~交わる、その先へ~・4
「「「あ」」」
いくつかの声が重なってその場に響く。
別々の穴から現れた、見覚えのある者達。
敵を倒し、発見した通路の先は三つの道の交わる場所だったのだ。
「大精霊も一緒、ってことは……」
「今度こそ、本物でござるな」
敵が化けた偽者との交戦経験のあるカッセが、ほっと胸を撫で下ろす。
『良かったですね、ほぼ同時に辿り着いて』
「待ち合わせするべきか進むべきか、悩むところだったな」
それにしても、とスタードはミレニアの傍らを漂うルセットの、透き通る体を見やる。
(ルセット王妃……こんな形で再びまみえるとは……)
そんな視線に気付いた王妃がにやりと笑うものだから、臣下は反射で姿勢を正した。
「さて……」
一息ついて、デューは広間の中央を見据える。
そこにあるのは上へと誘う、人の手で作られたものらしき階段。
アラムンドの残骸の中から全てが不揃いでツギハギに構成されているこの塔で、パーツがほぼ丸ごとそのまま使われている箇所があるのは逆に目立っていた。
「いよいよ“本命”の気配が濃厚だな」
ここからは見えないが、本命……“総てに餓えし者”が待つ頂もそう遠くはないだろう。
あれを倒し、障気の発生と隕石を止めるために集った仲間達の表情が、目標の眼前まで来たことにぐっと引き締まる。
その顔をひとりひとり見渡して、デューが口を開く。
「みんな、一人も欠けることなくここまで来られたな」
ここまでの道程……ツギハギの塔内ももちろんだが、そこに到るまでの長い長い旅も、決して生易しいものではなかった。
時には死を間近に感じる場面だって、もうダメだと思う場面だってあったはずだ。
……それは、精神的な意味でも。
「みんながいてくれたからじゃよ」
ミレニアがふっと微笑む。
「それにただ苦しいだけじゃなかった。みんなとの旅、楽しかったわ」
「ああ。それに……沢山背中を押して貰った」
心の底からのイシェルナの言葉に同意したオグマが、目を閉じて過去を振り返る。
うじうじをなおしてこい、などと父親がわりの職人に勢いよく叩かれた背中は、今でもそのあたたかな手を覚えている。
「いっぱい、いっぱい前に進みましたもんね」
「俺なんて皆さんが旅してなかったらそもそも死んでましたし」
神子姫としてだけではない、彼女自身の成長も。
フィノが杖を傾け、鳴子から澄んだ音を奏でる。
リュナンは頬をかきながら奇妙な縁を思い返し困り笑いをした。
「ずっと独りで行動していた拙者が、こんな賑やかな冒険をすることになるとは思わなかったでござる」
「私もだ。この歳でも、まだまだ学ぶことは多かった……いろいろ諦めていたのだがな」
カッセとスタードも穏やかに互いを見合わせた。
そこへ「隠居するには早いですよ、教官」とトランシュも加わる。
「デュランが記憶をなくして子供になっていたり、ミレニアと一緒にいたり、世界の命運にかかわる大冒険になったり……縁というのは不思議なものだね」
「ふふ、それを言ったら私など気が遠くなるほど遠い昔の人間だぞ? 普通は繋がらない縁だ」
友人と妹を見遣るトランシュにダクワーズが笑みをこぼした。
幾つもの運命の悪戯の結果が、今の彼等を繋げたのだ。
「それじゃ、帰ったら思い出話に花を咲かせるか。その時には、オレも元の姿に戻っとくよ」
「それは楽しみじゃ。どんな男前なのかのう?」
その、楽しみのためにも。
――負ける訳にはいかない。
口には出さずとも、デュー達の思いはひとつであった。
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