~“希望”の戦い~・2
「ついにこの時が来た……決着の時が」
遥か時の彼方から続く因縁を思い返し、涌いて出た眷属を双剣で切り裂きながらダクワーズは睫毛を伏せた。
『俺達にとっては長い付き合いだもんね。沢山、たくさん犠牲を払った』
“総てに餓えし者”が現れてからアラムンドで出た被害。
戦って倒れ、吸収されてしまった騎士達。
そして身を挺して封印するための結界になったロゼットや、世界から切り離される時もしかしたらまだどこかで生きていたかもしれないアラムンドの者達。
その幾つもの犠牲を見てきたランシッドの言葉は、噛み締めるように。
と、ダクワーズは剣舞を一旦止めるとスッと目を閉じ、右手の剣で空を十字に切った。
それを好機と見るや魔物の群れが一斉に彼女目掛けて飛びかかるが……
「汝、足を踏み入れしは我が領域。
金眼が開かれた瞬間、空中で魔物達が静止した。
動きではなく、ダクワーズを囲う空間の時間そのものが止まったのだ。
「止められるのは瞬く間……だが、」
それだけあれば充分だッ!
言うが早いか、再び舞う神速の刃が一匹一匹に切りつけられ、
「……貴様らの刻は、再び動き出すことはないだろう」
術が解除された途端に、幾つもの断末魔が彼女の背に届いた。
「取り巻きをいくら呼んでも、僕達には通用しないよ!」
「そうです!」
敵に向かって真っ直ぐに伸ばされた細腕に握った杖の鳴子が、持ち主の意思をあらわすように凛と鳴った。
そんなフィノと背中合わせに立つトランシュも同様に左腕を伸ばす。
「光の眷属、勇壮たる騎士よ」
「その手に掲げる剛槍で、仇なす者を討ち貫かん」
「「放て!」」
二人の声で幾本もの光の槍が回転しながら宙に現れ、魔物達に狙いを定めるとそのまま落ちて突き刺さる。
あちこちで他の仲間も奮戦し、みるみるうちに歪な化け物達はその数を減らしていった。
「もうこんな足止めは無意味じゃろ。年貢の納め時じゃ」
「……ッ」
“総てに餓えし者”が、ぎちり、と歯軋りをする。
確実に力をつけていったデュー達と正面から戦っては分が悪いと、後ずさりした足元に見える輝きに視線を落とす。
紫色に妖しくきらめくそれは、世界中からかき集めた負の感情。
にぃ、と歪めるように魔物は口の端を上げた。
「…………そうか、そうだな」
「む?」
「恐怖や絶望は、また集め直せばいい。“希望”を叩き潰してから、ゆっくりじっくりと」
そう言いながらおもむろに手を床に着くと……
「むしろそうしてやった方が、手っ取り早く集まるかもなァッ!」
輝きが強くなり、ぶわ、とデュー達の背筋を悪寒が駆け抜けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます