~“希望”の戦い~・1
――サいしょはどんナかタちをしテイたのダろウ。
この広い世界、パルフェリアに流れ星と共に墜ちてきた時、たまたま目撃した人間を本能のままに喰らった。
そうして覚えたのが“餓え”だと、吸収した知識から後で知った。
“餓え”が生み出す衝動に従い、手当たり次第に喰って、喰って、満たされて、またすぐに餓えて。
腹の真ん中にぽっかりと大穴が開き、喉はからからとひりつくような渇きを感じ、いくら喰っても一時的にしか満たされない感覚はそれでもその一時のために繰り返し求められる。
特に恐怖や絶望は格別の味で、力も得られる最高の糧だった。
けれどもその味を知れば知るほど“餓え”も際限なく膨らんで……
この世界を丸ごと平らげれば、どんなに美味で満ち足りるだろうか。
歯止めがきかなくなった欲をどうにか満たそうと、いつしか生物だけでなく、大地を、世界を喰らおうと考え始めた……――
「足りない……足りないよ……」
ツギハギの塔最上階の一室……“総てに餓えし者”が佇むそこはアラムンドの都の建造物で構成され、他とは異なる雰囲気を醸し出していた。
彼の足元には隕石を呼び寄せる術式の紋様が仄かに発光して、発動の時を待っている。
しかし、輝きはまだ弱い。
「想定より集まりが悪いな……世界中に滅びを見せつけてやったというのに」
「アンタが思うほど、この世界の連中は物分かりが良くないってこった」
背後に聞こえた声と靴音。
人と同様に存在しているがどこか薄気味の悪い目や口、限りなく人の形に近くなった影法師が振り向くと、そこにはついに宿敵の前まで辿り着いた者達の姿が。
「来ちゃったか……やだなあ」
一人のはずの“それ”が口を開くと、いくつもの声が重なる。
口調の安定しない化物の中には、恐らく想像を絶する数の何かが混じりあい、融けているのだろう。
「この世界に隕石なんか落とさせはしないのじゃ!」
「止めるんだ? ボクを? ここで?」
もはや逃げ場のない空の上、自ら造り上げた塔の頂。
「……負の感情が集まらないのは、あなた達がいるからだね。世界の“希望”が」
追い詰められてなお、魔物に焦りは見られない。
「だったら」
……それどころか。
「その“希望”を踏みにじってやるよ、ぐちゃぐちゃになァ!」
見開いた目は、新たに映った獲物の姿に歓喜の色を見せていた。
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