第10話 100万分の1

僕は生まれた

望んだことではないかもしれない

望まれてもいないかもしれない


君は生まれた

望んだ場所ではないかもしれない

望んだ時ではないかもしれない


何も語らない父

笑顔を絶やさない母

喜びや悲しみ

本当に分かち合うことができたのだろうか


僕は君と出会い

新しい命を授かった

それでわかったこともあれば

もっと疑ってしまうこともある


100万人の笑顔

100万人の涙

僕らはそのなかの一つ

100万人の歓喜

100万人の憂鬱

僕らはそのなかの一つ

僕は一つの命

君も一つの命

100万人の一つ

命尽きるまで


僕は生まれた

繰り返すためだけかもしれない

壊すためなのかもしれない


君は生まれた

解り合えないかもしれない

分かち合えないかもしれない


何も変わらない朝

いつもさみしい夕暮れ

淀んでしまった魂も

静かに眠れる夜を迎えるのだろうか


僕が君と出会い

新しい何かが生まれる

出会ったことの不幸なのか

寄り添ってしまう弱さなのか


100万人の喜び

100万人の悲しみ

僕らはそのなかで出会う

100万人の怒り

100万人の盲信

僕らはそのなかで争う

僕は一つの命

君も一つの命

100万人の一つ

命尽きるまで


僕らは生まれた

望んだことではないかもしれない

望まれてもいないかもしれない


望んだ場所にはたどり着けない

望んだ時には何も得られない


100万人の叫び声

100万人の憎しみ

僕らはそれでも生きてる

100万人の希望

100万人の絶望

僕らはそれでも生きている

僕は一つの命

君も一つの命

100万人の一つ

命尽きるまで

命つなぐ点

命つなぐ線

命つなぐ一つ

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