがな。
そして俺が来たのは某ショッピングモール。
以前は
そう思いながら、俺は文具屋に向かっていった。
「あっ、これこれ」
俺は棚に並んでいるノートを五冊手に取り、ついでに消しゴムを持ちレジに向かった。
合計で三百円、俺は丁度支払い文具屋を後にした。
「さて、ラノベはどうしようかな」
本屋で買ってもいいし、某アニメショップで買うもよし。
さぁ、とうしようか。
俺は悩みながらエスカレーターに向かう。
本屋も某アニメショップもあるのは三階、結局一階上がらなければならない。
俺は袋片手に、三階に向かった。
結局、俺は某アニメショップでラノベを買うことにした。
理由は、今回買う予定のラノベに、アニメショップ限定特典があったからだ。
俺はエスカレーターで三階に上がり、真っ直ぐに某アニメショップに向かった。
「──お買い上げ、ありがとうございましたー」
レジの店員の言葉に送られ、俺は某アニメショップを出た。
「いやぁ、いい買い物をした」
元々今日買いに来たのは『突然ですが、兄さんとの結婚が決まりました』の二巻、『俺の幼馴染みが妹だった件』の一巻だけだった。
だが、今日来てみればそれ以外に『兄と契約して魔法少女になるお話』、『バトルマイシスター ~召喚妹と日本トップを目指す~』、『妹神話』といった、とてつもなく面白そうなラノベを見付けてしまった。
特に、『妹神話』は既に四巻まで発売されており、来月には五巻とコミカライズ一巻が発売される。
もう、買うしかないじゃないか。
結局、買ったのは『突然ですが、兄さんとの結婚が決まりました』二巻、『俺の幼馴染みが妹だった件』一巻、『兄と契約して魔法少女になるお話』一巻、『バトルマイシスター ~召喚妹と日本トップを目指す~』一巻、『妹神話』一巻~四巻の計八冊だ。
あぁ、財布が軽くなる。
まぁ、満足のいく買い物ができてよかった。
俺は上機嫌になり、鼻歌まで歌っていた。
「さて、茜たちにはなにを買って帰ろうかな」
俺はショッピングモール内を巡り、妹たちへのお土産を探し始めた。
「──高木?」
妹たちへのお土産を探している途中、突如後ろから名前を呼ばれた。いや、苗字だけど。
俺は振り返り、声の主に目を向けた。
そこにいたのは、髪を丁子色に染め、シャツの第二ボタンまで開け、極端に短いミニスカを履いた、いかにもなギャルだった。
そんなギャルの顔立ちに見覚えがあり、俺はその者の苗字を口にする。
「えっと、
すると、ギャルは目を見開き、近付いてきた。
「久しぶりね、高木」
「そうだな、月出里」
俺はこの時、また面倒事が起こると、予感していた。
◇妹◇
月出里
俺と同じ中学に通っていた、元同級生。一年と三年の時は同じクラスになっていた。
あの頃から明るい性格で、とてもフレンドリー、だが、真面目な一面もある、そんな女子生徒だった。
そんな彼女には友人が多くいた。
リア充やらクラスカースト上位という言葉が、彼女には相応しかった。
だが、一つだけ難点を上げるとしたら、ギャルに憧れていたことだ。
元々はファッションに興味があっただけらしいのだが、それは時を重ねギャルという形になった。
いや、まぁ別に悪いとは言わない。
だが、ギャルとはあまり良い印象を受けない。俗に言う援交やらビッチ、そんな言葉がギャルには付き纏う。
そういう人はいるのだが、そうでない人も勿論いる。後者のギャルは勝手な想像と妄想によって、様々な被害を受ける羽目になってしまう。
そのため、俺のギャルの印象はよろしくない。
それはさておき。
「お前、色々と成長したな」
そう、彼女は成長したのだ。特に胸部が。
俺の言いたいことに気付いたのか、月出里は顔を真っ赤に染め、胸を両手で隠す。
「へっ、変態っ! アンタ、どこ見て言ってんのっ!?」
「どこって、胸?」
「バカぁっ!」
うーん、面白い。
「てか、お前ホント中途半端なところで真面目だよな」
「えっ? どこが?」
「いやだって、ギャルって言ったら金髪だろ?」
そう言うと、月出里は「はぁ」と息を吐く。
「アンタ、ギャルに対する偏見すごいね。今時金髪以外も普通にいるし」
「いや、それでもその色って、茶色に近いだろ。なんと言うか、ギャルっぽくないなって」
「だから、それが偏見なんだって」
そうなのか。そうなのかなー?
「それよりアンタ、ここでなにしてんの?」
「買い物。月出里はなにしに?」
「あ、あたしは……」
月出里は何故か顔を雲らせ、言い淀む。
「おっ、ここにいたんだぁ」
丁度そこへ、声が掛かった。
やって来たのは金髪にピアスといった明らかなチャラ男。
チャラ男は月出里の方に近付いてくる。
月出里が言い淀んだ理由はコレか。
多分、チャラ男は月出里の彼氏以下の存在で、デートをしていたのだろう。
そして、なにかの理由で月出里はチャラ男から逃げ出した。
逃げた先に俺を見付け、声を掛けたってところかな。
いや、ホントに面倒事が起きたなぁ。
「なんで逃げるんだよ。これから楽しいコトするだけなのに」
なんだろう、楽しいコトに含みを感じる。いや、そうなのだろう。
「ところで、お前誰? 月出里ちゃんのなに?」
チャラ男は標的を俺に変え、威圧的に訊ねてくる。
さて、これはどう答えるのが正しいのだろうか。
無難に彼氏って答えるか? もし後で茜たちにバレたら殺られるな、俺。
かと言って同中って答えたら、早くどっか行けとか言われるんだろうなぁ。
俺が答えに悩んでいると、月出里は俺の背後に隠れるように移動する。
「えっと、あたしの彼氏だから」
ちょっとぉ? なに言っちゃってんの?
月出里の言葉を聞き、チャラ男が俺を睨み付ける。
「……ホントかテメェ」
俺は首を横に振ろうとするが、月出里が服の裾を引っ張り制止する。
どうしろと……
俺が黙っていると、チャラ男は苛つきからか落ち着きが無くなってくる。
「どうなんだよテメェッ!」
そしてついに声を荒らげた。
あーもうっ、仕方ねぇなっ!
俺は半ばやけくそになり、口を開く。
「ちげぇよ! 俺は月出里の彼氏じゃねぇ!」
そう言うと、チャラ男はニヤリと笑う。
そして、後ろでは月出里が絶望した様なオーラを醸し出す。
俺は「だが」と言い、言葉を続ける。
「月出里と俺は知り合いだ。普通の奴らよりは関係は深いぞ」
「高木……」
「……チッ」
さて、ここからどうするかな。
そう悩んでいると、チャラ男は床を蹴る。
「はぁっ、今日は帰るわ。また明日な、す だ ちちゃぁん」
そう言い、チャラ男はこの場を去った。
◇妹◇
俺は月出里と並び、フードコートの席に座っていた。
「それで月出里、
そう訊ねると、月出里はゆっくりと答える。
「あいつは
「月出里って、どこだっけ? 高校」
「
須田藁高校って、普通のところだよな?
「そんで、あいつとの接点は?」
「去年から少し会話することはあったんだけどさ。今年になってから積極的に関わってくるようになって。それで先週、一緒に遊ぼうって誘われて……」
遊ぼう、か。まぁ、なにかあるのは察しが付くな。
「それでさ、一旦ファミレスで昼食食べて、その後いきなり路地裏に連れていかれそうになって……」
「急いで逃げてきた、と」
月出里はコクリと頷く。
それは典型的なタイプだなぁ。
「どうするんだ?」
「……助けて、高木」
はぁ……そうだよなぁ。そうなるよなぁ。
「……月出里、メアド教えろ」
「えっ?」
「いや、連絡先知らないと、もしもの時助けに行けないだろ?」
そう言うと、月出里は目尻に涙を溜める。
「あ、ありがと……」
そう言い、月出里は鞄からスマホを取り出す。
「はい、連絡先交換完了っと。月出里、なにかあったらすぐに呼べよ?」
「……うん」
「絶対だぞ? ここまで関わってお前になにかあったら、俺は色んなところに謝りに行かなきゃならん。だから、絶対に呼べよ?」
「分かったってば」
うん、まぁここまで釘を刺しとけば大丈夫だろう。
「ほら、さっさと帰るぞ」
そう言い、俺は席を立つ。
「えっ?」
「お前なぁ……帰り道で襲われるって可能性もあるだろ?」
そう言うと、月出里は「あっ」と声を上げる。
「だから、早く帰るぞ」
「……うん」
俺と月出里は、一緒にショッピングモールから出た。
「ねぇ高木、今日はありがと」
「別に、あそこで見捨てる程俺は腐ってねぇよ」
俺と月出里は、言葉を交わしながら道を歩いていた。
俺は近くに津田がいないか、警戒しながら歩いていた。
まぁ、来ないとは思うけどな。
一緒に帰るのを提案したのは、さっき言った帰り道で襲われる可能性を危惧したのもあるが、月出里の家を知っておきたかったって理由もある。
まて、引くな。お願いだから話を聞いてくれ。
あれじゃないか。月出里の家知らないと、もしもの時捜索範囲が絞れないだろ? つまりそう言うことだ。
「ねぇ高木、アンタまだ妹のこと好きなの?」
突然、月出里はそんなことを訊ねてくる。
「当たり前だ。あんな可愛い奴ら、嫌いになる方がおかしいだろ」
「そうだよね、アンタはシスコンだもんね。まぁ、確かにアンタの妹たち全員可愛いけど」
月出里は引いた様な、呆れた様な感じでそう言う。
まぁ、普通は引くのが当たり前なんだよな。
「だろ? うちの妹たち、すっげぇ可愛いだろ」
「アンタ……女子にそう言うのは言っちゃダメだからね?」
「はいはい」
俺がそう返すと、月出里は「ホントに分かってんの?」と言う。
まぁ、いつものテンションに戻ってきてるかな。
それから二十分程歩き、何事も無く月出里の家に辿り着いた。
「高木、ありがとう」
「だから、別にいいって」
俺はそう返すと、月出里は「ちょっと待ってて」と言い、家の中に消えていった。
少し経って、月出里は袋を持って家から出てきた。
「はいこれ」
「なんだ、これ」
「お菓子よ。アンタに付き合ってもらったんだし、妹さんに悪いでしょ」
ホント、こいつ真面目だなぁ。
「ちょっ、アンタなに見つめてきてんの? あたしの魅力に気付いた?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、月出里は訊ねてくる。
「まぁ、確かにお前は魅力的だと思うよ。化粧無しでそこまで可愛いんだから。まぁ、茜たちには敵わないけどな」
俺は笑いながらそう言うと、月出里は朱色に染まった頬を膨らませる。
「あ、アンタって、そう言うの平気で言ってくるんだよね……まぁいいわ。今日はありがとね」
「おう。今後何事も無いことを祈ってるよ」
まぁ、無理だろうけどねっ!
俺はそう言い、月出里の家を後にした。
「あっ! そういえば明日って茜の誕生日じゃね?」
帰路の途中、俺はとても重要なことを忘れていたことに気付き、急いでショッピングモールへ走った。
月出里を送っていったのと、プレゼントを選ぶのにも時間が掛かり、家に帰れたのは午後六時前だった。
◇妹◇
余談だが、家に帰ったら茜にめちゃくちゃにされた。
具体的には、大人なキスをして膝枕して頭撫でたくらいだ。
…………四時間くらい。
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