9話 ぷれぜんとふぉーゆー
それから俺たちは、
料理はどれも手が込んでおり、そしてとても美味しかった。
夕飯を食べ終えると、少し休憩してからプレゼントを渡された。
「はい、お兄ちゃん、プレゼント」
茜はそう言い渡してきた袋には、手錠と目隠しが入っていた。
正直、なにに使うんだと突っ込みたかったが、言ったら言ったで「なにって、ナニに決まってるじゃないですか」とか返されそうだったから諦めた。
「「おにぃ、これあげる」」
声を揃え、
光月から渡された袋には、花の絵がプリントされている栞が入っていた。
朝日から渡された袋には、スポーツ用のシューズが入っていた。
俺はそれを受けとると、笑顔を向ける。
「えっと、葉雪にぃさん、これどうぞ」
次は楓ちゃんがプレゼントを渡してくれた。
袋の中身を確認すると、中にはノート五冊、シャーペン一本、シャー芯(二十本入り)が三つ、消しゴム一つが入っていた。
「にぃに、これ私からのプレゼント!」
中身は、吸水性の高いスポーツウェアだった。
「にぃさま……これ、どうぞ……」
最後の
中には、手乗りサイズのぬいぐるみが入っていた。
俺は全員からプレゼントを受け取ると、それを両手で抱き抱える。
それから、俺は全員に笑顔を向け、
「ありがとう。とても嬉しいよ」
感謝の言葉を口にした。
◇妹◇
今日すべきことで残っているのは、入浴だけだ。
いつもなら妹たちが入った後に、一人寂しく入るのたが、今日は違った。
茜の提案で、七人全員で入ることになったのだ。
最初は反論したが、恥ずかしがり屋である凉ちゃんや楓ちゃんが賛同したため、渋々一緒に入ることにしたのだ。
いや、正直とても嬉しかった。
今にも跳び上がりそうになっていた。
我ながらよく耐えたと思う、本当に。
と、知らない誰かに言い訳をしながら、俺は風呂場で妹たちを待っていた。
いや、ぼっちなのではない。
茜に「少し準備があるから、先に入っててね」と言われたので、俺はそれに従っているのだ。
決して、騙されたわけでも、ハブられたわけでもない。
と言うか、準備とはなんだろうか。ただ風呂に入るだけなのに準備なんているのだろうか。
茜の言葉に疑問を抱いていると、風呂場の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは勿論妹たちだ。
注意した通り、体にバスタオルを巻いていた。
「お兄ちゃん、お待たせしました」
そう言う茜に「大丈夫だ」と返す。
茜に続き、楓ちゃんがやってくる。
他の子たちは、先に湯槽に浸かっていった。
うん、体を冷やすのはよくないよね。
そんなことを考えていると、茜が俺の後ろに付き、腰を下ろす。
「それじゃあお兄ちゃん、体洗うね?」
「お、おう」
なるべく緊張を悟られまいと、俺はなるべくいつも通りに返す。
茜は「いきますよ」と言うと、素手で俺の背中を洗い始めた。
すべすべとした茜の指が背中を這う度、擽ったさと気持ち良さ、そして興奮が込み上げてくる。
いかんいかん。ただ背中を洗ってもらってるだけなのに、なに俺は興奮してるんだ。
俺は昂る気持ちを抑えるために、静かに深呼吸をする。
「えっと、私は頭を洗いますね」
が、気持ちが落ち着く前に、茜同様後ろに待機していた楓ちゃんが俺の頭を洗い始めた。
楓ちゃんは優しく、ゆっくりと指を動かし、撫でる様に髪を洗っていく。
な、なんだろう、気持ち良いし、それに……
それから数分程夢心地な気分を味わい、泡を流された。
流石に前を洗って貰うのは色々と危ないので、それを伝えようとすると、
「それじゃあ、前も洗いましょうね♪」
と茜が言ってきた。
「ちょっと待ってくれ! 流石に前は自分で洗う!」
そう言うと、茜はニヤリと笑みを浮かべる。
「なにを言ってるんですか。今日は誕生日なので、精一杯ご奉仕してさしあげますよ♪」
瞬間、第六感のようなモノが警鐘を鳴らす。
これは危ない。具体的には俺の貞操が。
そこまで辿り着き、俺は逃げるように移動するが、
「「させません!」」
茜と楓ちゃんに捕まってしまった。
しかも、二人とも抱き付くようにして捕まえてきたので、体が密着してしまった。
密着状態。つまりタオル越しに二人の膨らみが体に押し付けられることになる。
や、柔らかい……っ!
ピリピリと痺れるような感覚が脳を襲い、接している部分から茜と楓ちゃんの体温が伝わってくる。
少しの間気を緩めると、茜は好機と見たか、素早くボティーソープを手に付けると、その手で俺の体を撫で回し始める。
「ひっ……っ!」
突然のことに、つい俺は女々しい声を上げてしまう。
俺の声に興奮したのか、茜は息を荒らげより一層手を動かし俺の体を撫で回す。
俺は声を上げそうになるのを必死に堪え、楓ちゃんに助けを求めるよう目を向ける。
楓ちゃんは顔を真っ赤に染めながら、俺と茜を見つめていた。
「や、やっと解放された……」
俺は湯槽に浸かりながらそう呟いた。
結局、茜が手を止めたのはあれから十分経った頃だった。
今は妹たちが互いの体を洗っている。
「ったく、最近の茜は少しやり過ぎな気がする」
俺は深いため息を吐く。
いや、嬉しくないわけないんだけどね……
「うーん、やっぱり楓さん、胸大きいですね」
気を落ち着かせていると、ふと茜たちの会話が聞こえてきた。
俺はゆっくりと浴槽の端(茜たちに近い方)に移動し、肩まで湯船に浸かる。
いや、会話が気になったわけではない。決して。
「そんなことないです」
「ええー、嘘ですよ。だってこんなにあるじゃないですか」
「ひゃっ! 茜さん、胸を揉まないでくださ──あぁっ!」
「わー、あかねぇ手付きがえっちぃ」
「「いつものこと」」
「……いつもなの?」
なんだか、だんだん茜の行動がエスカレートしてる気がする。
「おいっ! あんまり遊ぶんじゃないぞ! 特に茜!」
そう
こりゃダメだな。
そう思い、俺は無視することに決めた。
「すごい、柔らかかった……」
「はぁ、はぁ……」
「「ねぇね、凉ちゃんも胸大きいよ」」
「えっ!? す、凉ちゃん、バストカップ教えてくれませんか?」
「ふぇっ!? そ、その……Cです」
「えぇっ!? 私より、大きいなんて……」
「はぁんっ! あかねぇさま、お胸、そんな揉んじゃぁ……ふぁぁあああっ!」
どうやら、次の獲物は凉ちゃんになってたらしい。
あの純粋無垢な凉ちゃんに手を出すとは、お説教だな。
そう思いながらも、俺は動くことが出来なかった。
まぁ、理由は察してほしい。
◇妹◇
茜たちは体を洗い終わると、ぞろぞろと浴槽に入ってくる。
俺の周りに光月、朝日、楓ちゃん、蓮唯ちゃん、凉ちゃん。少し離れたところに茜がいる。
流石にふざけ過ぎなので、反省させるために少し距離を置いている。
「おにぃ~ちゃ~ん、寂しいよぉ~」
茜が、弱々しくそう言ってくる。
「知るか。ふざけ過ぎた茜が悪い」
そう返すと、わざとらしい泣き声が聞こえてくる。
無駄だ。そんな涙に惑わされんぞ。
そんなことを思っていると、楓ちゃんが近寄ってくる。
「あの、私たちは大丈夫ですから、茜さんをこっちに呼んであげてください」
楓ちゃんは頬をほんのりと朱色に染めながら、申し訳なさそうにそう言ってくる。
その姿に、ふぅと息を吐くと茜を呼ぶ。
「ほら、早くこっちこい」
そう言うと、茜はお湯を掻き分け近付いてくる。
そして、そのまま抱き付いてきた。
「茜、今は抱き付いてくるな」
そう言い、茜の顔を押す。
「ぶぇぇ、いいじゃないですかぁ」
そう駄々を捏ねるので、俺は茜の頭にチョップを落とす。
「いてっ♪」
と茜はそう言うが、全然痛そうにしていない。寧ろ喜んでいた。
もう重度の変態だな。
「ほら、離れないと三日間口利かないぞ」
そう言った途端、茜は物凄い速さで離れる。
その顔は、恐怖と絶望に染まっていた。
「は、離れたから、ちゃんと、かまって?」
茜は震えた声でそう言ってくる。
その姿に、少し罪悪感を覚える。
結局、俺は妹に甘いのだ。
「ごめんな。少し言い過ぎた」
謝罪の言葉を掛けながら、俺は茜の頭を撫でる。
「……うん」
茜は目尻に涙を溜めながらも、そう答える。
暫くすると、茜はいつも通り元気になった。
それから皆で少し話をすると、風呂を出た。
勿論、妹たちが先に出ていった。
「なんか、今日は色々あったな……」
葉雪は寝間着に着替えながら、そう呟いた。
よし、今日はもう寝るだけだ。
そう思って俺は自室に向かった。
これからが本番だとは知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます