第9話 孤独のススメ
まず世界は広いということを知る
そして世界は偏っていると知る
次に小さな世界も大きな世界も変わりがないと知る
汚れのない世界などないと知り、それでも世界は美しいと知る
あなたの世界と私の世界は違うと知る
僕がいるからこそ世界があると知り、あなたがそこにはいると知る
あなたの世界と私の世界はつながっていると知る
世界はあなたを見ていないと知る
世界のすべてを見ることはできないと知る
そして僕は孤独だと知る
偏りの吹き溜まりに孤立していると知る
個は孤であり、故に独りである
独りが集まってもそれは、孤であり、個である
世界は個でできているのであれば、世界は孤独なのだろうか
否、世界は求めている
世界になりうる個を求めている
個は全て、全ては個で成り立つ
そこからはみ出してしまう僕は孤なのだし、あなたも孤なのだ
世界は個を求め、孤を生み出す
孤が受け入れられる世界とは、すなわち歪ひずみであり歪ゆがみである
世界は孤とまじりあうことはできない
孤は世界の中で立つ
決して同化はしないのだ
孤立無援でなお、個としての存在を維持する強さを孤は持っている
強く、頑なで、不惑
そこに立ち、そびえることで孤高となる
孤高あるところに従う者あり
従う者あれば付き添う者あり
付き添うものあれば群れる者あり
群れあるところに寄り添う者あり
寄り集まりし、群衆はやがて新たな世界となる
世界はやがて弧を生む
それ、まさに人が子を生み育てるがごとし
世の中の常とは、これ、幻と知る
常世に続く月日とは、メビウスの輪と知る
次なる世界を目指すのであれば
輪を断ち切り、独りで立つべしと知る
知ってなお、輪を断ち切ること叶わず
叶わぬから望み、望むからこそ願い
願うからこそすがりつく
酷く哀れな姿と哂う者あろうとも
無駄な努力と蔑む者あろうとも
世界とはそういうものだと知る
孤立とはそういうものだと知る
独りであることを懼れることなかれ
なぜなら誰しも、みな、独りであるのだから
世界とは器なり
一度器からこぼれた個が、元の器に戻ることはない
なぜなら個は見てしまったから
世界は器であると
なぜなら個は知ってしまったから
器は所詮、器でしかないと
孤立した時、初めて世界はあなたのものとなる
無援で初めて自らを知る
自らの世界、自らの器を知る
己を知る者は、無暗に何かを畏れることはない
畏れる必要のないものに恐れ、慄く故に、人は群れる
懼れることなかれ
孤立し、無援であっても無縁であるわけではない
人は生まれながらにして孤立していながら、同時に縁を持つ
懼れることなかれ
世界はあなたの中あるのだから
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